女優・貫地谷しほりの初主演映画『くちづけ』が5月25日に公開を迎える。同作は、昨年末に惜しまれつつ解散した劇団・東京セレソンデラックスの人気演目を原作に、同劇団主宰の宅間孝行が脚本を手掛け、堤幸彦監督が実写化。知的障害者が生活するグループホーム「ひまわり荘」を舞台に、7歳の子どものまま止まってしまった30歳の阿波野マコ(貫地谷しほり)と男手ひとつで育てるために30年間休業した漫画家"愛情いっぽん"こと、父・幸助(竹中直人)との深く、優しく、残酷な愛の物語が描かれている。
その「ひまわり荘」の主人・国村の長女・はるかを演じたのが、第36回日本アカデミー賞で優秀新人俳優賞を受賞し、今、最も注目を集めている女優・橋本愛。幼い頃からひまわり荘の住人と過ごしてきたはるかは、世間の偏見に対して強く拒否反応を示し、時に感情をあらわにする。その役柄と橋本はどのように向き合ったのか。語り口はゆったりながらも、インタビューの受け答えは時に鋭く、時に芯の強さを感じせる。
橋本愛 |
――この物語は明るいトーンであるからこそ、悲しみがより際立っていたように思います。橋本さんが最初に台本を読んだ時、どのような印象を?
こういう商業映画だとオブラートに包みがちなんですけど、こうやって露呈しまくる宅間(孝之)さんのそういうスピリットは好きでしたね。怖がって怖がって、誰にもたたかれにくいものを提示したら、こちらとしてはダメージが少ないですけど、でもやっぱり伝えたいものを大胆に露呈するというのが一番伝わりやすいですよね。
――東京セレソンデラックスの舞台でも上演されていて、今回の映画でもその舞台に登場した役者さんが多数出演しています。ほかの現場と違う部分はありましたか。
全編セットというのが初めてだったかもしれないです。あとは、カメラ5台で撮影したというのも初めてで、舞台が原作というのも初めてでしたし、初めて尽くしでした。そういえば、現場に入る前に全部のセリフを覚えたのも初めてでした(笑)。
――リハーサルも入念に行われたそうですね。
うーん…そういうのすぐに忘れちゃうんですよね(笑)。でも、本番をやるまえにすごくリハーサルをしましたね。1回通してやると20分くらいはかかりますから、回数っていうよりも、濃さじゃないですかね。
――その中で、橋本さんが演じた国村はるかは感情を表に出すような役柄でした。
この子のいるべき立ち位置はすごく考えました。どこにいればいいのかとか、この子がいる意味は何なのかとか。この意味がみなさんに分かりやすく伝わるにはどうすればいいのかとか。脚本を読んだ時は、ただの明るく元気な女の子で終わっちゃいそうな気がしたんですよ。でも、だとしたらいる意味がないんじゃないかと思ってて。これだけの出演者がいて、それぞれの主張が強かったので、国村はるかの”色”はすごく気にしました。
――はるかは、小さい頃からひまわり荘の人々と過ごしてきたという背景もあって、宅間さん演じるうーやんへの突っ込みも手加減なし。頭を思いっきりひっぱたくシーンでは思わず笑ってしまいました。
そうですか(笑)。宅間さんからは特に何にも言われてなかったんですけど、もともと手加減しないというか(笑)。『桐島、部活やめるってよ』という映画でもビンタするシーンがあったんですけど、あれも最初はもともと私がたたく予定じゃなかったんです。でも、撮影中に変更になって、それも容赦なかったです。でも…宅間さんには申し訳ないです。痛かったかなぁ…。でも、手加減なくぶっちゃうっていうのは、はるかは平気できてしまうんですね。障害者ということで差別してないから。……続きを読む。