Windows 8.1にまつわる情報も少しずつ漏れ聞こえるようになった昨今、もっとも興味深いのはスタートボタンの復活だろう。Microsoft本社が米国のニュースサイトでは、社内向けビルドであるWindows 8.1マイルストーンプレビューを基にスタートボタンが搭載されたデスクトップ画面を披露。今週はこのマイルストーンプレビューに関する情報と、「Xbox Wire」に掲載された新型Kinectに関する情報をお送りする。
スタートボタン復活の信憑性が高まったWindows 8.1
Windows 8で廃止されたスタートボタンの存在は、Microsoftの想像を超える反響を呼び、Windows 7からのアップグレードユーザーに二の足を踏ませていた。既にWindows 8を導入したユーザーの中には、同ボタンを復活させるオンラインソフト「Classic Shell」を導入し、Windows 7ライクな使用環境を復活させるユーザーもいれば、同ボタンがない環境を踏まえ、新しいUI(ユーザーインターフェース)で使い続けるユーザーもいるだろう。
そもそもスタートボタンを開くと現れるスタートメニューは、インストール済みアプリケーションの起動だけでなく、各ストレージを参照する「(マイ)コンピューター」や、Windows OSの各種設定を行う「コントロールパネル」などが並んでいた。Windows OSの操作に不慣れなユーザーは、スタートボタンをクリックすることで、次のアクションを目視しつつ選択することが可能。現在では当たり前になったキーボードの[Win]キーも当初は用意されておらず、Microsoftは同キーの搭載を推し進めていた経緯がある。
Windows 8のモダンUI搭載によって、"スタートボタンは不要"と一度は判断した同社だが、Windows担当者がSteven Sinofsky(スティーブン・シノフスキー:現在は退社)氏から、Julie Larson-Green(ジュリー・ラーソン-グリーン)氏およびTami Reller(タミ・レラー)氏に変わったことで、Windows 8の次期バージョンにあたるWindows 8.1にスタートボタンが復活するとの噂がまことしやかにささやかれていた。
この情報を最初に報じたのは、ZDNetの「All About Microsoft」執筆陣の一人であるMary Jo Foley(メアリー・ジョー・フォーリー)氏。Windows 8.1がWindows Blueと呼ばれていた時期から、新機能に関する情報を発信し、その一つとしてスタートボタンの復活を報じていた。そして、5月29日に公開された「Here's how the new Windows Blue Start Button may work」でその存在を明らかにしている。
より具体的にスタートボタンの存在を報じたのが、Microsoftウォッチャーとして海外では有名なPaul Thurrott(ポール・サロット)氏の個人サイト「SuperSite for Windows」だ。同氏は「Windows Secrets」シリーズなど数多くの著書を持つ、有名なITジャーナリストの一人である。現在Microsoftは社内向けにWindows 8.1 Milestone Preview(マイルストーンプレビュー)を配布しており、同ビルドを入手したThurrott氏は自身の記事でスクリーンショットを掲載。スタートボタンを筆頭にWindows 8.1の変更機能を紹介した(図01)。
記事では5月29日に公開した「Coming in Blue: Boot to Desktop, Start Button, and More!」を先に読むことを薦めながら、同ビルドで発見した各機能を紹介。二つの記事を要約すると、「マイルストーンプレビューは5月15日頃にビルドされた社内向けである」「デスクトップを直接起動するオプションを追加」「スタート画面の背景画像を指定する機能を標準搭載」などに加え、「スタートボタンはデスクトップのタスクバーに用意される」と述べている。
具体的にはモダンUI上でスタートボタンは現れず、画面左下隅をマウスオーバーするとサムネイルが現れる仕組みは現行どおり。デスクトップに切り替えると、従来の場所にスタートボタンが用意されているが、スタートメニューが現れる訳ではなく、スタート画面のアプリケーション一覧が現れるという。Windows 8.1の「すべてのアプリ」は、ソート機能などを備えるようになるため、十分代用可能だが、Windows 7ライクな操作を求めるユーザーは満たされない可能性がある。なお、同ボタンを無効にするオプションはマイルストーンプレビューで確認できなかったが、今後搭載されるだろうと同記事では述べられていた。
そして、前述した各記事公開の翌日となる5月30日には、Windowsプログラム管理担当コーポレート副社長であるAntoine Leblond(アントワーヌ・ルブロン)氏が「Blogging Windows」の記事でスタートボタンの存在を公式に認めることとなった。こちらの記事でも前述した内容を裏付けており、スタートボタンは復活するものの「表示されるのはアプリビューである」とLeblond氏は述べている(図02~03)。
同記事ではスナップビューの改良を紹介。従来は2種類のWindowsストアアプリを画面の5分の4および5分の1で分割していたが、Windows 8.1ではこの割合を自由に変更可能になる。また、一つの画面に表示できるWindowsストアアプリ数も三つに拡大。また、マルチディスプレイ環境でのWindowsストアアプリ利用方法も改善され、従来のようにWindowsストアアプリを実行できるのは一つのディスプレイのみという制限は緩められるという(図04)。
検索チャームに関する改善も興味深い。現在のアプリケーションや設定だけではなく、Web(Bing)およびSkyDriveも検索範囲に含めるようになり、ますますローカルとクラウドの垣根が低くなった。そのクラウド利用に関しては、新たに搭載されるSkyDriveへの直接保存が拍車を掛けるだろう。現在はWebブラウザーや専用アプリケーションを利用したアップロード/ダウンロードや同期で利用するSkyDriveだが、Office 2013のようにSkyDriveのオンラインストレージを保存先として選択できるようになるという(図05~06)。
この他にもタッチ機能を改善し、ページ読み込み速度を向上させたInternet Explorer 11を搭載し、Windows 8.1対応デバイス間でタブの同期を行う機能を搭載することも明らかにした。
既報のとおりLarson-Green氏は、6月末に開催予定のBuild 2013で、Windows 8.1のパブリックプレビューの公開を公表している。あくまでも筆者の個人的意見だが、Windows 8.1は新しいUIや設計を施した新OSではなく、既存のWindows 8で明らかになった問題を解消し、操作性を改善するためのマイナーアップデートである。現在Windows 8を利用しているユーザーとしては約1カ月後の公開を楽しみにしたい。