7月23、24日に東京ビッグサイトにて「高齢者住宅フェア」が開催された。会場内では、最新の医療・介護サービスを体験でき、介護や高齢者向け住宅、医療分野に関連する専門セミナーも聴講できた。出展社の中には、認知症予防対策としてロボットやカラオケなどを提案する企業も。最新の介護サービスをリポートする。
人型ロボットとのコミュニケーションで認知症予防
100を超える出展社が軒を連ねる中、介護予防機器では、富士ソフトが開発した人型コミュニケーションロボット「PALRO」(67万円)が目を引いた。全高約40cm、重量約1・6kgの「PALRO」は、音声・方向認識用マイクやCMOSカメラ、測距センサーを兼ね備えており、会話したり、歩行したり、インターネットとつながったりできる。ゲームやダンス、クイズ、日常会話などの機能を有しているため、PALROとコミュニケーションを取ることが、運動器の機能向上や認知症予防対策につながるという。
カラオケで歌って踊って、認知症を防ごう!
エクシングが提案する高機能カラオケ「JOYSOUND FESTA」(価格非公表)は、高齢者向けの専用コンテンツ「健康王国」を搭載。任天堂の「Wii U」の本体内蔵ソフトとして開発したシステムが、ベースに使われているのが特長だ。機能改善用のコンテンツとして、高齢者向けの座ってできるフラダンス、名曲に合わせた体操ができる「名曲健康体操」、愛知県歯科衛生士会が監修した「口腔(こうくう)体操」などを楽しむことができる。クイズで遊んだり、懐かしい昔のニュース映像やテレビ紙芝居を見たりすることも可能だ。
同社は三重大学の医学部・教育学部と「カラオケが認知症に及ぼす効果」に関する共同研究も行っている。三重大学が作成した「歌唱療法プログラム」を実施したところ、被験者に物事を実行することに対する意欲や注意の改善が見られたそうで、昨年2月に研究の中間報告を行っている。
両社のサービスは医療・介護施設向けのものだが、「JOYSOUND FESTA」は、似たような機種を個人が自宅に購入した例もあるという。
在宅での生活をサポートする「ケアロボ」も
在宅の高齢者や認知症患者をサポートするサービスでは、テクノスジャパンの包括支援システム「TASCAL(たすかる)」が充実していた。犬型のケアロボット「パル」(8万~)は、マイクやカメラ、スピーカーを内蔵しているため、独りで自宅に住む高齢者の様子を、直接訪問することなく確認することが可能だ。別売りの「くすりコール」(6万8,000円)などを活用すれば、例えば、認知症の独身高齢者が薬を決まった時間に投薬していない際には、遠方にいる介護者やケアマネージャーらの携帯電話などにアラームで知らせてくれるという。他にも「生活コール」(5万8,000円)や「点滴コール」(10万6,000円)などの関連製品を備えている。
一昨年度の要介護(要支援)認定者は531万人
厚生労働省の平成23年度介護保険事業状況報告によると、介護保険の第1号被保険者数は2011年度末の時点で2,978万人、要介護(要支援)の認定者数は531万人と、ともに年々上昇している。近年は、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や認知症を患っている人が認知症の人を介護する「認認介護」が社会問題になるなど、介護問題は以前にも増して深刻になっている。
要介護(支援)者とならないためには、常日頃からの予防対策が重要となってくる。今回紹介した富士ソフトやエクシングの他にも、楽しみながら予防に役立つサービスを提供する企業は数多く存在する。「自分の両親もそろそろ…」という方は、一度、どういったサービスがあるのか、これを機に調べてみるのもいいだろう。そうすることが、結果的に自分の介護の負担を減らしてくれることにつながるかもしれないのだから。