海外投資についての連載第2回では、世界最大の経済大国、米国への株式投資について考えました。今回は、政府債務危機に揺れる欧州への株式投資について考えてみます。
欧州諸国の債務問題は懸念材料だが、長期投資の対象となる企業は少なくない
ユーロ圏の債務問題が全面的に解決されることは極めて困難であるとの見方は最近生まれたものではありません。ギリシャの債務問題に対する懸念は多少緩和されていますが、同国はまだ多くの問題を抱えています。ギリシャよりも経済規模が大きい、スペイン、イタリア、ポルトガルの債務問題も残されており、ユーロ圏諸国はドイツを除くと株式投資の対象にならないとの指摘があります。また、英国も経済成長がやや停滞していることから、英国株への投資にも積極的になれないとの声が聞かれています。
ただし、ユーロ圏や英国の経済成長が停滞しているという理由だけで、有力な欧州企業に背を向けてしまうことは少々もったいないと思います。投資家の間では、「割安感があり、財務内容がしっかりしている企業」は長期投資の格好の対象になるとの意見が少なくありません。ロールスロイス、ロシュ、ロイヤル・ダッチ・シェルなどがそれに該当しているようです。
市場関係者や専門家は、これらの企業は、ユーロ圏の債務危機や世界経済の成長鈍化などの厳しい環境においても十分存続することができると判断しているようです。欧州株投資に対する関心がやや高まっている理由のひとつが、欧州中央銀行(ECB)と英国中央銀行(BOE)は金融緩和を積極的に推進する方針を表明したからです。
ECBとBOEの金融政策はこれまで以上に成長を重視したものになりつつあります。低金利政策の長期化は、債券市場から株式市場への資金移動を促す一因となります。欧州や英国の「優良企業」への株式投資は、債券投資よりも高いリターンをもたらすことが期待されています。
ユーロ圏の債務問題に対して楽観的な予断を持つことはできませんが、欧州中央銀行のドラギ総裁は「ユーロを守るためには何でもする」と公言しています。ユーロ相場を安定させることは、ユーロ圏への投資促進につながることになるため大変重要です。ECBとBOEが欧州全体の景気回復を促すために追加的な緩和策を導入し、経済成長を支援することが期待できるならば、欧州株・英国株の割安感は鮮明となるかもしれません。
投資判断の目安になる指標とは?
欧州・英国の株式投資を行う場合も、「配当利回り」を無視できないとの声が聞かれています。また、米国同様、ROEは重視される傾向があるようです。「経営の効率化」は欧州の企業が最も重視する項目となりつつあるようです。ROEの水準が相対的に高い会社は、投資対象となるケースが多いはずです。
配当利回りについては、米国以上に重視される可能性があります。ECBとBOEは政策金利をさらに引き下げる可能性があります。政策金利の引き下げに連れて長期金利は低下する可能性があるため、配当利回りが長期金利を上回る企業などが投資対象となりえます。
なお、欧州委員会は今年5月、ユーロ加盟各国に対する経済・財政政策勧告を発表し、スペイン、フランス、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロベニアの6カ国について財政赤字を3%以下(対GDP比)に削減する期限を1年ないし2年先送りする方針を打ち出しました。
ユーロ圏諸国の債務問題の解決には長い時間が必要となりそうですが、過度の歳出削減によって経済が悪化し、債務削減が極めて難しくなってしまうことは辛うじて回避されることになりそうです。ユーロ圏諸国の内需押し上げへの期待が浮上しているようですが、この事は株式相場に対する支援材料にもなります。欧州株投資を始める、いい機会となるかもしれません。