長らく続いていた、Sprint買収を巡るソフトバンクと米Dish Networkの争奪合戦だが、その争いの主戦場はすでに事実上のSprint子会社である米Clearwireへと移っている。ソフトバンクからの買収価格増額を受けてほぼ取引の確定したSprintだが、一方で同社争奪で敗れた形のDishはその最終ターゲットをClearwire買収に絞り、買収価格引き上げ攻勢でSprintとソフトバンク連合にプレッシャーをかけている。

同件はWall Strett Journalが報じている。それによれば、Clearwireの役員会は同社株主らに対してDishによる1株あたり4.40ドルの買収提案を受け入れるよう通知を出しており、Sprintらによる買収提案をはね除けようとしている。Sprintによる買収提案を受け入れるかどうかの株主らによる投票はもともと今週木曜日(13日)に予定されていたが、3度にわたる延期の末、現在は6月24日に予定されている。

過去の和解経緯から、現在Clearwireの半数以上の株式はSprintが握っており、残り株式を既存株主から買い進めることで完全子会社化を目指していた。ところが携帯電話事業進出を目指す衛星放送会社のDishはClearwire買収による事業進出を目指しており、少なくともSprintが所持していないClearwireの残り株式を買い進め、半数以下の株式を多く握る第2株主の地位を狙っているとみられる。これにより、完全子会社化によるClearwireの完全制御を目指すSprintの目論見は厳しくなり、これまで通り経営上の大きな阻害要因となることが見込まれる。

もともと、完全子会社化を目指すSprintはClearwire株式を1株あたり2.97ドルで買収すると昨年2012年12月に合意していたが、Dishは翌2013年1月に1株あたり3.30ドルとより高い買収金額を提示し、Sprintもまたそれに応じる形で今年5月に3.40ドルの買収価格へと引き上げている。だが今回、Dishが4.40ドルの買収価格を再提示したことで、Clearwire役員会はDishの提案を支持し、Sprint側の提案に乗らないよう株主らに意見を提示したとみられる。おそらくは、Sprint側の買収価格引き上げ提案を引き出すのが最大の狙いだが、一方で少なくともDish側の提案を受け入れることで高株価が維持できるとの狙いもあるとみられる。

SprintならびにClearwireは現在資金難にあえいでおり、ソフトバンクによるSprint買収は同社への支援的意味合いも含まれている。この状況はClearwireのほうが厳しく、もしSprintもしくはDishの提案が合意しなかった場合、即座に連邦破産法の申請が必要になることを示唆している。Clearwireの持つ周波数資産はTD-LTEによる次世代のブロードバンドネットワークを構築する礎となる一方で、そのための設備投資負担が同社を苦しめており、外部による資金投入が必須となっているからだ。