「リーダーとは、『希望を配る』人のことだ」。これは18世紀のフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの残した名言の一つです。ナポレオンは、組織のトップに立つ者として欠かせない素質は、「希望」=「モチベーション(やる気)」をチームに配ることだと言っています。モチベーションは目には見えない心の動きですが、チームが最大限の能力を発揮するには必要不可欠なもの。21世紀の現代でも、組織において、モチベーションをマネジメントするスキルは重要な要素の一つだと言えます。
管理職の方・後輩がいる社会人の方を対象に、マイナビニュース会員400名にアンケートを実施しました。すると、「個人や組織でも目標を達成するために、モチベーションは必要であると思うか」という質問に89.2%の人が「はい」と回答。さらに、「職場のモチベーションは、上司の資質に左右されることが多いと思うか」と質問すると、81.2%の人が「はい」と答えました。
モチベーションという捉えどころのないものを、どのようにマネジメントし、向上させるか……、これは管理職に課せられた永遠の課題でしょう。そこで、上司としての「部下への接し方」や、部下として見た「上司の行動」について質問をし、双方の意見のギャップから、「部下のやる気を出させるのが上手い上司の特徴」を浮き彫りにしてみました。
アメとムチの加減が難しい!?
モチベーションをマネジメントできない6つの失敗パターン
部下・後輩のモチベーションを上げようとして「失敗した経験」があるか質問したところ、なんと83.0%が「ない」と回答。さらに「成功・貢献した経験」を聞くと、80.8%が「ない」と回答しました。失敗も成功も自分では確認できないため、自分の言動が部下にどう影響を与えたか「分からない」というのが実情なのかもしれません。
しかし、「失敗」を自覚する68名にエピソードを聞くと、切実なコメントがズラリ。回答をもとに、モチベーションマネジメントに失敗するパターンを7つに分類してみました。
6つの失敗パターン
【1.褒めすぎる】
「褒め過ぎたら自信を持ちすぎて『できなかったのは自分が悪いのではなくて周りが悪い』と言うようになってしまった」(自動車関連/技術職(研究開発、建設・建築・設備工事、その他))
【2.手厚くフォローしすぎる】
「仕事に専念できるように雑務をそれとなくやってあげていたら、それが当たり前になって気が利かない子になってしまった」(商社・卸/事務系専門職(法務・財務・人事・総務など))
【3.任せた仕事がデカすぎる】
「大きな事をやらせてみたら、失敗をし、さらに周りのフォローの仕方が悪く、余計に自信を無くしてしまった」(機械・精密機器/技術職(設計・エンジニア))
【4.叱りすぎる】
「注意したら落ち込みすぎて、逆に何もやらなくなってしまった」(電力・ガス・石油/技術職(研究開発、建設・建築・設備工事、その他))
【5.タイミングがワル過ぎる】
「飴と鞭のつもりでその都度褒めてから叱っていたら、叱られたことばかりが頭に残ったらしく、萎縮してしまいかえって後輩のモチベーションを下げてしまった」(小売店/販売職・サービス系)
【6.ご褒美制度は続かない】
「よくご馳走していたら、当たり前のようになっていたので止めた」(小売店/販売職・サービス系)
失敗談から、「褒める」「叱る」「飲みに誘う」など、意図的な行動が裏目にでてしまい、 「褒めて伸ばそうと思ったら図に乗った」「最初は厳しくしようとしたらすぐ辞めてしまった」「大きい仕事を任せすぎて失敗させてしまった」など、予定した筋書きとは反対の結果になってしまうこともある様子。むやみやたらに行動してもムダになってしまうようです。
大前提は「尊敬できる人」であること。 それだけでも効果アリ!?
さらに、部下にモチベーションの下がった上司の行動について具体的にたずねると、 「頭ごなしに一方的に叱る」 「成功を褒めることはなく、失敗はヒステリックに怒る」 「毎日疲れてくると頻繁に溜息をつく」 「自分のミスを人のせいにする」 「業務の遅れを叱るだけで、前向きに解決案を模索する気がない」 「指示や命令等に理不尽さや私的欲求等が含まれていると士気が下がる」 などのコメントが寄せられました。管理職としてのスキル云々でなく、人間力、コミュニケーション力において、相手を不快にさせてしまう人は、それだけで部下のやる気を萎えさせてしまうのでしょう。
実際に、「メンバーのモチベーションを上げることが上手い上司・先輩は人間的にも魅力的だと思うか」という質問に、85%の人が「そう思う」と回答。ナポレオンの「希望を配る人」という言葉からも分かるように、その人自体が前向きに仕事に取り組んでいることが大前提になっているのでしょう。
「部下にアドバイスしてもリアクションがない」「褒めているのに調子に乗るだけ」「どんなに声を掛けても信頼関係が築けない」という人は、もしかしたら、仕事に対するネガティブな姿勢や負のオーラを部下に発してしまっているのかもしれません。
“上司の仕事っぷり”が、部下のモチベーションにつながる モチベーションを引き出すのがうまい上司の特徴とは
次に、「上司の行動でモチベーションアップしたことはあるか」と質問をしてみました。すると、49.0%が「ある」と回答。具体的なエピソードを元に「モチベーションの上げ方が上手い上司」を7パターンに分析してみました。
7つの成功パターン
【1.些細なことでも褒める】
「仕事が速いね、など、簡単なことでもほめられること」(団体・公益法人・官公庁/事務系専門職(法務・財務・人事・総務など))
【2.ラストスパート時に一言かける】
「深夜の残業で上司の『もうひと踏ん張り、あと1時間!』の声で頑張る気になりました」(アパレル・繊維/事務系専門職(法務・財務・人事・総務など))
【3.陰の努力を称える】
「誰も見てないと思っていたところを、上司がちゃんと見ていてくれた」(警備・メンテナンス/事務系専門職(法務・財務・人事・総務など))
【4.実際の行動をみせる】
「上司が誰よりも遅くまで会社に残って仕事をしている姿を見て、自然とモチベーションが上がった」(小売店/販売職・サービス系)
【5.仕事人としてリスペクトされる】
「上司との絶対的な差を認識したとき。自分も早くああなりたいと思って頑張るようになった」(金属・鉄鋼・化学/営業職)
【6.ここぞという時にフォローする】
「いつもムスッとしている上司が、私が大きなミスをした際に真っ先にフォローしてくれた。嬉しくて、今度は落胆させないようにしようと気持ちを切り替えることが出来た」(医療・福祉/販売職・サービス系)
【7.「責任は取る」を実行する】
「上司から『正しいと思う仕事をしなさい。フォローは任せなさい』と言われ、実際に自分が失敗したときに責任を取ってくれたとき。もっと頑張ろうと思えた」(電機/事務系専門職(法務・財務・人事・総務など))
最も多かったのは「頑張ったところを褒めてくれるところ」という声でした。単に褒めるだけでなく、 「コツコツ真面目に取り組んでいたら高評価してくれた」 「ささいなことでも褒めてくれた」 「普段褒めない上司が褒めてくれた」 などの意見が多数。 褒めているのに全然伸びない……と四苦八苦している管理職は、もしかしたら部下が本当に褒めてほしいポイントを見逃しているのかもしれません。
アンケートでは、管理職・先輩として取った行動について「失敗談」や「成功談」そして「工夫していること」を聞きましたが、どの回答にも「声掛け」「褒める」「叱る」などの言動に関する回答が多数見られました。しかし、部下目線で聞いた「上司のどんな行動でモチベーションが上がったか」という質問には、「上司の仕事に対する姿勢」に関する意見が散見されました。部下のモチベーションには、上司がかける言葉だけでなく、上司が仕事人として尊敬できる存在なのか、ということも関係していることが分かります。
さて、管理職に就いているあなたは、「部下のやる気を引き出せる、魅力的な上司」になれているでしょうか。
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調査対象:マイナビニュース会員
調査数 :管理職の方・後輩がいる社会人の方400名
調査方法:インターネットログイン式アンケート