新潟県上越地方で焼きそばが熱い。2010年に誕生した「糸魚川ブラック焼きそば」に続き、上越市の「ホワイト焼きそば」、妙高赤倉温泉の「レッド焼きそば」とカラフルな三大焼きそばが話題になっている。3色それぞれ多彩なメニューを展開し、その数何と50以上。個性豊かに盛り上がる、新潟の焼きそばを追ってみた。
ホワイトは上越自慢の米粉に、謙信公の塩で味つけ
「糸魚川ブラック焼きそば」は、新潟産のイカとイカ墨を中華麺に加えて作った真っ黒な焼きそば。日本海に面する糸魚川らしい海鮮の風味と見た目のインパクトで、瞬く間に知れわたり、今や新潟を代表するB級ご当地グルメになっている。
糸魚川市に隣接する上越市では、地元の製麺業者や飲食店と協力して、新潟自慢のコシヒカリ米粉の利用促進のため、米粉を使ったご当地グルメの開発に取りかかっていた。
米粉は扱いが難しい部分もあるが、2010年に冷やし中華用の米粉入り麺を作ったところ「おいしい」と評判に。翌年、年間通じて楽しめるようにと米粉を使った麺料理として誕生したのが、「謙信公 義の塩 ホワイト焼きそば」だ。
その条件は、上越産のコシヒカリ米粉30%が入った麺と上越の食材を使った海鮮風。上越の風土と雪のイメージから、白をベースにしたやさしい味に仕上げることになっている。謙信公とはもちろん、越後国(現在の上越市)の戦国武将・上杉謙信のこと。敵将・武田信玄が塩不足に苦しんでいることを知って塩を送ったという逸話から、味のベースは塩になった。
そんな「ホワイト焼きそば」は現在、上越市内約10カ所の飲食店で食べることができる。ホワイト焼きそばと聞くと、真っ白でシンプルなものを想像する人が多いかもしれないが、食材は何を使ってもOKなので、色鮮やかなアレンジメニューが登場。海鮮だけでなくカラフルな野菜もふんだんに使われ、各店並べてみるとまるでイタリア料理のようだ。
ホワイトミートソース、中華あんなど和洋中の味で提供
中でもユニークなのが、洋風レストラン「遊食倶楽部たいむ」のホワイト焼きそば(800円)。ご飯と目玉焼きの上に焼きそば、更にホワイトミートソースがかかっていてボリュームたっぷり。男性を中心にリピーター続出している。同じくソースに注目なのが中華料理店「王華飯店」。かた焼きそばに中華あんをかけた本格的な一品(900円)が楽しめる。
海鮮ダイニング「魚徳(うおとく)」では、干しえびと高菜を使ったあっさり味のホワイト焼きそば(788円)を提供。実は、魚徳では「糸魚川ブラック焼きそば」も提供されていて、ホワイトとブラックの食べ比べもできる。さらに、居酒屋「鳥まん」では、上越で漁獲量が多いメギスの魚醤(ぎょしょう)を隠し味にしたホワイト焼きそば(800円)が楽しめる。
アレンジは各店に任せたところ、このようにアイディア満載のホワイト焼きそばが次々と誕生したそうだ。どの店に行っても全く違うメニューが楽しめるのも魅力のひとつだ。各店共通の米粉麺は、「もっちりしていて独特の歯ごたえが楽しめる」「冷めても味が染みこんでいておいしい」など、米粉を食べる機会が少ない人にも好評だという。
上越自慢の味がギュッと詰まったホワイト焼きそば。一度食べてみる価値ありだ! 上越市は上杉謙信ゆかりの「春日山城跡」「春日山神社」、春は日本三大夜桜、夏は東洋一の蓮が楽しめる「高田公園」など名所、旧跡が多い。散策の途中に、上越自慢のホワイト焼きそばも楽しんでみてはいかがだろうか。
見た目と味のギャップに驚くレッド
ホワイト焼きそばと同じく2011年夏に誕生したのが、「妙高赤倉温泉レッド焼きそば」だ。
赤倉温泉は自然豊かで、夏は登山やアウトドア、冬はスキーや温泉が楽しめる一大観光地。「赤倉」の名前にちなんで、数年前から「赤」にこだわった様々なメニューを展開していた。合わせて、ブラック焼きそば、ホワイト焼きそばの流れもあり、赤倉のイメージにピッタリな「レッド焼きそば」を打ち出していくことになったという。
このレッド焼きそば、何といっても麺も具材も真っ赤なのが特徴。唐辛子を使って激辛に仕上げてあるんじゃないかと思う人が多いかもしれないが、赤の正体は、パプリカやトマトなどの高原野菜で作ったソース。食べてみると野菜のうまみが感じられる優しい味で、見た目とのギャップに驚く人が多いそうだ。
麺は妙高産の米粉を30%使った太麺。トッピングはご当地食材なら何でもOKで、野菜やお肉、海産物などお店ごとに工夫されている。今のところ妙高市内9つの店舗で提供されていて、それぞれに食欲をかきたてるメニューを提案している。
最もスタンダードなのは、「お食事処 みよしや」の「元祖赤倉レッド焼きそば(700円)」。ナポリタンのような赤い焼きそばの上に、温泉卵と大葉をトッピング。ビギナーはまずこの元祖を試してみよう。本格派ならば、中華料理店「大来(だいらい)」の「妙高雪海老入りレッド焼きそば(700円)」。妙高で陸上養殖されるえびが味わえる贅沢(ぜいたく)な一品だ。
また「食堂こやま」では、県内で飼育されているブランド豚を使った「越後もち豚大辛レッド焼きそば(800円)」が楽しめる。レッド焼きそばは基本辛くないが、こやまだけは大辛バージョン。辛いのが好きな方にはこちらをおすすめする。その他、つけ麺風、エスニック風、ハンバーガー風など全店食べても楽しめる多彩なラインナップがそろっている。
レッド焼きそばの誕生から約2年。地元では地域のイベントなどにも出店し、認知度は徐々にアップしている。「辛そうに見えて実は優しい味」「子供たちも喜んで食べてくれる」と好評だそう。スキーヤーなど観光客はその存在を知らない人が多いが、現地で食べて「こんな面白いご当地グルメがあるとは」と驚きの声をあげるそうだ。
上越地方で盛り上がる3色の焼きそば。2012年には「上越三色同麺(盟)」を結び、相乗効果で盛り上がっている。今後は観光客にも積極的にアピールし、県外でのPRにも力を入れていくという。新潟県上越地方を訪れたら、黒・白・赤の多彩な味をお試しあれ。