パナソニックは5月24日、LEDに匹敵する効率と寿命を実現した白色有機EL素子の開発に成功したと発表した。

有機ELパネルは、直視してもまぶしくない面発光、フレキシブルな形状といった特徴を持ち、照明器具の次世代光源として期待されている。しかしパネルの価格や寿命、効率がネックとなっており、一般家庭への導入はまだ先とみられている技術だ。

有機EL素子の発光層は、ガラスや空気よりも屈折率が高く、内部の反射によって閉じ込められてしまう光が多い。同社では、フィルム、ガラス、空気を最適な配置で積層することで、有機EL素子内への光の閉じ込めを抑制したビルドアップ型光取り出し基板(BLES: Built-up Light Extraction Substrate)技術を開発。従来の2.5倍となる50%の取り出し効率を実現した。

この技術を使用して作られた有機EL素子は、発光面積1cm2で114lm(ルーメン)/Wという、現時点で世界最高の効率を実現している(5月20日現在)。また、発光面積を25cm2に拡大した場合でも110lm/Wという高効率をキープする。なお、現在製品として発売されている有機ELパネル(パナソニック出光OLED照明製)の発光効率は30lm/W前後。

2013年1月に行われた次世代照明技術展のパナソニック出光OLED照明ブースに展示されていた有機ELパネル

家庭用の照明に使用されている蛍光灯照明器具の効率は60~80lm/Wで、LED照明器具の効率は80lm/W前後。同社では、今回開発された技術を使用した有機EL素子は、器具に組み込んだ場合でも、LEDに匹敵する効率が得られるとしている。

また、高効率のリン光材料を使用した有機発光層を適切に多層化する技術も開発。これにより、正面輝度1,000cd(カンデラ)/m2の明るさで駆動したとき、輝度が半減するまでの時間が10万時間と、長寿命化も実現した。

これまで有機ELパネルは、効率をあげれば寿命が低下し、寿命を伸ばせば効率が低下するという図式になっていた。今回の新技術は、有機ELの高効率化に加え、効率と寿命との両立を実現するというもので、一般家庭で使用できるる有機EL照明の実用化に大きく近づいたことになる。