モテない人生を歩んできたKくん、婚活パーティーでも挫折
Kくんは35歳まで、まったく女性にモテない人生を歩んできた。ルックス的には極端に太っているわけでもなければ、すっかり頭髪がなくなってしまっているわけでもなく、いたって平均レベルの男性に見えなくもないのだが、幼いころから性格がおとなしく、女性に対して奥手なところがあった。しかも、スポーツは全般的に苦手で、音楽や話術、笑いのセンスもなく、中高はどちらも男子校。女性に縁のない青春時代を過ごしていた。
そんなKくんのモテない人生は、社会に出てからも変わらなかった。社員10人程度の小さな会社に就職したのだが、女性社員は一人もいないため、そもそも女性との出会いがない。それでも20代のころは、若さゆえにあまり気にしていなかったのだが、30代に突入すると周囲の同世代の男性が続々と結婚したため、だんだん不安になってきた。かくして、Kくんは女性との出会いを求めて、いわゆる婚活にいそしむようになったのだ。
しかし、今まで女性に縁のない生活を送ってきたKくんのことである。いざ婚活を思いたったところで、なかなかうまくいかない。勤務先の会社に女性がいないので、取引先などの関係各社に勤める女性たちをターゲットにしたのだが、タイプの女性が見つかってもデートに誘うことができない。そもそもKくんは極端に保守的な性格のため、仕事に関係のある女性に対しては、ふられたときのリスクを恐れて、ますます奥手になってしまう。ならば、仕事と関係のないところで女性との出会いを探そうとしても、合コンの機会などほとんどない。
そこでKくんは、お見合いや婚活パーティーに新たな活路を求めた。出会いさえすれば次のステップに進めると信じていたKくんは、「出会い」と名がつくイベントであれば、積極的に参加するようにして、そこで未来のお嫁さんを探そうとした。
ところが、今度は出会った女性と自然な会話ができないという問題にぶち当たった。イベントなどで、見知らぬ女性と話す機会は生まれたのだが、その女性をどうやって楽しませればいいのかわからない。中高を男子校で過ごし、社会に出てからも女性に縁のない暮らしを続けてきたKくんにとって、「女性との自然な会話」ほど不自然になってしまうものはない。こうして、Kくんは婚活系イベントでも挫折感を感じたのである。
なんと36歳で念願の彼女、秘訣は「自分の属性を変えた」こと
さて、そんなKくんであるが、月日が流れること数年。今年37歳になった彼は、なんと去る5月初旬に、付き合って1年になる彼女と幸せな結婚を果たした。数年前までは女性との出会いにさえ苦労していたKくんが、35歳のときにひょんなきっかけをつかみ、それ以降は女性との出会いが急増。36歳で念願の彼女ができ、結婚に至ったのだ。
そのきっかけは、Kくんの考え方の変化に起因する。Kくんは女性との出会いを必死で求める作戦を根本的に見直し。すなわち、無理して女性を狙うのではなく、男性を狙うという、逆説的な作戦をとったのだ。
女性と仲良くなるためには、まず男性と仲良くなるべし。これは一見まったく真逆の行動と思われるかもしれないが、その真意は女友達がたくさんいる男性、つまりモテる男性と仲良くなりさえすれば、自然に友達の輪が広がり、おのずと自分にも女性が集まってくるという目論見である。名づけて、"コバンザメ作戦"だという(せこい!)
実際、これが功を奏した。かつてのKくんは女性とうまく会話することができなかったが、男性となら普通に会話することができた。そこで会社の同僚の紹介で、普段から女性と頻繁に遊んでいる別会社の男性に積極的に近寄り、彼と親しくなることで徐々に彼の遊び仲間とも交流していった。すると、Kくんの目論見どおり、半年したら彼の遊び仲間である女友達たちとも親しくなり、その中の一人と晴れて恋仲になれたのだ。
もちろん、そこに至るまでにはファッションも大幅に変えた。Kくんは新たな男友達の真似をして、お洒落にも関心を示すようになり、ただモテたい一心で自分自身を改造した。なお、そこに抵抗はなかったという。結婚したかったからだ。
こうして、Kくんは女性にまったくモテなかった人生にピリオドを打ち、今では初々しい新婚生活を送っている。彼が言うには、男性にとって「女性にモテるようになる」には、「自分の属性を変える」ことが必要だという。
確かに、一般的に人間は無意識のうちに「属性」というもので他人を判断する傾向がある。この属性とは、たとえばオタクやガリベン、スポーツマン、お洒落さん、エリートビジネスマンなどといった、その人を表現する際のキャッチコピーのようなものだ。これらの中で、比較的女性に人気がある男性の属性はスポーツマン、お洒落さん、エリートビジネスマンといったところだろう。実際、これらに属している男性は、そんなにルックス的に恵まれていなくとも、なぜか女性にはモテたりするものだ。
ならば、Kくんが考えた「属性を変える」という行動は、実に的を射ている。「女性に縁がない男」という属性のまま女性との出会いを求めるより、まずは「女友達が多い男の仲間の一人」という属性にキャラチェンジすることを優先し、そのうえで婚活に励んだほうが効率的だ。婚活の第一歩は出会い探しではなく、属性を変化させることなのかもしれない。
<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。1976年大阪府出身。早稲田大学卒業。『神童チェリー』『雑草女に敵なし!』『SimpleHeart』『芸能人に学ぶビジネス力』など著書多数。中でも『雑草女に敵なし!』はコミカライズもされた。また、最新刊の長編小説『虎がにじんだ夕暮れ』(PHP研究所)が、2012年10月25日に発売された。各種番組などのコメンテーター・MCとしても活動しており、私生活では愛妻・チーと愛犬・ポンポン丸と暮らすマイペースで偏屈な亭主。
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