既報の通り、iCloud上で利用できる「iWork」のベータ版の提供が開始された。現在のところ、利用できるのは招待ユーザーだけということで、筆者のところにも招待メールが来て利用が可能になった。果たしてクラウド版iWorkのデキはどうなのか、チェックしてみたい。

「iWork」はアップルがMac用に開発したオフィススイートソフト。レイアウトに優れるワープロソフト「Pages」、報告書など表やグラフを含んだ文書が作りやすい表計算ソフト「Numbers」、そして故スティーブ・ジョブズが自らのプレゼンのために作った高機能プレゼンソフト「Keynote」の3本からなり、現在Mac版、iOS版がそれぞれ販売されている。Miceosoft Officeの文書も読み込んで修正することができることや、iCloudを介してMacとiOS機器で文書を共有できるなど、使い勝手も良い。ただ、これまでデスクトップではMac版だけしかなかったこともあり、Macユーザーが使うソフトという認識が強かった。しかし今回のiCloud版はWebブラウザベースのソフトになり、「iCloud.com」にアクセスすればMacだけでなくWindowsからも利用できるようになる。ネットに接続している環境が必要なものの、iPodの普及がiTunesのWindows版の登場から始まったことなども考えると、今回のWindows対応は大きなポイントだ。特にiPhone/iPadを利用しているユーザーにとっては、iWorkを使うことで美麗な文書をソフトを購入することなく利用できるようになるかもしれない(現在のところ利用料その他については発表されていない)。

iOS版にほぼ準拠

それでは実際に使ってみよう。

iWork for iCloudを使うには、iCloudのサイトにアクセスする。ログインすると、これまでのアイコンにくわえてPages、Numbers、Keynoteの「beta」アイコンが並んでいるはずだ。

iCloudにアクセスするとそれぞれアイコンが並んでおり、クリックして利用を開始できる

ここではKeynoteにアクセスしてみよう。アイコンをクリックすると、iCloudに保存しているKeynoteファイルが表示され、ダブルクリックすれば別ウインドウが開いて編集が可能になる。表示などはiPad版に近く、新規書類のテンプレートもiOS版と同じく12種類から選ぶことが出来る。Pages、Numbersも内容的にはiOS版とほぼ同じと見ていいだろう。

現在のところ、各種ツール類は英語表示。利用できる日本語フォントはヒラギノゴシック、明朝のみ。これはiOS版と同じ内容だ。アニメーションに関しては、画面遷移(トランジション)には対応しているが、写真やオブジェクトを個別に動かすアニメーションには対応しておらず、Mac版やiOS版で設定されていても無視されるようで、Playボタンを押してプレゼンを再生しても実行されなかった。また、プリントアウトにも対応しておらず、「Share」ボタンを押してファイルを作り、メールで送って処理するようになっている。

Keynoteを開くとiCloud上に保存されたKeynoteファイルと新規ボタンが表示される。PowerPointファイルを開きたいときは、ブラウザ内にファイルをドラッグ&ドロップする

ファイルを選ぶと別窓でプレゼンファイルが表示され、編集/再生可能になる。アニメーション機能はないがトランジションは設定可能だ

Shareボタンを押すとKeynoteファイル、PowerPointファイル、PDFのいずれかのファイルをメールで送ることができる。PDFはファイルサイズにもよるが時間がかかることがある

Windowsへの対応度合い

ではWindowsでアクセスした場合の動作なども検証してみよう。ここでは「VMWare Fusion」上のWindows 7からアクセスして検証を行っている。

まずWindows Explorerでは動作しなかった。プラグインを入れるなどの挙動はあったが、結局開くことはできないようだ。

Windows Internet Explorerでアクセスすると開くことができなかった

次にGoogleの「Chrome」でアクセスしてみたが、問題なく開くことができた。フォントやアニメーションなどもMacでアクセスしたときと同じだ。Windows上のPowerPointファイルをドラッグ&ドロップで読み込ませると、正しく表示することができた。ただしフォントはヒラギノではなくTimes Romanなど他のフォントが指定されており、表示などがずれることがあるようだ。

Chrome上で先ほどのKeynoteファイルを表示。問題なく表示され、ツール類、ファイル、トランジションも同じものが利用できた

Windows上にあるPowerPointファイルをドラッグ&ドロップすると、iCloudにプレゼン書類をアップロードして利用可能になる

互換性も高いがレイアウトに一部ずれなどもあるようだ。フォント指定は他のものになっている

ちなみにiPadからiCloudにアクセスするとメニュー表示もない状態。今後利用できるようになるかはまだわからない

iWork for iCloudが正式に利用できるようになるのはこの秋からだ。しかしレイアウトの再現性も高く、使い勝手もiPad版と同じレベルならかなり使い手のあるツールとなることは間違いない。特にiOS版を利用している人にとっては、デスクトップPCでも同じファイルを編集できるようになり非常に便利に使えるようになるのではないだろうか。正式公開に期待したい。