モバイルデジタルオーディオプレイヤーの普及と共に、外出先や移動中などでも手軽に高音質で音楽を楽しみたいというリスナーが増加している。「サウンドクリエイターお薦めシリーズ」として、これまでにインイヤータイプのイヤホンやポータブルヘッドホンアンプなどを紹介してきた。今回は装着感や遮音性も優れたオーバーヘッドタイプのヘッドホンを中心に、実売3万円台前後で購入できる製品をピックアップし、紹介していこう。

AKG/K702(実売:3万1,300円)

同社独自のテクノロジーにより極めてクリアな高域と迫力のある低域を実現し、原音を忠実かつ繊細に再現。オープンエアー型ヘッドホンならではのバランス感と抜けの良いサウンドが、多くのユーザーから支持されているAKGブランドのフラグシップ・モデルだ。人間工学に基づいて立体的にデザインされた「3Dフォーム・イヤーパッド」(ベロア素材)は、耳にも優しく、長時間の使用でも安定感があり快適だ。装着するだけでヘッドバンドの長さが調整できるセルフアジャスト機能を採用している。さらに、取り外しができ、簡単に交換可能な付属の高純度OFCケーブル(3mケーブル)を、サードパーティ製のケーブルなどに交換すれば、自分好みのサウンドにヘッドホンをカスタマイズできるのも興味深い。

DENON/AH-D600EM(実売:3万6,178円)

デノン社の提唱する高音質を追求したハイエンドスタイル"ミュージックマニアック"にカテゴライズされた、デザイン・スタイル・利便性・音質のすべてを兼ね備えたヘッドホン。高性能ドライバーとナノファイバー振動板により、音楽のジャンルを問わず、高域から低域まで優れた音楽特性を発揮する。特徴的な5角形イヤーパッド&イヤーカップは、どのような頭にも常にフィットし、低反発素材の採用により長時間のリスニングでも疲れにくい。iPod/iPhone/iPad専用コントローラーとマイクを装備したOFCケーブル(1.3m)と、室内向けのOFCケーブル(3.5m)の2タイプが付属する。同社が提供する無料音楽再生アプリ「Denon Audio」も合わせてぜひ活用したい。

beats by dr.dre/Beats Studio(実売:2万9,800円)

伝説的音楽プロデューサー&HIP HOPアーティストであるDr.Dreと、有名な工業デザイナーRobert Brunnerによるコラボレーションで開発されたヘッドフォン。特に重低音から低音にかけての再生能力に優れおり、ダンスミュージックやクラブミュージックファンには堪らないサウンドとなっている。独自のノイズキャンセリング機能「パワードアイソレーション」(要単四乾電池2本)を搭載し、野外でもリッチなサウンドが楽しめる。iPhoneにも完全対応したMonster Cable製「iSoniTalk」ヘッドフォンケーブルが付属する。本体は小さく折り畳んで携帯用ハードケースへ収納し、手軽に持ち運ぶことができる。なお、大音量での再生時には、音漏れには注意が必要だ。

SENNHEISER HD650(実売:4万632円)

オープンエア型ダイナミックヘッドホンとして好評を博した前モデルHD 600をベースに開発された「HD 650」は、使用材料などを改善することにより再生音質と精度をさらにグレードアップ。オープンエア型ならではの繊細にしてダイナミックなサウンドを再現を可能としている。色付けのない原音に忠実な再生音は、幅広いジャンルでオールマイティーに活躍してくれる。また、クッション性に優れたイヤーパッドは長時間の装着でも疲れることがなく、外出時のみならず自室での快適なリスニング環境を実現可能。着脱式のケーブルは、断線時に簡単に交換できるだけでなく、サードパーティ製の高音質ケーブルとの付け替えも手軽に行える。収納に最適なハードケースが付属する。

SONY MDR-1RBT(実売:2万6,499円)

多くのファンを持つソニーの密閉ダイナミック型ヘッドホン。通常タイプ加えて、Bluetooth対応ワイヤレスヘッドセットタイプや、デジタルノイズキャンセリングタイプなどが用意されている。実売価格約3万円前後となっている「MDR-1RBT」では、Bluetooth対応のワイヤレスヘッドホンでありながら、40mmの広帯域HDドライバーユニットやフルデジタルアンプ「S-Master」が生み出す広がりのある自然な音質を実現。ケーブルのタッチノイズなどのストレスからも解放されるため、通勤や通学といったモバイル用途にも最適だ。また、NFCを搭載し、スマートフォンとのペアリングや接続がワンタッチで行えるのも便利。さらに、付属のヘッドホンケーブルを本体に接続することで、「MDR-1R」同等のハイクオリティーな音質も再現できる。

今回紹介した製品だけでなく、実売価格にして3万円前後の定番ヘッドホンともなれば、ある程度の高いサウンドクオリティーはほぼ保証されており、どちらかといえば個人的なサウンドの好みや装着感の微妙な差異といったことが、判断の基準になってくるだろう。また、ワイヤレスやノイズキャンセリング、デザイン性などといった使用用途に特化された付加機能も大いに期待することができるはず。これまで、ワイヤレスやノイズキャンセリングといった機能にあまり良いイメージないユーザーも、ぜひ多機能ヘッドホンにチャレンジしてみてはいかがだろうか。

内山 秀樹(uchy)/ウチヤマ ヒデキ
ライター/サウンドクリエイター/ITコンサルタント

10代の頃より、楽器メーカーの製品開発やインストラクションなどに参加。既存の製品にも多くのコンテンツなどを提供する。現在はフリーランスとして、PC誌/音楽誌への執筆活動をはじめ、作曲、編曲、WEBプロデュース、ITコンサルティング、ゲームサウンド製作、学校講師など多岐にわたる幅広い活動を展開中。