風水の象徴? 「太極図」について
風水の象徴といえば、多くの方が、あの白と黒の火の玉が追いかけっこをしているように見える「例の図柄」を連想されるかと思います。
しかし実は、あの図柄は必ずしも風水そのものを表しているわけではありません。
というより、風水を含む中国の伝統的思想としての陰陽(いんよう)の考えを示しているものなのです。
簡単にいってしまえば、陰と陽がバランスを取りながら活動し続けている状態、つまり絶え間なく交代しながら成長、発展していく陰と陽2つのエネルギーを表しているわけです。
このシンボルは一般に「太極図」といいますが、どこで半分に切っても白と黒の割合(面積)は同じになります。
つまり究極にバランスの取れた状態を理想としているわけですね。黒が多くても、白が増えても、ダメだということなのです。
これをビジネスの現場に当てはめて考えてみましょう。
日々、われわれビジネスマンはどうしても頑張りすぎてしまいます。会社を引っ張る立場の社長さんをはじめとする経営幹部なら、なおさらそうでしょう。
俺がやらなきゃ誰がやる! というようなガッツで事業に取り組まれている方も多いと思います。その気持ちはよくわかります。
しかし風水を含めた中国の伝統的な陰陽思想は、実はそれは少し危険な状態とみます。
「物極まれば則ち返る」とは?
中国の古典『資治通鑑』には、「物極まれば則ち返る」という一節があります。
何であれ、ものごとは極限、極端に至れば、状況が反転してしまうという意味です。
多少大げさな例ですが、現代社会、現代文明の発達は、今はある意味極まった状態ではないかと思われます。
だとすると環境破壊による地球温暖化などの地球的規模の問題は、陰陽思想的にはまさに「則ち返る」を地でいっていることにならないでしょうか(ちょっと怖いですね)。
また身近な例としては、ひとつのビジネスの栄枯盛衰がわかりやすいかもしれません。
勢いに乗った事業が究極まで行き着いた途端、ガラガラと音を立てるように崩壊していったという企業の例は枚挙にいとまがありませんよね。
売れているファッションブランドなども、わたくしが思うにドカンと当たるのは平均して5年前後。
そのあたりで調子に乗って店舗数を極限まで増やしてしまうと、あっという間に飽きられてどんどん下降線を辿るようになります。
つまり極限に向かっていると感じられるときこそ、「行け行けドンドン」ではなく、多少ブレーキを踏んで抑えるという勇気が必要だということです。
そんな視点やバランス感覚を身につけることが事業を長く存続させるコツだともいえるでしょう。
例えば、京都で何百年も続く老舗は、いくら売れても決してお店を増やそうとはしません。それがいつか自らの首を絞めることをわかっているのですね。
日本の文学で言えば、平家物語の冒頭「盛者必衰の理をあらはす」でしょうか。
あのシンプルな「太極図」は、まさにそんなメッセージを、現代の私たちに伝えてくれているのです。
<著者プロフィール>
高木芳紀(たかぎよしのり)
風水オフィスアドバイザー。1971年名古屋生まれ。金沢大学卒業後、商社に就職。繊維、IT、放送関連機器の部署にて営業職を経験後、同社にいた先輩の家業であるアスクル代理店の「株式会社つばめや」に転職。新規事業企画担当兼ウェブマスターとして、主にインターネットを活用したオフィスサプライ通販の独自路線を開拓中。その中でオフィスの効果的なレイアウト手法のひとつとして風水と出会い、「風水オフィスドットコム」を立ち上げる。新たなる癒しの時代、創造の時代のキーワードとして、企業のオフィス作りを支援し続けている。自らに課したテーマは「仕事とオフィスの最適化!」