甘利明経済財政担当相は23日、2013年度の経済財政報告(経済財政白書)を閣議に提出した。白書は副題を「経済の好循環の確立に向けて」に設定。日本の景気は2013年に入って持ち直しに転じているとし、「長引くデフレから反転する兆しが現れている」との見方を示した。
白書は、大胆な金融政策と機動的な財政政策の実施により、家計や企業のマインドが急速に改善したと自賛。マインド改善の影響は実体経済にも波及し、個人消費などの支出増が生産増につながり、さらに所得増をもたらす「好循環の芽」が出ていると述べた。
先行きについては、「経済政策のレジームチェンジの効果」が本格的に発現し、「景気は次第に回復へ向かう」と分析している。
企業部門の動向を見ると、低迷が続いていた生産は2012年末から持ち直しているほか、企業収益は円安の影響で製造業を中心に増加し、リーマンショック前の水準を回復。一方、設備投資は低水準にとどまっているとし、企業マインドや収益環境の改善などが設備投資の増加につながることを期待している。また、円安の動きについては、全産業では1円の円安で企業収益が年ベースで平均1.0%増加するとし、円安効果を強調した。
物価については、「平均購入単価」が上昇していることから、消費者の低価格志向は緩和されつつあると分析。今後、デフレ脱却を実現するには、金融緩和を進めるとともに、需給バランスと消費者物価上昇率の関係を上方シフトさせることが重要とする考えを示した。
賃金については、企業収益の変動に比べて賃金の変動が抑制されていることに言及。今後の政策運営において、成長戦略などにより企業の収益機会を増やすと同時に、政府が賃金引き上げに向けた環境作りを行い、企業収益の改善に伴って賃金が上昇する仕組みを整備する必要があるとした。
財政面では、基礎的財政収支赤字と債務残高の累積が長期化しており、財政健全化は喫緊の課題だと指摘。そのためには消費増税が必要だとし、「税収調達力が高いことを考えると、税率の引上げに伴う税収増加の効果は大きい」と主張した。
消費税引き上げによる景気への影響については、EU諸国で消費税に当たる付加価値税を引き上げた結果、リーマンショック前はプラス成長が続いた国も多いとする例を挙げ、必ずしも経済全体を低迷させるものとはならないと説明している。