国税庁は20日、全国の国税局が行った2012年度の強制調査(査察調査)の結果を発表した。それによると、2012年度の脱税事件は前年度比2件増の191件、脱税総額は同12億5,800万円増の204億7,900万円となった。脱税総額が増加するのは5年ぶり。
2012年度中に着手した査察は前年度比5件減の190件。脱税事件のうち、検察庁に告発した悪質なケースは前年度比12件増の129件で、告発率は同5.6ポイント増の67.5%、告発分の脱税額は同17億8,000万円増の174億6,600万円となった。告発した1事案当たりの脱税額は平均1億3,500万円。告発した事案のうち、脱税額は3億円以上のものは11件、うち5億円以上のものは3件だった。
告発件数を税目別に見ると、最も多かったのは法人税で79件。以下、所得税が22件、消費税が12件、相続税が10件、原生所得税が6件と続いた。業種別では、「情報提供サービス」と「クラブ・バー」が同数の11件で最多。次いで、「建設業」が7件、「不動産業」と「医療業」が同数の4件となった。なお、1位の「情報提供サービス」のうち10件が「出会い系サイト」業者だった。
告発の多かった業種における脱税の手段・方法としては、「情報提供サービス」や「建設業」では架空原価・経費の計上、「クラブ・バー」では売上除外が多かった。このほか、相続税事案では、相続開始前に被相続人名義の預金から出金した現金を自宅に隠していたケースや、金地金を自宅床下に隠していたケース、税理士と共謀の上架空の債務を計上して相続財産を圧縮していたケースなどがあった。
国際事案では、売上を英領ヴァージン諸島に設立した法人の取引に仮装し、同法人名義の海外の預金口座に振り込ませて除外していたケースや、中国の取引先に水増しした経費を送金し、水増し分をバックさせて国外預金で留保していたケースなどを確認。また、複数の納税者に脱税を持ち掛けて成功報酬を得ていた"脱税請負人"関与事案では、給与所得者等に架空の事業損失を計上して所得を少なくする方法を指南して還付申告を行わせていた。
海外に不正資金を隠していたケースは10件。マレーシアやシンガポールに預金口座を設けたり、米国の投資証券や韓国の投資信託、ハワイの不動産を購入したりしていた。
脱税によって得た不正資金の隠し場所としては、自宅リビングのクッション内のビニール袋、知人宅居室の段ボール内の木箱、物置の蚊取り線香の缶などに現金を隠していたケースなどがあった。