日本貿易振興機構(JETRO)北京事務所は11日、「中国高齢者産業調査報告書」を公表した。それによると、中国の高齢者人口は年間860万人のペースで増加しており、2050年までに4億5,000万人に達する見込みだという。

中国政府は高齢者の定義について、「花甲」(還暦)という伝統的な考え方や定年退職年齢(男性60歳)などの実情に基づき、60歳以上を基準としている。また、WHOや国連の定義を参照し、60歳以上の人口が全体の10%、65歳以上が7%を超えた場合を高齢化社会と解釈している。

中国国家統計局が2013年1月に発表した最新人口統計データによると、2012年末時点における中国大陸部(香港・マカオ・台湾など除く)の人口は13億5,404万人。このうち、60歳以上の高齢者人口は全体の14.3%に相当する1億9,390万人で、男女の比率は、男性が49%、女性が51%となっている。

中国では現在、高齢者人口が年間860万人ずつ増えているといい、政府関係者は、高齢者人口が2050年までに総人口の約3分の1の4億5,000万人に達すると予測している。また、80歳以上の高齢者と要介護高齢者は年間100万人のペースで増加しており、2050年には80歳以上の人口が1億人を突破し、超高齢化社会を迎えると見られている。

中国高齢者人口数予測(全老工作委員会弁公室)(出典:日本貿易振興機構Webサイト)

国連の予測によると、1990年~2020年の世界の高齢化速度は平均2.5%となっているのに対し、同時期の中国では3.3%に上る。また、総人口における高齢者の割合は、世界平均では1995年の6.6%から2020年には9.3%に上昇する一方、中国では6.1%から11.5%とほぼ2倍に増加すると予想している。

調査では、高齢化が進んでいる要因として、「1人っ子政策」による出生率の低下、経済成長に伴う環境や医療の改善などを挙げている。特に、「1人っ子政策」のような人口調整を続けることで高齢化が加速し、豊かになる前に高齢化する「未富先老」現象が日々顕著になっていると指摘している。また、先進国では1人当たりGDPが1万ドルを超えてから高齢化社会に入ったが、中国では1人当たりGDPが5,416米ドル(2011年、名目)と低く、高齢化問題が経済や社会に大きな負担と圧力をもたらしていると分析している。

併せて、都市部と農村部の格差についても言及。農村の若年労働者が都市に大量流入した結果、農村の高齢化スピードは都市より速くなり、深刻な高齢化問題に直面しているという。

高齢者の就職状況について見ると、高齢化が進む一方で平均定年退職年齢が低く、都市部の高齢者の7割以上が退職・離職し、在職率は0.5%にとどまっていた。高齢者の21.3%が正規の就業歴がなく、このうち、就業歴がない女性は61.5%に上り、男性を23ポイント上回った。