米Hewlett-Packardが中国・北京で開催した「HP World Tour」は、全世界から300人以上の報道関係者が集まったという同社のプライベートイベント。CEOのMeg Whitman氏が登壇した基調講演には、同社の顧客なども含めて2,000人以上がつめかけた。Whitman氏は、中国・北京でのイベントということもあり、「中国ではパートナーと一緒に素晴らしい成長を遂げてきた」とアピールした。
中国市場への取り組みを強化するHP
Whitman氏は、コミニュケーションやエンターテインメント、ビジネスといったさまざまな領域がITによって変化していると指摘し、「ゲームチェンジが起きている」と強調する。デバイス、インフラ、ソフトウェア、サービスといった分野で、ITがさらに「大きな未来を広げられる」として、HPでは「ITの新しいスタイルを打ちだそうとしている」という。
中国市場では、上海にR&Dセンターを設立し、特に新技術の開発などに焦点を当てて取り組みを続けている。PCやプリンタなどの開発も行っており、同社製PCの80%を中国生産しているほか、教育分野の開発も中国で実施しているなど、さまざまな活動を行っている。また、クラウド、ビッグデータ、サーバー、ストレージといった分野でも、中国での拡大を狙う。
「新しいスタイルのITの登場では、チャンスも大きいが課題もある。課題解決のためにスーパーマンであることを期待されているが、顧客がヒーローになれるようにサポートしていきたい」(Whitman氏)。HPは世界中の顧客と接し、サポートを続けていることが大きな強みであり、課題を解決するためのイノベーションを推進していくとアピールする。
Whitman氏は、「HPは変革を実現できるパートナーでありたい」として、積極的に顧客と会い、サポートしていく方針を強調。Whitman氏自身、2011年の就任以来、3回の中国訪問で225社のパートナーと会合を持つなど積極姿勢を強調する。
現在のHPは財務的にも好調で、イノベーションに対する投資を行い、製品・サービスも積極的に展開。新しいスタイルのITに対して「進化した形でソリューションを提供している」と話す。
「私たちはベストなテクノロジーのパートナーになり、皆様と一緒に未来を作っていきたい。課題があれば来て欲しい」。Whitman氏は、パートナーが安定的に、持続的に成長していくことを手助けしたい、と述べている。
DreamWorksを支えるHPのソリューション
今回のHP World Tourでは、映画制作会社の米DreamWorks Animation SKGのCEOであるJeffrey Katzenberg氏も登壇。Whitman氏とともに中国市場に対する取り組みを説明した。もともと、Whitman氏はHPのCEO就任前にDreamWorksの取締役だったこともあり、両者は近い関係にある。
DreamWorksは、映画「シュレック」の制作後に「オールCGのスタジオ環境にした」(Katzenberg氏)が、その際にHPがソリューションを提供した。データセンターの容量が拡大したにも関わらず、物理的なスペースを従来通り提供できたり、設置して2年半のネットワークスタジオが一度もダウンタイムを経験していないなど、HPの技術で映画制作がサポートされている現状を説明する。
こうしたDreamWorksの取り組みについて、Whitman氏は「テクノロジーを活用して抜本的にビジネスを変えようとした」とし、Whitman氏がいう「ITの新しいスタイル」を実現していると話す。Katzenberg氏は、「HPなしでは、いま制作中の映画は作れなかった」と両社の強い関係性をアピールする。
特に、3D映画の制作では、作業の複雑さが「2倍ではなく10倍複雑になった」(Katzenberg氏)ため、ストレージやレンダリングといったテクノロジー分野でも変革が必要だった。これにHPが応えたことで、オール3D映画が実現できた、という。
将来的に、アニメーションの世界では「スケーラブルマルチコアプロセッシングが次世代の革命になる」とKatzenberg氏。従来、アニメーション制作のレンダリングには一晩かかったが、これをリアルタイムで行えるようになるため、「アーティストが作りながら、自分の成果を確認できる」というメリットがあり、「アニメーションに新しい息吹を吹き込むことになる」とKatzenberg氏。
HPでは、こうしたエンターテインメント分野にもフォーカスしている。Whitman氏は、エンターテインメント分野の将来像についても、エンジニアとアニメーターが一緒になって問題解決を図りながら、実現を目指していく考えを示した。