クリプトン・フューチャー・メディアは24日、都内で行われたヤマハの新製品発表会の中で、ボーカロイド文化の火付け役とも言える「初音ミク」の最新バージョンである、「VOCALOID3」対応の歌声ライブラリ「初音ミク V3」および「初音ミクV3 ENGLISH」についてプレゼンテーションを行った。

初音ミクの最新バージョン「初音ミク V3」のコンセプトは「誰もを音楽クリエイターに」

クリプトン・フューチャー・メディア メディアファージ事業部リーダー 田名部茂氏、同社代表取締役 伊藤博之氏(右)

この発表会では、発表から10年間にわたりWindowsを搭載したPCで動作していた歌声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」がついにMac OSにも対応することがヤマハの「ボーカロイドの父」こと剣持秀紀氏より発表された。これを受け、クリプトン・フューチャー・メディアがリリースする最新の歌声ライブラリ「初音ミクV3」についても、Macに対応することが明かされた。

「初音ミク V3」は、これまでの製品と異なり、歌声ライブラリに加えてボカロ曲制作に必要なボーカルエディタ、DAW、ソフト音源が同梱されている点が特徴だ

「初音ミクV3」の開発コンセプトは「誰もを音楽クリエイターに」。歌声ライブラリだけでなく、VSTプラグインに対応したボーカルエディタ「piapro studio(ピアプロスタジオ)」、DAW(音楽制作ソフト)、ピアノやギター、ドラムなど200種類のソフト音源といった、音楽制作に必要なソフト群をオールインワンパッケージとした製品となる。同社の伊藤社長によれば、これまで初音ミクを使ったエントリーユーザーから「歌声以外はどうやって作ったらいいのか?」という質問が多く寄せられていたそうだ。同社はこの製品によってその問いに答え音楽制作の裾野を広げる一方で、既存の初音ミクユーザーには同ソフトの優待販売が行い、既存ユーザーへのサポートも行っていく。

ボーカルやトラックをループ再生しながらの編集を可能にする「ピアプロスタジオ」を用いたデモンストレーションが行われた。ここで披露された画面は開発中の物で、製品版とは異なることがあるとのこと

また、同ソフトに収録される初音ミクの歌声は、「V3」というソフト名の通りVOCALOID3ライブラリとなるが、長らく親しまれてきたVOCALOID2ライブラリのニュアンスを残しつつ、VOCALOID3の長所であるトライフォンに可能な限り対応し、音のなめらかさと既存の声のニュアンスとの両立を追求した。この製品には初音ミクのVOCALOID3対応日本語ライブラリが複数収録されることになっている。そのほか、同製品のMac対応に関して、付属のDAWのAudioUnits(アップルがMac OS Xより提唱している規格)にもアップデータで後日対応する予定だ。同ソフトの発売時期などの詳細は8月上旬に発表される。

「初音ミクV3 ENGLISH」は、初音ミクのライブラリでは初となる英語版の歌声ライブラリ。「初音ミクV3」と同様、DAWやソフト音源、ボーカルエディタが同梱される。英語の発音のブラッシュアップに2年間を費やした同製品は、北米、中南米、欧州、台湾ほかの地域で世界同時発売となる。ちなみに、「初音ミクV3」の日本語版と英語版は別パッケージとなるため、両方使いたい場合は2本のソフトを購入する必要があるとのことだ。

Mac対応に関して、VSTだけでなくAU(AudioUnits)もサポートする

初音ミク初の英語版「初音ミクV3 ENGLISH」

「MEIKO」のVOCALOID3音源も2013年秋に登場。初音ミクと同じくMacに対応する

同社が展開する今後のボーカロイド関連のトピックス

そのほか、同社の女性歌声ライブラリMEIKOもVOCALOID3に対応し、「MEIKO V3」として2013年秋に登場することが明かされた。こちらもMac対応となり、同時期に今年2月に発売されたVOCALOID3歌声ライブラリ「KAITO V3」もMac対応となる。それだけではなく、今後同社のボーカロイド音源は順次Mac対応となり、既存ユーザーへの優待価格の設定も行われるとのことなので、「鏡音リン・レン」や「巡音ルカ」のユーザーも続報に期待したい。

さらに、今後は「ピアプロスタジオ」のアイコン公募やクリエイター向け新プロジェクト、英語版のリリースに際して世界をまたにかけたコラボやコンテストを展開していくとのこと。これから初音ミクのリリースに際してさまざまな展開が行われるようだが、まずは「初音ミク V3」の発売日など、詳細の発表を待ちたいところだ。