さて前回は、レノボの「K900」をおもにハードウェアから見ていったが、今回は、ソフトウェアを見ていくことにしよう。
K900は、Android 4.2.1(Jelly Beans。最初に出た4.1の改良版でJELLY_BEAN_MR1と呼ばれる。なお、最新版は、4.2.2)をベースに作られているが、ホーム画面のラウンチャーを含むアプリケーションの多くがレノボのオリジナルのものに切り替わっている。
たとえば、時計や電卓といった軽いアプリでさえ、オリジナルのものに置き換わっている。多くのメーカーのカスタマイズでは、ホーム画面やアプリケーション追加に止まっていることを考えると、かなり本格的なカスタマイズといえる。また、アプリによっては、同等の別のサービス向けのものと置き換わっているものもある。
K900のホーム画面。2.3以前のものと同じでホーム画面の長押しでショートカットなどの追加モードに入る。下にショートカットやウィジェットのリストが表示され、一部は直接配置ができる。右端のWidgetsをタップすると、すべてのウィジェットのリストが表示され、そこからスタート画面に配置したいものを選択する |
ホーム画面2ページ目。ここは、Lenovo Powerのウィジェットがある |
ホーム画面には3種類のテーマが用意されている。アイコンは、丸くないアプリでも周囲を丸くクリップするなど、わりと凝った作り |
アプリ画面。名前順などユーザーが並び順を指定できる。インストール順や起動した回数、最近使った順などで並び替えが可能。標準は、レノボの配置指定+インストール順 |
さらに、K900のアンドロイドには、Googleアカウントを登録する機能自体がなく、アカウントには、何も登録しないで動作できる。代わりにレノボの「Lenovo ID」があり、いくつかのアプリは、これを利用する。なお、Exchangeサーバーを使う「Corporate」アカウントの機能は残っており、登録を行うことは可能だ。
このため、グーグルアカウントを利用する多くのアンドロイドアプリ(グーグルサービス)は、まったくインストールされていない。Playストアはなく、代わりにLenovoストアが用意されていて、原則アプリのインストールは、ここから行う。ChromeやMapsなどのアプリもみつかり、「Official」とラベルが付けられているものの、デベロッパーが「Google inc.」になっていないなど、怪しげなところがある。ただし、セキュリティチェックを行ったアプリのロゴが付けられているなど、セキュリティ的な対策は行われているようだ。いわゆる「怪しさ爆発」的なところなのだが、標準では、ここから必要なアプリをインストールするしかない。運営もLenovoなので、ここはある程度信頼するしかないだろう。
また、一部のグーグルアプリは、レノボストアからインストールが可能なのだが、Googleアカウントがないため、関連する機能が利用できない。たとえば、Chromeもインストール可能だが、ブックマークなどを同期する機能がない。
マップも、アカウントに応じてスターマークやマイプレイスを表示することができない、できないというか、設定メニューを開こうとするとアプリが落ちてしまう。Googleアカウントに依存するアプリなのにGoogleアカウントが存在しない(というか関連のソフトウェアモジュールが組み込まれていない)ためであろう。
そういうわけで、標準状態では、あきらめて、付属ソフトや限定されるもののGoogleアカウントなしでグーグル関連アプリを使うしかない。なお、レノボストアには、多数のアプリがあり、その多くは、Playストアと共通だ(というか、Playストアから持ってきている感じ)。
こういうと、なんだか、ちょっとガッカリな面と捉えられかねないが、インターネット検索によれば、rootを取得してGoogleアカウントを入れた人もいるようなので、そうそうガッカリすることもないと思う。root取得などについてはまた、別の機会にレポートしたいと思う。というか、紹介記事を書き終わらないとK900のシステムの書き換えができないので……。
また、このK900は、5月に中国で販売が開始され、6月にインドで発売された。このためか、システム系のアプリケーションも割と高い頻度で更新が行われる。たとえば、レノボストアアプリは、最初、システムの言語を英語にしていても、大半のメッセージが中国語のままだったのだが、最新のアップデートでは、かなり英語化された。さすがにインドで販売するのに中国語のままではまずいだろう。
カスタマイズされているとはいえ、単純に標準のアンドロイドアプリが置き換わっているわけでもない。たとえば、バッテリ管理のための「Lenovo Power」アプリは、現在の状態でのバッテリ寿命予測や無線LANや明るさなどのバッテリに大きく影響する設定項目の変更、アプリごとあるいは、CPU、無線LAN、Radio(モバイルネットワーク)、画面の消費電力の割合の表示、充電状態などの表示機能に加え、バッテリ関連の設定を4種類から選択してまとめて設定する「Mode」などの機能を持つ。
Lenovoのスマートフォンは当初「LePhone」と呼ばれていたが「Le」は中国語の「楽」のことらしい。もちろんLenovoの「Le」でもあるのだろう。このため、多くのオリジナルアプリは「Le~」という名称になっている。また、Lenovoストアアプリのロゴは「楽」をデザインしたもの。
たとえばカレンダーは「LeCalendar」、iOSのSiriのような音声認識検索アプリは「LeVoice」である。
SiriのようなLeVoice。中国語なので、音声の説明も表示も不明。もちろん音声入力も中国語 |
Musicアプリ。特に課金などの項目もなく、そのままオンラインの音楽を聞くことができる。ジャケット写真なども出るようなのでちゃんとした曲のようなのですが |
LePhoneのシリーズでは、矩形が4つ並んだラウンチャーを採用していたが、これは「蓮」(Lotus)を意味するものらしい。K900ではロック画面がこの形をしているほか、ホーム画面への移動のための「ホーム」キーもこの形だ。また、同様の形をした「Lotus」というウィジェットも用意されていて、4つのアプリを登録できるほか、中央部分をタップするとLenovoストアアプリが立ち上がる。ただ、サイズの割には4つしかアプリが登録できないので、ボタンが大きくて押しやすい以外のメリットは感じられない。もっともだから、ウィジェットがあるものの標準ではスタート画面に未登録なのであろう。
「蓮」や「楽」といったイメージを取り込んだ感じは、なんだか、チャイナタウンというか、映画「ブレードランナー」に出てきた都市(モデルは歌舞伎町だそうですが)という感じがしないでもない。ここまで民族性を出したカスタマイズは、ちょっと日本人にはマネできそうにもない。和風な壁紙ぐらいならあるだろうが、富士山とか浮世絵とかの日本的なものをテーマにしてアンドロイドをカスタマイズするなど、おそらく、日本では商品化自体が不可能と思われる。Lenovoのスマートフォンがどこまで中国で受け入れられているのか、中国人がみてどう思うのかはちょっとわからないが、なんとなく日本人とのメンタリティの違いを感じさせる。