7月になり、夏山シーズン突入! 今年は富士山の世界文化遺産登録もあり、「今年こそ登山に挑戦」と意気込んでいる人もいるだろう。しかし、山岳遭難の発生件数は、2003年の1,358件から2012年には1,988件と増加傾向にある。そこで日本山岳ガイド協会では、楽しく登山をするために、事前に知っておきたいポイントを発表している。
警視庁では、「山岳遭難の多くは、知識や経験、体力の不足から発生している」と指摘しており、とりわけ初心者にその傾向が見られる。そこで同協会は、楽しい登山に欠かせないポイントとして、4つの点検と9つの危機の認識を、登山者に提唱している。
登山の前の4つの点検
身体を準備する
足の筋力が不足していると、当然山で歩けなくなる。無理せず汗がにじむ程度の運動をして、日々身体を鍛えておきたい。山で歩くペースは、平地の半分くらいがベスト。歩幅は肩幅以下、数歩以上先を見ることで足場の安全を確認しながら歩きたい。
登山をイメージする
地図を用意して、きちんと計画を立てるようにする。国土地理院発行の2万5千分の1地形図がオススメだ。登山3日前から天気予報をチェックし、登山期間も天気を把握しておく。
持ち物を確認する
山の天候は常に変わりやすく、身近な山登りでもしっかりとした装備が不可欠だ。雨具としてレインスーツ(ジャケットとパンツのセット)、地図と磁石、日が暮れても安心できるヘッドランプ(できるだけ軽量なもの)を用意したい。他にも、汗拭きシートやクレンジングシート、マイ箸、レジ袋(ゴミ袋)、スマートフォン充電器があると心強い。
また、登山では想像以上にエネルギーを消費するため、3度の食事では不十分である。歩きながら手軽に食べられるチョコレートや飴、クラッカーなどのカロリー豊富なものや、アミノ酸サプリなどの疲労回復系の補給食も携帯しておきたい。
登山届を提出する
登山届(計画書)は山での最も大切な安全対策。山岳事故の多い長野県では、入山者の1割程度しか登山届を出しておらず、遭難件数の8割以上が無届けの登山となっている。入山前・登山口で届け出を必ずしよう。また、「山と自然ネットワーク コンパス」を使えば、スマートフォンやパソコンからも提出できる。
登山の中の9つの危機
道迷い
山での遭難原因の第1位は「道迷い」で、全体の4割以上を占めている(警視庁より)。登山中、「おかしい」と感じたら、すぐに地図でルートや目印を確認しよう。
転倒、転落・滑落
急な登山道で転倒することは即、転落につながる。まずは転倒しないことを心がけて歩きたい。危険な場所では急がずゆっくり歩くこと。靴ひもの緩みも転倒につながりうるので、しっかりと締め、足が靴の中でぐらつかないようにしよう。
疲労
登山では下りが肝心。実際、遭難事故の多くが下りで起きている。目的を達成して気が緩んでいると、疲労のために身体の動きや判断は低下する。適度に休憩をとり、水分と栄養を補給しよう。
落石
疲れていると下ばかり見てしまい、上から落ちてくる石に気づかないことがある。しっかりと前・上を見て歩き、もし自分と不注意で落石させてしまったら、大声で「ラーク(落)」「落石」と下方へ叫ぶ。
落雷
音や光で早めに察知し、山小屋に逃げるのが鉄則。野外ではできるだけ低く乾燥したくぼ地に身を寄せ、尾根や岩場では姿勢を低く保ち、多人数の時は分かれて、雷雲が通り過ぎるのを待つ。
崩落
雨が降ると崩落や土砂崩れが起きやすくなる。最近はゲリラ豪雨に伴う予測的ない崩落・土砂崩れも多くなっている。天候の変化に十分注意が必要だ。
鉄砲水
台風や集中豪雨が置きやすい夏は、特に注意が必要。高山では雨はそのまま水流となって谷に集中し、一気に増水する。雨が上がっていても1~2日は危険があるので、気を抜かないようにしたい。
凍傷
日本の夏山では凍傷の恐れがないが、軽装で登って天候が急変し、風雨にさらされて低体温症になるケースも少なくない。全身を覆って保温できる衣類を携行しよう。
野生生物
登山中、特に危険な生物はスズメバチ、クマ、毒ヘビ。出会ったら慌てずにゆっくりと離れる。大声をあげたり刺激を与えたりしない。ウルシ類は触れるとかぶれてしまうので注意しよう。