テレビが高機能化し、インターネットへの接続機能やスマートフォンとの連携など、さまざまな機能が搭載されるようになっている。いち早く「スマートテレビ」というキャッチフレーズでテレビの高機能化を図ったLGエレクトロニクス・ジャパン。その「LG Smart TV」シリーズの最新機種で同社が追求した「スマート」とは何か、同社の部長/C.E.商品企画&マーケティングチーム長の土屋和洋氏に話を聞いた。

「LG Smart TV」シリーズ

映像配信サービスの普及で進むテレビのスマート化

土屋和洋部長

テレビのスマート化は、多チャンネルのCATVや映像配信サービスが普及する米国などで先行しているが、国内でもU-NEXTやHuluをはじめとした映像配信サービスが普及し始め、スマート化が進展している。最近ではLGだけでなく、家電各社ともインターネット接続や映像配信対応のテレビをリリースしている。

LGでは、「国や地域の市場やインフラの状況に応じて最適な商品を投入していく」(土屋氏)という戦略で、2012年からは日本市場に「LG Smart TV」を投入している。それぞれの市場に合わせた製品ということで、日本では何よりも「高画質」を重視してチューニング。「LG Smart TV」シリーズでも「当たり前」の機能として特に訴求はしていないが、消費者の「高画質」への要求が強いため、しっかりと高画質化を追求しているという。

37型を置いていた場所に47型を置ける

それに加えて、「LG Smart TV」シリーズの訴求ポイントは「サイズアップ」「リラックス」「メガコンテンツ」の3つの点だと土屋氏は言う。

「サイズアップ」は、薄型化やわずか2.6mm(※)の狭額縁などの省スペース化を図ったことで、今までよりも大きなインチサイズのテレビが設置できるようになる、というのがポイント。テレビ台は今までと同じサイズであっても、薄型化や狭額化でより大きなサイズのテレビが置けるようになるわけだ。調査では、買い換え需要におけるサイズアップの要望が強いため、例えば数年前のテレビであれば「37型の場所に47型が置けるぐらい」(土屋氏)の省スペース化で、10インチのサイズアップができるという点をアピールする。

※「55LA9600」の場合。

大画面ながら、狭額縁化などで省スペース化を図り、「同じスペースでより大きな画面サイズ」を実現している

視聴者はリモコン操作をしたいのではなく、あくまでテレビを見たい

もう1つのポイントである「リラックス」は、優れた操作性、軽快な動作、UI(ユーザーインタフェース)の工夫などで、快適にテレビを視聴できるというものだ。「リラックス」を実現するために開発されたのが「マジックリモコン」。これは、リモコンをテレビに向かって動かすと、それに合わせてカーソルが動いて機能を選択できるというリモコンで、少ないボタン数とボタン操作でも「スマートテレビ」の複雑な操作を簡単に行えるようにしている。

人間工学にもとづいて、手にフィットするデザインのマジックリモコン。先端をテレビに向けてカーソルを操作する

画面上のカーソルをマジックリモコンで操作し、たくさんのボタンを押さなくてもダイレクトかつ簡単にアクセスできる

LGでは、イノベーションラボという研究機関を設置して、各国市場に合わせた視聴者の行動を分析し、最適な操作性を追求している。その成果の1つがこのマジックリモコンだという。昨年モデルに比べ、さらにデザインを改良するなど、操作性を進化させている。

マジックリモコンによってユーザーは、ボタンを何度も押さなくてもダイレクトに操作が行えるうえに、リモコンではなくテレビの画面を見ながら操作が行えるようになる。「視聴者はリモコンを操作したいのではなく、テレビを観たい」(土屋氏)という基本を実現するための工夫だという。

通常のリモコンと比べるとはるかにボタン数が少なく、調査では年配のユーザーからの評価も高いという

このマジックリモコンにはマイクも搭載されており、キーボード入力の代わりに音声で文字入力し、Web検索を行うといった音声認識操作も行える。ソフトウェアキーボードの操作が面倒な場合でも、ユーザーがより快適に操作できるように工夫しているわけだ。

ソフトウェアキーボードで文字入力もできるが、音声入力によって素早く検索できる

テレビ上部に配置されたコミュニケーションカメラによって、ユーザーの動作を認識して基本操作できるモーション認識機能も、「リラックス」を実現するための機能だ。カメラを起動させると、テレビ視聴中に常時顔検出を行い、顔の横に手があった場合にモーション認識を行う、という仕組み。カメラに手のひらを向けて上下させるとカーソルが動き、拳を握るとチャンネルや音量などを上下させることができる。

テレビ上部にコミュニケーションカメラを配置。Skypeなどでテレビ電話としても使えるが、モーション認識にも使われる

モーション認識を使ってカーソルを動かし、手のひらを握ると決定となる

土屋氏は、例えばソファーに座ってお菓子をつまみながらテレビを観ていて、チャンネルを変えたい場合、普通なら手を拭いてからリモコンで操作するが、モーション認識なら手を拭かずに操作できる、と利用シーンの具体例を説明する。リモコンが近くになかったり見当たらなかったりした場合でも、手を動かすだけで操作できるのもメリットだ。

スマートフォンとの連携という点では、NFCタグの「Tag Onステッカー」を同梱。これにスマートフォンをタッチするだけで、テレビの画面をスマートフォンに映したり、スマートフォンからテレビの操作を行ったりできる。いちいちケーブルを接続しなくても、ワイヤレスでスマートフォンとテレビが連携でき、設定もNFCでワンタッチで行えるのが特徴となっている。

土屋氏は、「面倒な操作をなるべく少なくして、映像や情報に集中できる環境を整えていきたい」と強調する。リモコンでもモーション認識でもスマートフォンでも、ユーザーが使いたいものや使いやすいものを自由にチョイスできるように選択肢を提供し、全体の使い勝手の向上を狙っているわけだ。

放送波以外にも家庭内のさまざまなコンテンツをテレビで楽しむ

最後のポイントである「メガコンテンツ」では、テレビ放送、映像配信、インターネット、ゲームなど、さまざまなコンテンツがテレビで楽しめるというメリットをアピールする。しかし、それだけでないのが「メガコンテンツ」だ。

さまざまなインターネット上のコンテンツを視聴できる

スマートフォン、PC、デジカメなど、家庭内にはさまざまなデバイスがある。これらのデバイスに保存されたコンテンツも、有線、無線を使ってテレビに表示できる。土屋氏は、「身近にある機器も含めてのメガコンテンツ」と位置づけており、こうしたメガコンテンツをまとめて視聴できる点をメリットとしてあげる。

こうしたサイズアップ、リラックス、メガコンテンツといった特徴は、「LG Smart TV」が単なる「テレビ」でも単なる「スマートなテレビ」でもない、LGならではの「スマートテレビ」を実現している。

LGのテレビは、グローバルで共通の製品を単に国内に持ち込むのではなく、日本市場向けに高画質化や録画機能を独自に開発するなど、市場に合わせた機能や使い勝手の研究を行っている。土屋氏は、今後もさまざまなセンシング技術を使ってテレビの操作性の改善を図ったり、新しいデバイスによる画質向上や新しいサービスへの対応など、さまざまなチャレンジをしていく考えを示す。土屋氏は「世界最先端の技術を最速で提供する」ことで、他社に先駆けてテレビを進化させていくことに意欲を燃やしている。