資格・語学・学習ソフトの開発・販売を手がけるメディアファイブは6月28日、自社が手がけるPlayStation Vita(以下、PS Vita)専用ソフトウェア「数学力王(すうがくりきおう)」を公立中学校の授業で導入するプロモーションを実施した。
「数学力王」は、実際にさいたま市内の中学校でも導入されている学習システム「MSU(モーニング・スキルアップ)」の教材をPS Vita向けに改良したもの。全7,000問以上の数学問題の練習を通じて、いわゆる「読み書きそろばん」といった基礎学力の強化を図れるという。
授業中の教室をのぞくと、生徒全員がゲーム機に向かって真剣なまなざしを向けていた。
数学嫌いの最大要因はケアレスミス
「数学力王」の特長は、「ケアレスミスの克服」と「習熟度別のステップアップ学習」である。「数学の基礎力向上には、ケアレスミスの防止が重要」と同社の北畠謙太郎代表取締役社長。数学嫌いの最大の要因はケアレスミスだという。
そこで「数学力王」では、解答時に自分の答えに「自信あり」か「自信なし」を選択できるようにした。このデータが蓄積されていき、「自信あり」を選択し、不正解だった問題のみを出題する「ケアレスミス克服モード」で再挑戦し、ケアレスミスを防ぐことができるという。
また、正答数によってレベルが上下する「習熟度別のステップアップ学習」機能を搭載。これにより、まさに「ゲーム感覚」で楽しく集中することができ、自身の苦手分野を把握することも可能だ。
PS Vitaを使用した授業、互いに教え合う姿も
この日、同社は「数学力王」のプロモーション第1校目となる中学校を訪問。中学3年生の数学の授業で、実際にPS Vitaを生徒たちに貸与し、「数学力王」を使用した授業を行った。
冒頭、同社企画事業部の平島弘一氏が「数学版が完成しました」とソフトの概要と使い方を説明。実はこの学校では、今年2月に同社の英語版の教材を既に体験済みで、この日は2回目の使用となる。生徒たちは計算問題の画面を開くと、一様に集中した様子で問題演習に取り組んだ。
「数学力王」では、「ヒントボタン」を押せばそれぞれの解法のヒントを知ることができるが、授業では数学の補助教員が教室内を回って質問を受ける場面も。また、個々人が黙々と取り組むわけではなく、生徒同士で操作方法や問題の解き方を教え合う様子も見られ、活気のある演習授業が展開された。
中盤から校長もPS Vitaを手に「数学力王」演習に参戦。一定数問題を解くと正答率も出せるので、校長先生も数名の生徒と競いながら、「正答率100%いった!」と熱中。あっという間に授業時間は終了し、生徒からは「もう一時間やりたい」という声も上がった。
授業後に同社が実施したアンケートによると、26名中24名が「とても楽しかった」「また是非やりたい」と回答した。その自由記述欄では、操作方法への注文やヒントや解説への一層の充実を求める声も上がったが、「ゲーム機を使った授業でテンションもあがるし、夢中になれてすごく楽しい」「間違えた問題を解けるまで何度もできて良かった」「次は国語や社会・理科もやってみたい」などという反応も見受けられた。
また、ふだんゲームは全くやらないという生徒に話を聞いたところ、「新鮮だし、操作方法もさほど難しくなかった。ノートに書く計算と比べて楽しくできた」という声が聞けた。
再度まで子供たちが夢中になれる
授業終了後、同社の北畠謙太郎代表取締役社長と、協力中学校の校長にインタビューを実施。今回のプロモーション実施の経緯や理由、教育現場でゲームを取り入れることのメリットなどを聞いた。
――授業を見た率直な感想を教えてください。
校長「ふだん途中で飽きてしまう子が、最後までよく集中していたと思いました」
北畠社長「数学の学力向上のためには、子供たちが夢中になって取り組めることと、学習を習慣化することが大切だと思っています。いかに自分から進んで継続できるか、という課題を掲げていますが、今日の授業を見て、最初の関門はクリアしたかなと実感しています」
――なぜゲーム機、それもPS Vitaなのでしょうか?
北畠社長「PS Vitaを選ぶ決め手になったのは、ソフトをPS Vitaカードで提供するのでセキュリティ面がしっかりしていること。また、この世代の子どもたちが触れたがる旬のゲーム機だったからです。SNSサイトを使って学習履歴の管理ができるので、親御さんがお子さんの『どこを勉強したか』『どの分野が弱いか』を理解でき、親子のコミュニケーションにもつながります。
また、学校単位でクローズしたSNSを使えば、『今、誰が勉強している』『自分の順位がどのくらいだ』ということが分かります。周りとつながっていることがモチベーションUPになるのです」
――紙の本(ドリル)で勉強することとの違いは何でしょうか?
北畠社長「操作性が優れており、サクサクと進められるということです。メモ機能もあるので指やタッチペンで計算して答えを出すこともできますし、いつでもどこでも手軽にできるのでモチベーションを保てます」
―――最近はスマホやタブレット端末も普及していますが、それらとの違いは何でしょうか? あえてゲーム機である理由を教えてください。
北畠社長「スマホなどの携帯端末やタブレットとの違いは、画面が解像度が高くて鮮明に見えることと、『目的を持った機械である』ということです。特に小中学生のお子さんの場合、スマホなどはほかのゲームやネットなど、あらゆる余計なものに気が行ってしまいます。
また、元々パソコンゲームよりもゲーム機の市場が拡大した理由は、目的意識がはっきりしていて使いやすいということです。その点は教育分野のソフトについても同様のことが言えます」
ゲーム機が経済格差を救う?
――学校教育の場にゲーム機を導入することについてはどう考えますか?
校長「これは個別学習になるので、全ての授業をゲーム機で行うのは難しいと思いますが、家に持ち帰って子供たちが家庭学習として取り組むことは意義があると考えます。これなら30分、1時間飽きずに続くのではないでしょうか」
北畠社長「黙々と自分だけでやるのではなく、友達と話し合いながらできると良いと思います。クラス対抗でリレーのように対抗合戦をするなどいろいろと工夫をし、楽しく学ぶための道具として学校教育で活用してもらえればと思います」
校長「学校の一斉授業では、やり方を教えることがメインになります。反復練習はどうしても学校だけでなく、家庭学習の習慣がないと定着しません。そこで、土日きっちりやっている子と、そうでない子とで、経済格差がそのまま学力格差になっているという現状があります」
北畠社長「確かに毎月何万もの塾の月謝を払える家庭とそうでない家庭とで、学力格差が生じています。そこを、PS Vitaの『数学力王』で解消したい。
そのためにまずは、学校の場においてみんなでやってみて、本当に良いのか? さらに、プロフェッショナルである先生方がどう感じられるかを知りたいと思い、提案させていただきました。もちろん、先生が紙とペンで生徒に教えることが基本です。しかし、教育ソフトならではの役割もあると思います。
数学の場合はケアレスミスを防ぐということだと思いますし、理系離れが進んでいるとされる今、『数学力王』を通じてスマートにカッコよく数学の面白さに気づいてくれれば、それが日本の活性化にもつながりますし、この商品の成功だと言えると思います」
――今後の展望を教えてください
北畠社長「今後は理科社会などの科目も、一ひねり二ひねりしてリリースできればと思います。教材はあくまでこれがメインというわけではなく、先生と生徒、クラスメイトがあって、それを助けるサブです。
最近はSNSの悪い面ばかりが注目されますが、良い方向に活用していくことで、コミュニケーションが良くなると思います。家族の絆や、地域の絆、学校内での絆……。いじめをなくすといった効果も出てくるはずです。時代の流れにあった教育で、子供たちが『楽しい』と思えるものを提供し、先生方にもうまく活用してもらえればと思います」。
数学力王 初級 中1レベル
発売日:発売中
メーカー希望小売価格:4,800円(税込)
ジャンル:資格試験学習ソフト
フォーマット:PlayStation Vita
販売形態:PS Vitaカード
PlayStation(R)Network:対応
ゲームデータセーブ先:PS Vitaカード 教育・データベース
プレイヤー:1人
CEROレーティング:教育・データベース
発売元:メディアファイブ
(c)2012 Media5 Corporation