「うどん県」として知られる香川県。その生産量はもちろん全国1位で、小麦粉使用量はゆでうどんは3万9,192トン、生うどんは9,248トン、乾燥うどんは1万2,210トン、全体の生産量は何と年に6万0,650トンにも及ぶ!(総合食料局消費流通課米麦加工食品生産動態統計調査年報(平成18年度)より)。
廃棄うどんの処理に年2,000万円かかる企業も
これだけの量を生産していると、麺の製造工程で製品には適さなかったり、機械の不具合で落下したり、時間がたってコシがなくなったりなど、様々な理由で破棄されるうどんの量が出てくる。ある企業では年間1,500トン、その焼却費は年間2,000万円にも及ぶといい、その処理方法が長年検討されてきた。
これまではブタの飼料などに利用
従来、廃棄されるうどんの一部は、ブタの飼料などに利用されたりもしてきたという。香川県産業技術センター発酵食品研究所主任研究員の松原保仁さんは、「食べ物ですから、できるだけ無駄にしないようにと考えて、ブタのエサとして利用していました」と説明する。
こうすることで、確かにうどん廃棄物の有効活用ができているが、この状態がこれから先も続けられるという保証はない。「ブタに限らず動物を飼育していると臭いなどの問題が出てくるため、養豚業者の方が飼育を止めてしまうことがあるからです」と松原さんは言う。
これから先のことも含めて循環サイクルの中に組み入れ、うどんをリサイクルさせることで解決しようと、産業機械メーカー・ちよだ製作所と産総研四国センター、香川県産業技術センター食品研究所とが共同研究を実施。そこで生み出されたのが、廃棄うどんからバイオエタノールやメタンガスを生み出して再利用する方法だ。
資源を循環させる試み
もともとうどんは糖分が多いことから、効率よくエタノールが取れることは分かっていた。そうしたこともあり、香川県では廃棄するうどんからエタノールを精製する技術に加えて、うどんのゆで汁を浄化することで夏の渇水対策に利用する技術などを実用化レベルにまで完成させた。
「ただ、うどん全体から見ると糖分の量は微量で、その他の成分の方が圧倒的に多かったのが問題でした」と松原さん。そこで、更に研究が重ねられ、残りの部分をメタン発酵させてガスを生み出し、それを利用して発電するというシステムも生み出した。「CO2の排出量も減らせます」(松原さん)。
将来的には各店舗で再生エネルギー利用も
システムでは、廃棄うどんからバイオエタノールやメタンガスを生成し、その後に残った残渣(ざんさ)は液肥として生成してろ過する。「メタンガスは化石燃料代替として利用する他、生成されたバイオエタノールは、うどん製造で使われるボイラーなどの燃料として使うことを検討しています」と松原さんは言う。
さらに、ろ過済みの液肥も、関係機関と協力して商品とする予定だという。「将来的には全てのうどん店で資源循環システムを導入していただければと考えています」と松原さんは話す。もともと廃棄されるうどんさえも、うまく“料理”するアイディアは、まさに「うどん県」にふさわしいものと言えるだろう。