米AT&Tは7月12日(現地時間)、米Leap Wirelessの12億ドルでの買収に合意したと発表した。現在、米国ではT-Mobile USAがMetroPCSを、ソフトバンク傘下に入ったSprintがClearwireの子会社化を進めており、業界再編の只中にある。一方でT-Mobile買収に失敗したAT&Tは契約者数あたりの周波数帯が最も少ない厳しい状態にあるとの指摘が行われており、今回のLeap買収はこれを補完するものとの見方だ。
Leapは「Cricket Wireless」のブランドでCDMA+LTEサービスを提供するプリペイド専業キャリア。もともとはQualcommのサービス部門が1998年にスピンオフされて誕生したものであり、米カリフォルニア州サンディエゴを本拠地としている。前述のように現在米国の携帯電話業界では大型再編が進んでおり、契約回線シェアでツートップといわれるVerizon WirelessとAT&Tに対抗するため、ライバルらが合併でネットワークならびに財務体質強化を狙っているところだ。だが同件を報じたWall Street Journalによれば、AT&Tの場合、オークションを含む活動で多数の周波数帯域を抱えるVerizon Wirelessや、NextelとClearwireの資産を抱えて全米トップクラスの周波数帯域を持つSprint、さらに単位契約数あたりの周波数帯域でT-Mobileにさえ抱える周波数資産では負けているといわれており、今回のLeap Wireless買収はこの弱点を強化するのが狙いだという。
今回の買収にあたり、AT&Tは一部地域でLeapの持つ周波数資産を手放さなければならないが、最終的に必要十分な周波数帯域を獲得できる見込みだ。ツートップのライバル買収ということで政府による差し止めが入る可能性も指摘されるが、WSJによれば元FCC関係者が今回の買収では問題ない可能性が高いと説明している。現在の契約者数は500万程度とAT&Tの20分の1程度だが、カバーエリア人口でいえば100万人規模に達し、さらに既存のCDMAネットワークに加えてAT&Tの4G LTEを利用することで、既存ユーザーは200万人規模のカバーエリアを利用できるようになるという。