中国人の妻と結婚して9年目になる著者が、日常生活を送る中で感じた、日中の文化の違いを紹介するコラム【中国人妻、あるある!】。前回は、「『誕生日』が2回ある」ことを紹介した。今回は、「驚くほど『教育熱心』である」ことを紹介したい。
妻と結婚する前、「中国人が教育熱心である」ということは、本などを読んで知っていた。何でも、中国人は自分を1代目としたら、3代目に当たる孫の代に一家が繁栄することを視野に入れて、自らを犠牲にしてまでも子供を熱心に教育し、さらに子供が孫を教育できるように物心両面で力を尽くすらしい。
ただ、日本人も同じ東洋人なので教育熱心なのは似たようなものだろうし、しかも最近は日本も少子化が進んでいるので、実はそれほど変わることはないのではないかと思っていた。
だが、やはり中国人は教育熱心だった。まず、長男が2歳ぐらいの時に、ひらがな表を作って長男でも見える壁の下のほうに貼った。さらに同じ高さの壁の別の位置に日本地図を貼った。これで長男は「あいうえお」をかなり早い段階で覚え、日本の各都道府県の名前と位置も覚えた。
また、妻は普段は節約家で、自分の好きな服も買わないし、化粧品などもほとんど購入しないが、子供の教育にはできる範囲内でお金を惜しまないようにしている。その一例として、古本屋で、大量に幼児向けの本を買ってくることが挙げられる。買ってくる幼児向けの本の内容は、私が小さいころよく読んでいたような歴史や昆虫の関連の本もあるにはあるが、クイズや算数関連の理系的な内容のものが圧倒的に多い。これは、第4回でも紹介したように、理系的教養を重んじる妻の志向が反映されている。
そのほか、通信教育の幼児向けコースや英語コース、学習塾、水泳、空手、中国語教室と、年齢を経るにしたがって、習い事も増えていった。
長男が小学校に入ると、学校の宿題もあるので、長男のやることは膨大なものとなっていき、しかも学校の宿題や学習塾の課題は妻自身が答え合わせまでやるので、妻も大忙しとなった。
ここで、「待った!」。お金がかかりすぎである。申し訳ないのだが、結婚前に私がほとんど貯金をしていなかったので、今からお金をかけていると、長男と次男の大学費用が用意できない。「マイナビニュースの家計相談の連載」(http://news.mynavi.jp/column/kakeiboshindan/index.html)を見ても、子育て関係ではどの相談を見ても「大学費用の貯め時は子供が小学生の時」と必ず書いている。なぜなら、中学以降は塾代や部活代などが今よりもっとかかるためである。
しかも、私のお小遣いは昼食代込みで3万円なので、子供にばかりお金をかけるのは、少し抵抗がある。もっと夫婦で楽しんだりしてもいいのでは、と思ったりしたのである。
そこでそういう意見を清水の舞台から飛び降りるような思いで妻に伝えると、意外とあっさりと分かってくれた。ここが妻のいいところである。つまり、論理的に伝えれば分かってくれるのである。子供と家計にあまり無理がないような工夫をすることで合意し、子供には、本当に必要な習い事や通信教育だけをやってもらうことにした。
最近になって、これまで妻が努力してきた成果が、徐々にでてきた。水泳を続けているので、子供の肩幅は広くがっしりとしたものになり、中国語のほうも、さまざまな言葉を話せるようになってきている。探偵漫画を好んで読むし、なんだか危機感を覚えるようになってきた。このままでは、体力的にも知的な能力でも、早い段階で私を追い抜いてしまうのではないかという焦りである。
そこで最近は、子供が通っているスイミングスクールで週1回泳ぐようにするように決めたほか、ラジオレコーダーを買って、中国語講座も熱心に聞くようになった。妻の教育熱心は、思わぬ方向へ、私を動かし始めたのである。
(イラスト : ミサイ彩生)