シャープは2013年6月25日午前10時より、大阪・中之島のグランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)で、第119期定時株主総会を開催。会場には1,021人の株主が参加した。

議長を務めた奥田隆司社長の開会宣言のあと、役員一同が起立し、「決算では誠に遺憾ながら、当期純損益で5,453億円の赤字という厳しい業績となり、株主の期待に応えることができず、申し訳なく思う。年間配当金についても純損失の計上、繰越利益剰余金が欠損であることから無配としている。重ねて深くお詫びを申し上げる。役員一同、2013年度は当期純利益の黒字化に向けて全力を尽くしていく」と陳謝した。この時点で、会場の株主からは経営陣を批判する声が飛び交った。なお、例年用意されていた参加株主へのお土産が今回は廃止されたこともあり、参加者数は前年の1,787人から大幅に減少した。

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経営改善策の進捗は? 9月末の転換社債の償還はどうなる?

2012度の事業報告を、約10分間の映像とナレーションで説明。1,462億円の営業赤字、5,453億円の最終赤字となったものの、下期には226億円の営業黒字を達成となったことを示したほか、IGZO液晶の量産やIGZO液晶搭載のスマートフォンやタブレット端末の発売、高変換効率のブラックソーラーの売り上げ拡大など、特徴を持ったデバイスや独自製品を創出したことを強調。米クアルコムとの次世代MEMSディスプレイに関する共同開発や、韓国サムスン電子との液晶事業分野における協業関係の強化に関連して、両社に対して、第三者割当増資を実施したことを説明した。

また、在庫の適正化、希望退職をはじめとする人件費を中心として固定費の削減などの経営改善諸施策を推進したことを示した。

だが、2013年9月30日に償還期限が訪れる第20回無担保転換社債型新株予約券付社債(転換社債)に関して、自己資金での償還が困難になる懸念があるとし、「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在している」との注記が財務諸表に盛り込まれることとなった。だが、経営改善策の着実な実行により成果がみられること、みずほコーポレート銀行および三菱東京UFJ銀行によるシンジゲートローンの継続の内諾、償還資金としての追加資金枠の設定の内諾があり、「継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められない」と説明した。

業容が拡大するなかで大企業病に陥っていた

2013年度の事業方針については、株主総会終了後、新社長に就任予定の高橋興三副社長が約20分間に渡って説明した。

その説明の冒頭で高橋次期社長は、「経営理念と経営信条を読み返した。経営理念で示している会社の発展と一人一人の幸せとの一致をはかり、株主、取引先をはじめすべての協力者との相互繁栄を期すこと。そして、経営信条の誠意、和、礼儀、創意、勇気という一言一句には、当社の創業以来の普遍の精神が込められている」と述べた。

その上で高橋氏は「業容が順調に拡大するなかで、私たちはこの精神を忘れ、奢り(おごり)、たかぶり、チャレンジ精神の低下、顧客志向の欠如といったいわゆる大企業病に陥り、これが今日の経営不振を招く一因になったといえる。私は、改めてこの原点に立ち返るとともに、経営理念、経営信条の精神以外は、すべてを変える覚悟で、全力でシャープの再生に取り組む」と続けた。

勝てる分野へのシフトや脱"自前主義"で安定成長を目指す

同社では、安定的な利益成長とキャッシュ創出を果たす「新生シャープ」の実現に向けて、2013年度を初年度とする中期経営計画を策定。中期経営計画では、2013年度を構造改革ステージと位置づける一方、2014年度および2015年度を再成長ステージとし、「勝てる市場・分野への経営資源をシフト」「自前主義からの脱却、アライアンスの積極活用」「ガバナンス体制の変革による実行力の強化」の3点を基本戦略に位置づけている。

高橋次期社長は、中期経営計画の詳細について、最終年度となる2015年度の業績目標値を示しながら、「中期経営計画の基本戦略と目指すべきゴール」「再生と成長を実現する5つの重点施策」「組織・ガバナンス改革」「持続的な成長に向けて」という4つの観点から説明。「社債市場への復帰を目指す」とした。

商品・デバイスの事業特性に応じたビジネスグループ制の導入や、小さく強い本社の実現に向けた組織改革を実行したこと、5月に設置した新規事業推進本部を通じてヘルスケア・医療、ロボティクスなどの新たな重点事業領域に取り組むことに触れたほか、6月からノートPC向けIGZO液晶の生産を開始したこと、インドネシアの新工場の前倒し稼働についても言及した。

説明の最後に高橋次期社長は、「現在直面している経営危機から脱するため、これまで我々が常識として考えていたこと、先送りしてきた諸課題など、あらゆる改革に全力をあげて取り組む。当社の強みは、徹底したお客様視点と強い技術力にある。顧客起点で技術を磨くことにこだわれば、お客様、取引先に対して、新たな価値と喜びを提供できる。これがシャープの存在価値である。中期経営計画に向けて経営陣と社員が一体となることで、再生と成長を必ず成し遂げる」とした。

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