NVIDIAは30日、同社が主催するGPUコンピューティングのイベント「GTC Japan 2013」を東京・六本木で開催した。55のセッションと18の展示セッションが行われる、日本最大級のGPU関連イベントとなる。
基調講演では、CUDAの発明者でもあるNVIDIAのGPUコンピューティングソフトウェアゼネラルマネージャー イアン・バック氏が、GPUコンピューティングの開発であるCUDAやGPUの現在の状況、今後の方向性などを紹介した。
イアン・バック氏は、まずPentium時代におけるCPUとGPUの性能比較や、同社のフラグシップモデル「GeForce GTX Titan」などで採用されているKeplerアーキテクチャのGK110などを紹介した。
GPUの歴史。新製品ごとに動作周波数や処理能力が向上してきた |
Tesla K20やTesla K20X、GeForce GTX Titanに採用するGK110コアのブロックダイアグラム。実際にはK20やTitanではSMXが一部無効化されている。 |
同氏はCUDAの広がりについて、3つの成功要因を挙げる。1つは「シンプルで明快なプログラミング言語」の対応で、利用者が多く、ユーザーがもつ経験がいかせるC言語ベースで開発した点。また、C言語をベースに必要な部分だけ拡張した点、そして「マルチスレッドの採用」でプログラマがスレッドIDを使用した処理が行える点だ。
こうしてCUDAは世界で8,000の研究所で研究され、また、62カ国640の大学で扱われるまで広がったという。
講演では、独立行政法人 理化学研究所 情報基盤センターの黒川原佳氏が登壇し、GPUコンピューティングへの取り組みや今後のスーパーコンピュータ研究などを紹介。また、九州大学 情報基盤研究開発センターの青柳睦氏は、全国の大学や研究所などに設置されているスパコンをネットワークでつなぐHPCI(High Performance Computing Infrastructure)の現状を紹介した。
このほか、バック氏は、科学分野におけるGPUの利用法として、例えば動物の群れの大規模なシミュレーションや、細胞がどのような過程で皮膚や肝臓などへ変化するのかといった、GPUの並列演算能力が必要となる大規模なシミュレーションについて紹介。 また、ロボット産業では2Dから3Dへのリアルタイム変換や物体の見分け方、自動車分野では歩行者や車線の認識や標識に沿った速度といった、複雑で大量のデータ処理でGPUによる効率的な並列処理が必要とされるという。
講演の中では、コンパイラ・ツールサプライヤのPGIを買収したことを明らかにされた。バック氏はPGIを「x86アーキテクチャでCUDAを走らせた初の会社」と紹介し、優秀なGPUグループ会社に迎えられて嬉しいとコメントした |
今後の挑戦として、GPUの並列処理をもっと効率化すること、ローカルコンピューティングの最適化、全てのプログラミング言語対応などのほか、OpenACCやC++、HTMLなど、あらゆる環境でのGPUコンピューティングのサポートを目指すと説明する。
7月24日に発表した「MobileKepler」にも触れ、TegraがCUDAをサポートすることによる、タブレットやスマートフォンの高性能化に期待を見せた。なお、「MobileKepler」は現行GPUで採用されているKeplerアーキテクチャをモバイル機器向けSoCに提供するもの。GPUの並列処理はゲーム分野でも重要で、開発費用として10億ドルを計上していたが、それは今後も継続していくという。
最後に、バック氏は「GPUは開発者のものであり、コミュニティのものである。パワフルなGPUで何ができるかを、どうぞ楽しんで下さい」と述べ、基調講演を締めくくった。