北九州市は19日、同市が国内特許を所有する高度浄水処理設備「上向流式生物接触ろ過設備」(以下、U-BCF:Upward flow Bio Contact Filtration)をベトナム・ハイフォン市の浄水場に整備すると発表した。

U-BCFは、微生物による自然浄化作用を利用し、カビ臭物質などの異臭味や黒水の原因となるマンガン、アンモニア性窒素などを除去して、安全で良質な水を作る設備。ろ過槽内に充填した粒上活性炭に原水を下から上に通水(上向流)して、粒上活性炭を流動させることで、粒上活性炭に生息する微生物が汚濁物質を取り込み分解する仕組みだ。

U-BCFは、原水中の有機物を3~4割分解するとともに、多量に塩素を消費するアンモニア性窒素や溶存マンガンを6~9割除去することで、塩素の注入量を削減することが可能。これらの効果により、発がん性が疑われているクロロホルムなどのトリハロメタンを大幅に減らすことができるという。

「上向流式生物接触ろ過設備」(U-BCF)概要

北九州市とハイフォン市は、両市の発展に向けた交流、都市開発および環境保全の調和を目指す技術協力の推進を目的とし、2009年4月に協定を締結。以降、北九州市は、ハイフォン市水道公社からの要請を受け、ハイフォン市が抱える水道原水問題の解決に向けて技術的支援を実施してきた。このような技術協力により、ハイフォン市においても安価なランニングコストと高い処理能力を備えるU-BCFが認められ、導入に至ったとしている。

今回の事業において北九州市は、ハイフォン市水道公社が独自資金によりU-BCFの整備工事を発注するKOBELCO Eco-solutions Vietnam(神鋼環境ソリューションベトナム現地法人)から、工事施工計画に係る技術的な精査など技術アドバイサーとしての業務を受託、同事業を側面から支援する。導入施設はビンバオ浄水場(処理能力5,000立方メートル/日)、工事予算は87億ベトナムドン(日本円4,002万円)。

なお、神鋼環境ソリューションは、海外水ビジネスの推進を図るため、北九州市が2010年8月に設立した同市海外水ビジネス推進協議会会員企業となっている。

また、北九州市水道局とハイフォン市水道公社は2013年5月30日、水質汚染問題を抱えるベトナム国内の他の水道事業体に、U-BCFを普及させていくための相互協力協定を締結。北九州市は今後も、これまで培ってきた技術とノウハウを活用し、協議会と連携しながら水ビジネスに取り組んでいくとしている。