「NEET株式会社(仮称)」説明会、約200人が会場に集結
全国のニートが集まり、全員が取締役に就任する「NEET株式会社(仮称)」というユニークなプロジェクトが進行中だ。
当サイトでも既にその動きをお伝えしているが、NPO法人の中小企業共和国が運営母体となって「日本全国のニートが集まり、全員が雇用されない事業主である取締役に就任し、既成概念や常識に縛られない自由な事業者集団を作る」というコンセプトで進められている。
6月11日、その設立に関する説明会が東京で開催された。「会社や団体に所属せず、学校や就業訓練機関にも通っていない34歳以下(厚生労働省の定義適用)の若者」というニートの条件に概ね合致する人が募集され、1,000を超えるエントリーがあったという。その中から、おおよそ200人が会場に集結、1,000人がネット中継で参加した。
『まったく新しいものをゼロから立ち上げられないか』
説明会は「NEET株式会社(仮称)」のプロデューサー若新雄純氏の挨拶で始まった。
「社会が変わっていく中で、個人と組織の働き方も大きく変わろうとしている。その変化に対して組織的に変わっていきたいという企業のお手伝いをしたり、新しい採用のあり方などを考えていくうちに『まったく新しいものをゼロから立ち上げられないか』と思い立ち、今年の1月に企画が立ち上がりました」。
約半年で、社会的にも注目される動きへと成長した「NEET株式会社(仮称)」。今後、どのような会社になるのか、7月のキックオフミーティングに向けて、その方向性をネット中継の視聴者を含め参加者とブレストしていこうというのがこの日の趣旨だった。
ここで、パネリストとして「この企画の"首謀者"(本人談)」であるNPO中小企業共和国の安田佳生氏、ゲストとして面白法人カヤックの代表取締役である柳澤大輔氏が紹介された。
安田氏は「正直言ってこんなに集まるとは思わなかった」と参加者の多さに驚いた様子。自分自身も決められた働き方が苦手という同氏は、「既存の会社や労働はイヤだけど自分がやりたいことややり方ならいくらでも働けるという人は多いと思う。それが実現できたら」と意気込みを語った。
ゲストの柳澤氏は「雲をつかむような話ですね(笑)」と若干のとまどいを見せながらも「15年前に友達と3人でカヤックを立ち上げたとき、何をするか決めていなかった。何をするかよりも、だれとするかということが大事なんじゃないかと思っていました。そういうところから何かが生まれるということは経験しているので、その経験から何かがお話しできればと思います」と語った。
『多様性を残すためにどうすればよいのか』
説明会が始まると同時に、用意されたネットの掲示板に次々とコメントや質問が寄せられた。
「NEET株式会社(仮称)」は希望者全員が取締役になることができる。今回、1,000を超えるエントリーがあったわけだが、「1,000人全員が取締役就任を希望したらどうなるのか?」という質問に、安田氏が答えた。「就任できます。いきなりギネスブック級の会社になりますね(笑)」。
とはいえ、1,000人がそれぞれの意見をもって会社を設立するのは容易なことではないだろう。そのハンドリングについても、ネットから意見が寄せられた。
「ニート株式会社はホールディングスとして、やりたいことに応じて子会社をぶらさげるのはどうか? というご意見をいただきました。これはいいですね」と若新氏。「集まった人たちの意志を統一してしまうのでは『既存の会社』と変わらない。多様性を残すためにどうすればよいのか、最初の段階で考えておく必要がありそうですね」と語った。
組織論とは別に、事業内容をどういったものにするかということについても議論が交わされた。これについて安田氏は「利益を上げるのが先か、自分のやりたいことをやるのが先か。ビジネスとアートの関係にも似ていますが、私は自分のやりたいことを突き詰めていき、求めてくれる人に買ってもらうのがよいと思う。その方が結果的にビジネスとしても大きくなるのではないか」という意見を述べた。
在職していた当時のノウハウ提供の話も--会場は熱気を帯びていった
会も中盤に入ると、会場内の参加者からも手が挙がり、意見が述べられた。まずある男性が「私は某アパレルを病気で退職し生活保護で暮らしています。ただ、当時のノウハウはあります。私がそれを提供しますので、みんなで助け合ってやりたいです」と具体的に提案。
この提案には若新氏も「自分1人ではできないけど、何人かいればできるということはありそうですね」と応じ、「申し込み用のフォームには『できること/できないこと』『やりたいこと/やりたくないこと』という項目を入れております」と語った。
1人手が挙がると徐々に会場内も熱気を帯びてきて次々に質問や意見が述べられるようになってきた。
中には「空気を読まずに自分のできることを披露していいですか?」と、自らが描いた絵を披露する女性も。
これには柳澤氏も「この何でもあり感。度量のでっかい感じがいいですね(笑)」と感心していた。実際、氏は講演にもよく招かれるそうだが、ここまで参加者が積極的にコミットすることは珍しいそうだ。
「収益の分配」や「評価基準」についても議論
そのほか「収益の分配」や「評価基準」についても意見が交わされた。
かつて人事のプロであったという安田氏が「万人が納得する評価制度は不可能」とその難しさを語る中、参加者の男性から「複数の評価項目の中に、自分から自分の好きな項目を1つ作って良いとするのはどうでしょうか。そうすれば自分の得意な部分がアピールできる」という意見も。
「なるほど。みんなが自分で自分を評価して、その評価額が利益を超えるか超えないか」と安田氏が膝を打てば、若新氏も「意外と利益の枠内に収まったりして。それはそれでよさそうですね。ぜひ実験してみたい」と手応えを感じているようであった。
「NEET株式会社(仮称)」の"(仮称)"が取れた後はどうなる?
かくして、2時間近くにおよぶ議論が展開され、おぼろげながらプロジェクトの骨格が見えてきた。しかし本番はこれからだ。
この説明会を受けて正式な申し込みを行った者が集結し、7月上旬にキックオフミーティングが開催される。正式な申し込みの受付は終了し、最終的に476人の人がエントリーした。「この中から会社設立時に希望される方は全員取締役に、と考えています」(若新氏)。そこから2カ月をかけて事業内容やビジネスモデル、組織形態やオフィスのあり方などが本格的に議論され、9月の設立へと至る予定だ。
果たして「NEET株式会社(仮称)」の"(仮称)"が取れた暁にはどんな社名になるのか? そして、どんな事業が展開されるのか? ゲストの柳澤氏が最後に述べた「先がまったく見えないけど、ワクワク感があって面白い」という言葉がぴったりの雰囲気でこの日の説明会は幕を閉じたたのだった。