第65回アカデミー作品賞を含め4部門を受賞したクリント・イーストウッド監督・主演の西部劇を、日本映画としてリメイクした『許されざる者』が遂に完成し1日、完成報告会見が都内で開催され、主演の渡辺謙、佐藤浩市、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里、小池栄子、李相日監督が登壇した。
本作の舞台は、明治新政府の下で開拓が進められている1880年の北海道。かつて“人斬り十兵衛”と恐れられた釜田十兵衛は、今は心を改め、妻亡き後、子供たちと慎ましい生活を送っていた。ある日、昔の仲間・馬場金吾(柄本明)から賞金首の話を持ちかけられ、子供たちのために再び剣を取る。 日本版では、『フラガール』(2006年)、『悪人』(2010年)の李相日監督がアダプテーション脚本を書き、監督を務めた。十兵衛役の渡辺は「ようやくできました。僕の中でも刺激的、冒険的な作品になったと思います」と、感慨深い表情で挨拶をした。
会見では、すでに完成した作品を見たというイーストウッドからの手紙が披露された。それは「素晴らしい出来で、非常に満足しています。私の大事な友人である渡辺謙も、素晴らしい演技を見せてくれました。李相日監督をはじめ、本作にかかわった方々への成功を祈っております」と、賛辞に溢れた内容だった。それを受けて渡辺は「あっさりと日本映画に置き換えることを許してくれたのは、彼の懐の深さ。許してくれたのはもちろん、さらに深く受け止めてくれたんだなと思いました」と感激しきりの様子。李監督はイーストウッドについて「映画界の神様」を称し、「見ていただけただけでも光栄。必死でやったことが、何か映像を通して伝わったんだなと」と、喜びを口にした。
現場はかなり過酷を極めたようで、忽那や小池が、極寒の北海道ロケについて「寒かったです」と激白。柳楽は、寒さよりも大変だったのは、「李監督の演出です」と告白して笑いを取りつつ、たっぷり絞られたことについては「幸せなことでした」とコメント。佐藤は自分よりも「人を身の危険にさらすシーンが多々あった」と振り返り、上半身裸で宙吊りになった柄本を木刀で殴るシーンのエピソードを披露。柄本も笑いながら、「零下10何度のシーンで、僕そっくりの死体を作ったんですが、監督から『死体をやってください』と言われました。また、佐藤浩市さんにはバンバンとやられ、10時間くらいずっと吊るされ、次の日、腕が上がらなかったです」と、凄まじい撮影秘話を暴露した。
そんなハードな撮影を乗り越え、完成した日本版『許されざる者』。李監督は、キャスト陣の恨み節に「全部、僕が悪いです」と、お茶目に謝罪しながらも、「これで失敗したら、日本映画界どころか、僕はどこにも居場所がなくなります」と苦笑いした後「厳しい環境の中、この作品を撮り切れたことを本当に誇りに思います」と、力強くアピールした。『許されざる者』は9月13日(金)に公開される。