東京大学はこのほど、スーパーマーケットのPOSシステムを利用して消費者物価を迅速に計測する手法を開発し、「東大日時物価指数」として、「長期デフレの解明」プロジェクトのホームページにて公開を開始した。

「長期デフレの解明」プロジェクト(出典:「長期デフレの解明」プロジェクトWebサイト)

同指数は、スーパーマーケットのPOSシステム(スーパーのレジで商品の販売実績を記録するシステム)を通じて、全国約300店舗で販売される各商品について、各店における日々の価格および販売数量を収集し、それらを原データとして物価指数を作成したもの。

スーパーでの売れ筋商品を正確に捕捉し、それに基づく集計を行うことで、消費者の実感に近い指数を作成する。調査対象は、食料品や日用雑貨など20万点以上の商品。購買取引の行われた日の3日後までにデータを収集し、毎日、物価指数を作成・公開する。

具体的には、「ある日のある商品の価格が、前年の同日から何パーセント変化したかを計算した上で、その商品のその日における販売数量を踏まえたウエイトを用いて、価格の変化率を加重平均する」(東大)。

例えば、ある日におけるある商品の売れ行きが好調なら、その商品の価格変化率が物価指標に及ぼす寄与が大きくなる。この加重平均法はトルンクビスト指数と呼ばれ、指数理論に照らして最も望ましい性質をもつ物価指標だという。

総務省統計局が作成している日本の消費者物価指数は、各月の計数を翌月の月末に公表しているが、東大日次物価指数では、各日の計数を原則3日後に公表。従来の指標と比べてタイムラグを大幅に短縮した。物価に関する最新情報を日々提供することで、投資家が物価の先行きを予想する際に精度を高める効果があると期待されるほか、メーカーや流通業者が、販売商品の価格づけを行う場合にも有益な情報を迅速に提供できるとしている。

東大は同指数の特徴について、「消費者物価を高精度かつ迅速に計測することにより、政策効果のモニターが可能となる。デフレ脱却の確認がタイムリーにできるほか、予期せぬ物価の急上昇を監視する指標としても有効である。また、株式、為替、国債などの市場の参加者に物価に関する最新の情報をタイムリーに提供することにより、これらの市場における価格形成の効率性を高める効果が期待できる」と説明している。