海外の反応について
--:それから、海外での反応はどうですか?
石渡氏:10カ国以上でニュースに取り上げられてますね。申し込んでくれている人でいうと、米国人が一番多いですね。同じぐらいイギリスがあって、その次がちょっと少なくなりますが、日本。さらにヨーロッパ各国などが続くという具合です。直接もらっているコメントとしては、海外からは日本のデザインや技術と、イタリアのArduino、英国のRaspberry Piというコラボレーションのバランスがよくていいね、といったコメントはもらってますね。
--:最も多いのが米国人ということですが、彼らの文化というと、大きくてゴツイものが好きとか、アメコミなどで見られるような日本人とはデザインセンスが大きく異なる感じとか、こういうRAPIROのような日本のロボットアニメを彷彿とさせるようなデザインであると同時にかわいさもあるというものがどうなのかなと思いきや、米国人もこういうのを待っていた、ということなのでしょうか
石渡氏:いえ、確かに大きくてゴツイものが好きな方が実際には大多数だと思うんですよ。ただ、アメリカの人口も3億人ですから、日本的なものが好きな方は大勢いますし、日本的なデザインのこうしたものの供給がこれまではなかったから、今回、反応してくれたということではないでしょうか。3億人の1%のさらにその1%の3万人でも、それでも私たちから見たら十分なパイなんですよ。
--:これだけ反応がよかったのは、ある程度は計算されていましたか?
石渡氏:いえいえ、「うまくいってよかった」ってことで胸をなで下ろしている状態ですね。Kickstarterでどれだけの人が集まるのか、なかなか予想を立てられなかったので、こうしていろいろとメディアに取り上げてもらって、一般の方にも注目してもらえて、実際にKickstarterで申し込んでもらえてよかった、というのが本音です。
--:日本人は英語の壁があるからKickstarterでの申し込み自体は少ないということですけど、日本でも間違いなく注目はされていますね、RAPIROの発売ニュースもかなり注目を集めてましたし。それでも欧米からの申し込みが多いわけですが、そのほかの地域とかはいかがですか?
石渡氏:こういうデザインはアジアの方が人気が高いので、アジアはアジアでちゃんとやれば、いけるんじゃないかと思います。台湾とか、タイなんかからも結構問い合わせがありますね。これだけ話題になると、さまざまな国でディストリビュータが販売してくれそうなので、今後はそこに期待しています。ただ、今はKickstarterを見てほしいですし、Kickstarterで購入する方がお得です。
--:確かに日本のマンガやアニメが好きって人も多いですからね。色々な手段で視聴しているとは思いますが、日本の地上波で放映されているような最新のアニメの感想スレッドとかも、すぐに立ちますからね
石渡氏:本放映終了10分後とかには、字幕スーパー入りの違法動画がアップロードされていたりしますね。翻訳も、彼らは「同胞」のためにボランティア感に満ちあふれた状態でやっていますから、ものすごい速さですよね。
--:アニメの制作会社にはたまったものではありませんね
石渡氏:まぁ、日本のビジネスの仕方にも問題があるのではないかと思います。海外のファンもどうもちゃんとお金を払いたいとは思っているようなんですよ。ですから、DVDとかBDなどを販売すればちゃんと買ってくれますし。ただ、翻訳がどうだとかいって出さないわけですね。グッズだって売ればちゃんと売れますし。向こうのファンも、有料チャンネルとかでも日本のアニメを観ていたりするんですけど、その有料チャンネル自体が違法な手段によって字幕入りの日本のアニメを手に入れて放送していたりしますから、日本のアニメ制作会社にはお金が入ってこないんですよ。だからちゃんとそれを正規の方法で放映するようにするということと、映像を宣伝と割り切って、グッズを売ってその収入が日本の制作会社にちゃんと入るようにすればいいわけです。でも、なかなかそれができないみたいですね。
--:確かに、「攻殻機動隊」とかDVDのセールスで全米第1位を取っていたりするわけで、ちゃんとやればしっかり収入を得られると思うんですよね。それだけの知名度を得られれば、さらにグッズ展開でもいろいろと収益を上げられるでしょう
石渡氏:今、キーワードとして「ものづくり」が盛り上がっていますが、ものづくりのよさというのを正しく認識すべきで、RAPIROはモノですからダウンロードできないし、売りにくいんですけど、逆にいうとダウンロードできないということは強みでもあるんですよね。モノは買うしかないわけですから(画像12)。
--:ものづくりってちょっと勘違いされているところもありますよね。製造業がどうあるかというところにつながってくるのではないかと思いますが、クリエイターにばっかりスポットが当たる世界ではなくて、もちろんクリエイターにもスポットは当たるべきですが、当たり過ぎては逆効果かなと思うのですが、ものづくりの実質は地に足を着けて町工場のオヤジさんたちががんばらないといけない世界ということですよね
石渡氏:そうですね。実際、僕もあまり僕自身があまり前に出るというよりは、まず製品があって、あれを作ったのがこの人なんだ、という出方が望ましくて、出しゃばり過ぎないようには気をつけています。
--:プロジェクトX風というか(笑)
石渡氏:(笑)。
--:感覚的にはそんな感じですよね。力を結集して世界にアピールしてみたら反響があったよ、という
石渡氏:日本のコンテンツもいろいろとありますが、例えば、「天空の城ラピュタ」を観て、まず作品を好きになって、その監督である宮崎駿を好きになるという流れですよね。「ドラゴンボール」も作品として面白いから、作者の鳥山明を知れるわけですよね。その流れの方が正しい流れかと。この人がすごいから、この人の作品はこれです、というよりは、この作品を作ったのはこの人ですという出方の方が、長く続くんじゃないかなと思います。
--:今回のRAPIROのようなスタイルが伸びると、日本のものづくりの正当後継者的な形になっていくという感じもしますね
石渡氏:そのためには、スピード感なんですね、やっぱり。こういう時期に合わせてものを作るとか、例えばRaspberry Piが出て、実際には品薄でなかなか手に入らなくてやっと最近になって出回ってきましたけど、ともかく、そこからの時間の幅を短くしていかないと、なかなか。やはり、その時のものだから買うのであって、逆にそこを短くすることができれば、市場は世界にあるはずです。そこを大きな会社だと責任もあるので、なかなか難しいですよね。僕らも無責任にやっているわけではないんですけど、大きな会社はチェック体制とか何重にもなっていますし、意志決定もなかなかできないのでついていけない部分もあると思うんです。だからこそ小さな会社はフレキシブルにみんながほしいと思うものを出していけば、大きな売り上げを上げる必要もないので、十分な市場を作れてやっていけると思います。
--:ちなみに機楽は何人でやってるんですか?
石渡氏:私、1人ですね。アルバイトの学生さんはいますが。
--:社員1人の会社でも世界を相手に商売ができますよ、といういい例になりそうですね
石渡氏:それはもちろん、スイッチサイエンスさん、ジェイ・エム・シーさん、ミヨシさんのお力添えをいただいている3社のおかげです。
--:4社合計すると、何人ぐらいになるんですかね
石渡氏:4社の社員全員を足しても100人いないぐらいで、実際にこのプロジェクトに関わっている人数は各社2名ずつぐらいですので、10人に満たないですね。
--:10人に満たないメンバーで世界に打って出ているわけですね。そういう視点で見ると、また興味深いですね。ArduinoにしてもRaspberry Piにしても、まずものがあって、その結果としてそれを作った人たちがクローズアップされて尊敬を得ているという流れですし。そういった意味では、RAPIROは日本発にして日本初のこうしたプロダクトになるといえそうですね。ほんと、RAPIROは置物としても、デザイン的にいいですし
石渡氏:ありがとうございます。