スタイリッシュな作品でアニメ・漫画などのカルチャーシーンに新風を吹かせているクリエイター集団「NC帝國」。ペーパートイ「グラフィグ」の原型を作り、いとうのいぢらプロ作家とともにCDアルバムのジャケットを飾るイラストを描くなど、ここ数年で一気に注目度が高まっているグループだ。同グループの一員であり、美麗なイラストの数々を発表しているイータ(η)氏の創作活動には、ペンタブレット「Intuos」シリーズが欠かせないという。今回は、そんな同氏にペンタブレットを使ったデジタル作画への思いや、そのこだわりを聞いた。
――まず最初に、クリエイター集団「NC帝國」の結成の経緯や、これまで手がけられてきた作品についてお聞かせください。
「NC帝國」は、大学でデザインを学んでいる仲間と立ち上げたグループです。その当時はイラストやグラフィックを含めたデザインを横断的に行っている同人誌をあまり見かけなかったので、メンバーの力を合わせて「グラフィコ」という定期刊行のイラスト・グラフィック集の同人誌を作り始めました。それ以来、ありがたいことに僕たちの同人誌を見ていただいた方からお仕事の依頼をいただくことが多いですね。
商業関係のお仕事では、コスパから展開されているペーパートイ「グラフィグ」を始め、小学館の漫画サイト「裏サンデー」ロゴデザイン、CD「J-アニソン神曲祭り~レジェンド~[DJ和in No.1 不滅 MIX]」限定版イラスト、アニメ版「ロボティクスノーツ」OP「純情スペクトラ」限定版のジャケットデザインなど、アニメや漫画関連のものがほとんどです。他にも装丁やTV番組のグラフィックなど、色々と挑戦してきました。
――いつ頃からペンタブレットをお使いなのでしょうか。
大学2年生のころからです。最初に買ったペンタブレットは「Intuos3」のワイド型のSmallサイズでした。PCでイラストを描くこと自体は中学生の時に始めていたんですが、当時流行していた「お絵かき掲示板」にマウスで描いた絵を投稿するくらいで、ペンタブレットを導入するのはまったくの初めてでした。
大学ではデザイン関連の学科を選択したので、授業に必要なものとして「Adobe Creative Suite」を学科の全員が購入することになっていたんです。イラストの描画にもよく使用されている「Photoshop」の、しかも当時最新のバージョンが手に入ったことで、デジタルでも絵を描いてみたいという思いが強まったのも「Intuos」の購入動機として大きいですね。今でも、Photoshopをメインにイラスト制作をしています。
――本体のサイズが3種類あるなかで、イータさんはラージサイズをお使いですが、これにはどんな理由があるのでしょうか?
最初に買った「Intuos3」のサイズをSmallにしたのは、当時所有していたノートパソコンの画面に合わせたかったからなんです。ところが、デジタル描画になれてくるうちに大きな絵も描きたくなってきて、制作中に絵の全体を見ながら作業をしたくて、大きなモニターを買いました。
最初は、大きなモニターと元々持っていた「Intuos3」のSmallサイズを組み合わせていたのですが、画面のスケール感と描画のストロークがあわない感じがしてしまって。それで、モニターの大きさにあわせてLargeサイズを買って、メインで使うようになりました。
――「Intuos5」には標準のポリアセタール芯のほか、ハードフェルト芯、エラストマー芯、ストローク芯といった計4種が付属していますが、日頃どれを使って作業されていますか?
イータ氏が線画からデジタルで制作した、ハードスタイルコンピレーションアルバム「Massive CircleZ 2」のジャケットイラスト。デザインもNC帝國が手がけた |
同じくイータ氏がイラストを、NC帝國がデザインを手がけたインディーズアルバム「Operation Unrestrected -overture-」 |
ちょうど今使っているのはストローク芯なんですけど、実は一番好みなのはエラストマー芯なんです。
基本的に線画はアナログで描いて、スキャンデータにデジタルで色を塗るという方法を取っていたんですが、最近は線画も「Intuos5」で描くことも多くなりました。
線画をデジタルで描くにあたり、はじめは"アナログと同じ描き心地"を目指して、ペン軸の重さなども含め自分に合う物を探していました。しかし、画面を見ながら手元を見ずに動かすとなると、どうも(アナログと)一緒の方向性では合わないと感じて。いろいろ試した結果、摩擦が大きくなるほうが線がぶれなくて、手の震えも抑えられるのでいいと気づき、一番摩擦の大きくなるエラストマー芯を愛用しています。
――ペン軸も含めご自身の使いやすい物を探しているとのことですが、今使っているペンの種類は何でしょうか?
ペンは3本持っていて、オプション品で売られているクラシックペンをメインに使っています。普段アナログ作画に使っているシャープペンが製図用の細い物なので、持った感じが似ていて落ち着きます。あと、最初はペン軸を重くしてみたりもしたのですが、ペン軸が軽いほうがかえって線が安定することに気づいて一番軽いクラシックペンに変えました。今は、クラシックペンにエラストマー芯という組み合わせをメインに、ストローク芯と通常ペンという組み合わせを試しているところです。
――作業を行うにあたって、ペンだけでなくキー操作も行っているかと思いますが、ファンクションキーやタッチホイール、サイドスイッチなどにはどんな操作を割り当てていますか?
自宅ではLargeサイズを使っているのですが、Inutos5のSmallサイズもサブ機として所有しており、そちらでファンクションキーを活用しています。割り当てているのはブラシやスポイト、消しゴム、アンドゥ、リドゥなど基本的な操作ですね。外での打ち合わせの時にノートパソコンと一緒に持って行って、待ち時間に作業を進めるのに重宝しています。「Intuos5」になってからのファンクションキーは個人的に押し心地がとても気に入っています。
――「Intuos5」からワイヤレスでの利用やタッチ操作も可能となりましたが、以前のものと比べて使用感はどのように変わりましたか?
「Intuos5」のタッチ機能はとてもいいですね。これまでに使っていた「Intuos3」も、ペンタブレットとしての機能には満足していたのですが、カンバスの操作などが直感的に出来るので作業がぐっと快適になりました。
――最後に、イータさんにとって「Intuos」とはどんな存在ですか?
イラストを描くということに対して、背中を押してくれた存在です。
僕の場合、今描いているようなイラストに関しては、大学に入学してから本格的に始めたんです。ほぼアナログ作画しか知らなかった僕に、「これならデジタル環境で良い物を描けるな」と思わせてくれる「Intuos」に出会ったからこそ、今もイラストを描き続けられているんだと思います。
撮影:永島麻実