午前10時55分頃から株主の質問を受け付けた。質問では経営責任を問うものが多かった。
「シャープは倒産企業である」「液晶事業の失敗の責任をするべきだ」「シャープはゾンビ経営と言われている」といった声のほか、経営陣の名前を具体的に挙げて経営不振の責任を追及する厳しい質問が相次いだ。
過去の社長経験者の人事および人員削減に関する質問では、高橋副社長が回答した。シャープでは、社長経験者である辻晴雄氏の特別顧問の継続、町田勝彦相談役の特別顧問への就任、片山幹雄会長のフェロー就任、奥田隆司社長の取締役でない会長に就任することを発表している。
高橋次期社長は「会長職は取締役ではなくてはならないということはない。取締役の絶対数を削減しており、今年度から副社長は1人だけになる。関西の財界だけでなく、業界団体として支えている方々に対して、少しでも恩返しをしないといけない。奥田が会長に留まることで、財界、業界活動の多くを、私に変わって引き受けてもらう」としたほか、「町田の特別顧問就任は、社内でも議論したこと。こんなことをやっている場合かという話もある。だが、シャープは大阪の企業であり、大阪の地域社会に貢献したい。その空白をつくらない方がいいと考えた」と説明した。また、「辻、町田の部屋は、シャープにはない。社用車も報酬もない。事業の方向を決めるのは、社長および役員であり、過去の人には決断権はない」と、役員人事の正当性を訴える回答に終始した。
役員報酬のカットにも手を付けた
さらに、「希望退職を募り、残った社員には給与、賞与の削減を継続している。社員には申し訳ない。責任を感じている。5月の社長就任発表以降、社員と話す場を持ち、厳しい状況を聞いている。一刻も早く改善したい」ともコメントした。
役員報酬の返上、退職慰労金についての質問については、大西徹夫取締役専務執行役員が「役員では最高55%の報酬カット、年収では7割減の削減となっている。1人あたり平均で1,600万円の報酬となっている。その点をご理解いただきたい。退職慰労金はすでに廃止している」と回答した。
奥田社長が1年で退任する理由については、「2期連続で巨額な赤字を計上したことは、経営者として申し訳なく思う。亀山工場が受注が取れずにに苦戦し、堺工場も操業を調整さぜるを得なかった。その結果、2012年度第1四半期に通期の見通しを下方修正することになった。下期および2013年度通期には最終黒字化したいということで、構造改革に思い切って踏み出した。デジタル商品がコモディティ化するなかで事業を行い、デフレと円高で国際的な競争力を失ったこと、国内の液晶テレビ市場が前年比50%減と想定外の落ち込みとなったことなど見方が甘かった。だが、2000年からの液晶への投資は間違いではなかった。問題は、環境変化への対応が不十分であり、液晶におんぶに抱っこであったこと。早急の取り組みとして、固定費を圧縮し、損益分岐点の改善を行うことで、下期には営業利益の黒字を果たすことができた。また、中期経営計画を打ち出し、発射台を作ることができた。社長としての最低限の役割は果たせたと考えている。中期経営計画を着実に実行し、業績と信頼を回復したい」と、奥田社長が述べた。
浮いては沈む海外企業との資本提携案 - 最有力のパートナーは?
各社によるシャープへの相次ぐ出資については、高橋次期社長が回答。「クアルコム、サムスン、鴻海(ホンハイ)グループとの資本提携は、技術提携が前提である。出資は一時金のようなものである。両社が"Win-Win"になる事業を模索するのが第一である。そのほかに資本提携で、決まったものはないが、今後は、日本の企業とも話していくつもりである」と回答した。
鴻海との出資交渉については、「5月以降、郭台銘(テリー・ゴー)董事長と、東京と台湾で2回あっている。話し合いの内容は、堺工場の操業をどう確保するのかという点。シャープへの提案は来ていない。こらちからもしていない。現時点では出資交渉はしていない」と高橋次期社長が答えた。
また、液晶事業戦略については、方志教和専務執行役員が、「特定の企業(アップル)の変動により影響を受けたが、今後は複数の大手顧客とのアライアンスによって、受注の変動率を抑制し、安定を図る。大型液晶は2013年度および2014年度はフル稼働の見込みであり、中小型液晶は2013年1月~3月には落ち込んだが、スマートフォン、タブレット、ノートPC向けに、今後は高い稼働率を予定している」と回答。
有機ELおよびIGZOについては、水嶋繁光取締役副社長執行役員が、「シャープは、有機ELにはかなり前から投資しており、技術も業界の先端レベルにあると理解している。だが、課題がある。中小型では高精細化や消費電力、焼き付き残像、コストの問題がある。また、事業化するためには多額の設備投資が必要となる。大型でも大きなガラス基板で作るにはまだまだ課題がある。これらの技術課題や事業課題の克服、市場動向をしっかりと見極めた上で、参入時期や方法について検討したい」とした。また、「世界中の企業が次世代のディスプレイ技術として、IGZOに取り組んでいる。当社はそれに先駆けてIGZOの量産を開始したが、韓国、台湾のメーカーにも量産の計画があるようだ」とIGZO技術に関する自社の優位性の低下を懸念を示しつつ、「だが、当社のIGZO技術も進化しており、CAAC-IGZOを開発し、信頼性などの点で飛躍的な向上を図ることができた。今後も発展を続け、他社との差別化を行い、IGZOの普及に向けて取り組んでいく」と述べた。
「シャープはいいものを作っても売れない。洗濯機はいい製品だが、タッチパネルが使いにくい。テレビのリモコンも使いにくく、消費者の視点に立っていない」という指摘に対しては、「お客様視点の不足、行きすぎた自前主義があったと反省している。シャープの伝統が失われていることには猛省している。もう一度原点に立って、お客様や地域にフィットした製品づくりを心がけようと考えている」と、水嶋取締役副社長執行役員が回答した。
新規事業領域への取り組みについては、「新規事業推進本部を作っているが、重要なのは人材だ。シャープの文化を全部変えるという中で、人材の教育も考えている」と語った。
質問の中では、外国人株主からソーラーシステムの活用などについての提案が英語で行われ、通訳を用意していなかった同社では、議長の奥田社長が参加者に通訳するという一幕があった。また、この提案には海外経験が長い高橋次期社長が英語で回答した。
なお、第1号議案の資本金、資本準備金および利益準備金の額の減少の件、第2号議案の剰余金の処分の件、第3号議案の取締役9名選任の件は、いずれも可決された。
取締役の選任では、片山幹雄会長、奥田隆司社長など7人の退任と、みずほコーポレート銀行理事の藤本聡氏、三菱UFJキャピタルの橋本仁宏社長(いずれも6月19日付で退任)、前日本マイクロソフト執行役でシャープ初の女性役員となる伊藤ゆみ子氏の取締役就任が決議された。
株主総会は12時23分に閉会。2009年の2時間22分を1分超え、過去最長となった。