iPhone 5の後継となる新型iPhoneなどの今秋の発売が噂される米Appleだが、7月23日(現地時間)に発表された2013年度第3四半期(4月-6月)決算では、かつての栄光は影を潜めているように見える。売上高は353億ドルで前年同期比1%増となったものの、純利益は69億ドルで同22%減の大幅減益となった。さらに、2013年度第2四半期(1月-3月)と比較すると、iPhoneの販売台数は3,743万台から3,124万台と落ち込んでおり、新型iPhone発表を前に買い控えが起きていることも予想される。同社のティム・クックCEOは、四半期決算発表に際して「今秋からいくつかの驚くべき新製品を提供する」とコメントしたが、もはや新型iPhoneなどに希望を託すしかない状況だ。

また、米調査会社IDCが25日(現地時間)に発表したレポートは、Appleが世界のスマートフォン市場でシェアを下げていることを伝えている。同レポートは2013年第2四半期(4月-6月)の世界スマートフォン市場におけるメーカー別出荷台数を集計したもので、それによるとシェア1位はSamsungで30.4%、Appleは2位で13.1%となっている。日本ではAppleのiPhoneが人気だが、グローバルではGALAXYシリーズを擁するSamsungにダブルスコアで差を付けられているのがわかる。

さらに、前年同期比ではAppleが16.6%から3.5%減のシェア低下となっているのが気になるところだ。また、Samsungのシェアも32.2%から1.8%減となっているが、一方でシェアを伸ばしているのが、3位のLG、4位のLenovo、5位のZTEという韓国または中国のメーカーだ。とりわけ、LGとLenovoは前年同期比の出荷台数がそれぞれ108.6%増、130.6%増と急激な伸びを見せている。これまでスマートフォンではSamsungとAppleが2強となっていたが、第3勢力の躍進によって多様化の時代へ進みつつあるようだ。また、Samsungと熾烈なシェア争いを繰り広げてきたAppleだが、もはやライバルはSamsungだけでなく、Android陣営に包囲されてApple自身が埋没してしまう恐れすらある。

また、日本のスマートフォン市場でも潮目が変わりつつある。最新のBCNランキングの携帯電話部門(2013年7月22日-28日)では、NTTドコモの「GALAXY S4 SC-04E」(Samsung製)、「Xperia A SO-04E」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)が1位、2位となり、iPhone 5をリードしている。これには、先述の新型iPhone発表を前にした買い控えが影響している可能性もあるが、消費者のニーズが変化していることも見逃せない。

SamsungのフラッグシップモデルであるGALAXY S4は、約5インチのフルHD有機ELディスプレイを搭載したAndroidスマートフォン。2,600mAhという大容量バッテリーを搭載しながら、厚さ8mm、重さ134gと薄型軽量なのが特長。また、Xperia Aは、約4.6インチのHD液晶を搭載したAndroidスマートフォン。大画面ながら手のひらにフィットするラウンドフォルムや、約1310万画素の高性能カメラ、防水性能などが特長の端末だ。

Androidスマートフォンでは大画面化が進んでおり、GALAXY S4のような5インチクラスのディスプレイを搭載する端末が多くリリースされている。一方、iPhone 5のディスプレイは約4インチとなっている。また、赤外線通信やおサイフケータイ、防水性能といった日本人に好まれる機能もAndroidスマートフォンではおなじみとなっており、それらの機能を備えていないiPhone 5に対する優位点となっている。

また、大容量バッテリーと省電力技術によって、電池の持ちが向上しているのも最近のAndroidスマートフォンの特長だ。たとえば、ドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」(シャープ製)は、2,600mAhの大容量バッテリーを備え、さらに高精細ながら省電力なIGZO液晶を搭載することで電池持ちの良さを実現。また、同じくドコモの「ARROWS NX F-06E」(富士通製)は、3,020mAhというスマートフォン最大クラスの大容量バッテリーを搭載し、さらに省電力テクノロジー「NX!エコ」を採用して電池持ちを向上させている。ビジネス誌「日経ビジネス」(2013年8月5日号)のテストによれば、ARROWS NXが充電せずに69.4時間という、約3日間の実使用時間を記録したという。

一方、iPhoneの優位点としては、これまでデザイン性の良さや操作の快適さなどが挙げられてきた。しかし、Xperia Aを始めとするソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォンなどはデザイン面での人気も高く、また操作の快適さにおいても、とりわけAndroid 4.0以降ではiPhoneのiOSと大きな違いは感じられなくなっている。現状ではiPhoneならではのメリットを見出すのは難しく、多様化した消費者のニーズを満たす上では、iPhoneよりも様々なラインナップがあるAndroidスマートフォンに軍配が上がる状況だと言える。

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新型iPhoneの発表を前に、第3四半期決算などでAppleの苦戦が伝えられている。消費者の買い控えが起きていることも予想されるが、米IDCが発表したレポートでは、世界スマートフォン市場でAppleがシェアを低下させる一方で、LGやLenovoなどが躍進を見せており、これまでSamsungとAppleが2強だったスマートフォン市場で多様化が進みつつあることがうかがえる。Appleとしては新型iPhoneに希望を託したいところだが、消費者のニーズも多様化している現在では、新型iPhoneが発表されたとしても、かつてのような熱狂は起きないのかもしれない。