賃貸住宅を借りる際に必要となる初期費用。初めて一人暮らしする方であれば、いったいどれくらいかかるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、賃貸契約で必要となる初期費用と、安く抑えるためのコツを不動産・住生活のプロに伺いました。
目次
- 賃貸契約の初期費用にはどんなものがある?
- ■必須費用
- ・敷金
- ・礼金
- ・前家賃
- ・仲介手数料
- ・火災保険料
- ■任意の費用
- ・保証料
- ・鍵交換費用
- ・消毒、クリーニング費用
- ・町内会費
- ・その他
- ■必須費用
- 賃貸契約の初期費用はいくらかかるもの?
- 【家賃6万円の物件を借りた場合の初期費用】
- 賃貸契約の初期費用を安く抑えるにはどうすればいい?
- ■礼金ゼロ、あるいは少ない物件から探す。
- ■「仲介手数料半額」もしくは「仲介手数料不要」の不動産会社を選ぶ
- ■「フリーレント付き物件」を探す
- ■引っ越し時期は閑散期の平日を狙う
- ■「敷金ゼロ」って本当におトクなの? 他費用も確かめて
- ■家具・家電つきの場合は相場と見比べる
賃貸住宅を借りる際には、家賃のほかに礼金や敷金などさまざまな初期費用がかかります。基本的には、まとめて支払う必要があるので、ある程度まとまった額のお金を準備しておきましょう。では、ここからは実際にどんなものが必要になるのかを解説していきます。
■必須費用・敷金借主が担保として預けるお金のことで、一般的には家賃の1~3カ月分程度です。家賃を滞納したときの費用として充てられたり、不注意で室内を汚したときなどの修繕費用になどに使われたりします。通常の暮らし方をしていれば、退去時にはそのほとんどが戻ってくるものです。
・礼金戦後の住宅が不足していた時期に生まれた慣習と言われています。家賃の1~2カ月分が一般的。大家さんに対して、「住まいを貸してくれてありがとう」という意味があります。ただ、賃貸住宅が数多く建った今の時代では、礼金ゼロの物件も増えてきています。
・前家賃民間賃貸住宅において、一般的に家賃は、契約した月に翌月分を支払う前家賃という仕組みです。月の途中で入居する場合は、入居日以降の日割り家賃と、翌月の分を支払うことが少なくありません。たとえば、15日から前家賃が発生する場合、15日分の日割り家賃と、翌月1カ月分が必要になります。
・仲介手数料物件を紹介してもらった不動産会社に支払うお金です。契約した不動産会社に対してのみ支払うものなので、内覧をしただけで不動産会社に支払う必要はありません。不動産会社が受け取る報酬は法律で定められています。賃貸住宅の場合、借り主と貸し主から合わせて1カ月分を受け取れることになっていますが、依頼者の承諾があれば、いずれか一方から1カ月分以内を受け取れることができます。借り主が1カ月分を払うことが多いのは、この「承諾した」という慣習からです。一方で、その不動産会社が所有する物件を借りる場合、仲介手数料は不要です。また、大家さんから手数料を受け取るため、借り主からは受け取らないという会社もあります。
・火災保険料賃貸住宅を契約すると、ほとんどの場合、加入を求められます。火災保険といいますが、実際の保険の対象は自分が持っている家財となります。つまり、家財保険と考えたほうがよいでしょう。そして、義務付けになる理由は、家財保険よりも、それに付加される「借家人賠償責任保険(特約)」に加入してもらうことが重要だからです。火災が起きて部屋が燃えてしまった場合、大家さんに対して損害を賠償する責任が生じます。「借家人賠償責任保険(特約)」は、これをカバーする保険です。では、いくらの家財保険に加入するべきでしょうか。自分の家財が全部燃えてしまったとして、買い替えを想定して総額を考えてみましょう。20代の一人暮らしであれば、どんなに多くても300万円ほどではないでしょうか。
■任意の費用・保証料賃貸住宅を借りる際、これまで連帯保証人を立てるケースが一般的でした。最近では、連帯保証人は不要な代わりに、保証会社に保証料を支払う仕組みを利用しなければならないケースが増えています。これは、もし家賃を滞納したときには、保証会社があなたに代わって一定期間、家賃を大家さんに支払うもので、連帯保証人を立てられない人には、メリットのある制度です。費用は保証会社によって異なるものの、目安として、家賃の50%から100%くらいと考えておきましょう。
・鍵交換費用前の入居者が使用していた鍵をそのまま使用するのは、防犯上避けた方がよさそうなものです。例えば、万一にも合い鍵があって、それが返却されていない、なんて場合もあるからです。トラブルを避けるためにも、入居前にはなるべく交換したほうがよいでしょう。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、鍵の交換費用は「貸し主負担」と明記されていますが、契約により、借り主負担が明記されている場合、負担をなくすには交渉する必要があります。もし、借り主が負担するのであれば、鍵の形式によりますが、1万円~4万円程度かかるのが一般的。契約前に必要額を確認しておくとよさそうです。また、新築物件では鍵の交換費用は必要ありません。
・消毒、クリーニング費用消毒料として、1万円~2万円程度必要となる物件があります。入居前に、消毒剤などで室内を除菌するものです。簡単ではないかもしれませんが、交渉次第でなくすことができる可能性があります。なお、新築物件では必要ありません。クリーニング費用は、入居時に支払ったり、退去時に敷金から差し引いて戻したりするもの。契約書に明記されていれば支払わなければなりません。一人暮らし向けのワンルームであれば、地域にもよるものの2万円~4万円くらいが相場ではないでしょうか。契約書に金額が明記されるので、事前に金額を確認し、相場も把握したいものです。
・町内会費物件によっては、町内会に入会することが義務となっていることがあります。金額はあくまでも目安ですが1カ月あたり200円~500円程度。半年分ほどを入居前まとめて払う場合もあります。
・その他引っ越し費用をはじめ、人によってはインテリア費用、カーテン代、ガスコンロ代などがかかることがあります。引っ越しは見積もりをとって比較検討するようにしましょう。初期費用を抑えるには、インテリアなどは引っ越し前にとりあえず一通り揃えるのではなく、実際に暮らしてみてから、本当に必要なものを購入するという方法があります。
賃貸契約の初期費用はいくらかかるもの?では、一人暮らしを始めるにあたり、初期費用はどの程度を見込んでおけばよいのでしょうか。
【家賃6万円の物件を借りた場合の初期費用】・家賃 6万円
・敷金 6万円(1カ月分として)
・礼金 6万円(1ヶ月分として)
・前家賃 3万円(日割り分)+6万円(翌月分)
・仲介手数料 6万円
・火災保険料 1万円
・鍵交換料 2万円
・クリーニング代 3万円(入居時に必要とすると)
・保証料 3万円(家賃の0.5カ月分として)
合計 42万円
賃貸住宅の初期費用は、まとめて払う必要があるため、結構な金額がかかります。地域によっても異なりますが、相場として、家賃の4カ月分から7カ月分くらいを考えておきましょう。
賃貸契約の初期費用を安く抑えるにはどうすればいい?では、これだけかかる初期費用を抑える方法はあるのでしょうか。安く抑える方法を考えてみました。
■礼金ゼロ、あるいは少ない物件から探す。礼金は大家さんに「部屋を貸してもらってありがとう」という意味で納めるものであり、退去時には戻らないお金です。最近は「礼金1ヶ月」が主流で、なかには「礼金ゼロ」という条件の物件もあります。関西や中国、九州地方などの地域でよく見られる「保証金方式」のところでも、全体の金額が少ないものを選びましょう。
■「仲介手数料半額」もしくは「仲介手数料不要」の不動産会社を選ぶ最近では、「仲介手数料半額」の会社も増えてきています。さらに不動産会社の所有物件を選べば、仲介手数料は「不要」。自社で持っている物件=貸主=を紹介するのですから、借りたい人と貸したい人をつなぐ仲介作業はないからです。不動産情報サイトなどで部屋を探す際、広告には「貸主」と明記してあります。仲介手数料が必要な物件には「媒介」と書いてあります。
■「フリーレント付き物件」を探す入居後の一定期間、賃料が不要な「フリーレント物件」を探す方法もあります。ただし、フリーレントの場合は、契約で入居の期間が決められていて、その期間より短いタイミングで解約した場合に違約金が発生することもあるので注意が必要です。
■引っ越し時期は閑散期の平日を狙うまた、引っ越しは、閑散期(6月~8月、12月~1月)や平日を選び、費用を軽減することもできます。複数の引っ越し会社の見積もりをとって選びましょう。家具家電はリサイクルショップやレンタルの利用で様子を見るという手があります。
■「敷金ゼロ」って本当におトクなの? 他費用も確かめて初期費用を安くする上で注意したいのは敷金。「敷金ゼロ」の物件も増えていますが、代わりに保証会社に保証料を支払う方式への加入を求められることがほとんど。保証料は、万一、あなたが家賃を払えなくなったときに一時的に立て替えて払ってもらうためのお金です。敷金は、家賃の滞納や、室内を不注意で汚したり壊したりしなければ、大部分が退去時に戻ります。しかし、保証会社に払った分は戻りません。保証料は、契約更新時に再度、必要になるので、長期に住むほどおカネがかかります。初期費用を抑えたいなら、敷金ゼロを選ぶ方法もありますが、最終的には高くなる可能性があることを知っておきましょう。
■家具・家電つきの場合は相場と見比べるまた、家具付き物件は、初期費用を抑えられる反面、周辺の同条件(築年、広さ、建物構造など)の物件相場と比較すると、高くなることもあります。長期に住むと、結果的に家具を購入したほうが安くなることも。なお、最終手段としては、礼金や仲介手数料、鍵の交換費用などは交渉次第で負担額が減ったり、ゼロになったりすることもあります。不動産会社に相談してみましょう。
高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。
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