経済産業省が2013年5月17日に発表した生産動態統計によると、2012年度(2012年4月~2013年3月)における家庭用電気機器の国内出荷および在庫実績は、前年比0.5%増の2兆2,256億円となった。
業界内では2013年1月までは通期で前年割れになると予測されていたものの、結果は前年比で微増となった。期末に向けて、一気に巻き返しが起こったわけだ。実際、2012年度第4四半期(2013年1月~3月)には前年同期比5.1%増の5,147億円、そして2013年3月単月では前年同月比9.4%増の2,074億円と、2桁近い成長率となっている。
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業績を押し上げた主な要因は冷蔵庫とエアコン
同調査をみると、通期で前年実績を上回った製品がいくつかある。冷蔵庫は、通期で前年比5.0%増の3,859億円。特に3月は前年同月比29.0%増の348億円となっている。また、エアコンも通期で前年比4.1%増の9,437億円。そのうちルームエアコンに限定しても、前年比2.9%増の6,261億円となっている。さらに掃除機では前年比12.7%増の970億円、温水洗浄便座が2.8%増の827億円と成長している。また市場規模は小さいが、高い成長を遂げた製品として、フリーザーが前年比24.2%増の181億円、電気マッサージ器具が10.5%増の213億円となっている。
同調査のなかでは対象外となっているが、空気清浄機は今年に入ってから販売が好調で、一部メーカーでは前年比1.5倍~2倍の出荷台数になったという声も聞こえてきたほど。PM2.5に対する関心が高まったこと、黄砂の影響などを懸念した消費者が空気清浄機を購入。これが出荷増を後押ししたといえる。なお、洗濯機は前年比3.9%減の1,946億円となっている。
一方、電機大手各社の2012年度業績発表でも、各社の家電事業の状況が明らかになっている。各社ごとにセグメントの分類が異なるため、一概には比較できないが、白物家電関連事業は比較的好調な結果となっている。
円安が向かい風となるも白物の販売増加とコストダウンでカバー - パナソニック
パナソニックの津賀一宏 代表取締役社長(写真は3月28日の中期経営計画説明にて) |
パナソニックは、白物家電事業を担当するアプライアンス部門の売上高が前年比1%増の1兆5,544億円、営業利益が150億円減の665億円となった。中国での販売減少などが響いたが、冷蔵庫や洗濯機が好調に推移。冷蔵庫は前年比14%増の1,464億円、洗濯機および乾燥機は前年比5%増の1,506億円。また、エアコンは7%減の2,722億円となった。
2013年度はセグメントの変更があり、アプライアンスの売上高は前年度の1兆4,681億円に対して3%増の1兆5,100億円、営業利益は前年度の585億円から45億円増の630億円を目指す。
「BtoC事業のグローバル販売の拡大、大型空調をはじめとするBtoB事業の商品陣容強化のほか、中国での販売状況改善などが見込まれる。また、アプライアンス事業では、円安がマイナス影響となるが、販売増加とコストダウンでこれを吸収し、増益を目指す」としている。
売上高が減少するも事業構造改革効果で損失幅は減少 - 日立
日立製作所はデジタルメディア・民生機器の売上高が5%減の8,185億円、営業損失は55億円改善したものの、マイナス53億円の赤字となった。白物家電は堅調に推移したものの、薄型テレビの事業戦略変更により、売上高が減少。利益の改善は薄型テレビの事業構造改革効果や、前期のタイの洪水被害の影響がなくなったことで改善している。2013年度のデジタルメディア・民生機器の売上高見通しは前年並みの8,200億円、営業利益はブレイクイーブンを見込んでいる。
2011年度を底にV字回復を遂げた東芝
東芝の家庭電器部門の売上高は前年比3%増の5,915億円、営業利益は3億円増の24億円の増収増益となった。白物家電事業の増収に加えて、LED照明、業務用空調事業が堅調に推移。為替の影響によって、白物家電事業が減益となったものの、LED照明の増益が貢献した。
同社では、2011年度にタイの洪水被害の影響があり、冷蔵庫などの生産に影響。2012年度はその反動で伸び率が高かったという点も見逃せない。「2011年度を底にV字回復を遂げているが、スピード感を持った回復にはつながっていない」(東芝・久保誠代表執行役専務)という。成長事業と位置づける照明事業を中心に、子会社統合、製造拠点の再編などの構造改革に取り組んでおり、これにより成長拡大および収益構造の強化を図る考えだ。
2013年度の家庭電器部門の業績見通しは、売上高が12%増の6,600億円、営業利益が76億円増の100億円と、大幅な成長を見込む。「LED照明を中心とする照明事業に加えて、空調事業が堅調に推移すると見込んでいる」(同)という。
シャープ現社長の奥田隆司氏(左)と新社長に就任する高橋興三氏(5月14日の中期経営計画説明にて) |
健康機器・冷蔵庫・エアコンが堅調なシャープ
シャープは、健康・環境機器の売上高が前年比6%増の3,096億円、営業利益は28億円増の294億円となっている。冷蔵庫の売上高が前年比6%増の879億円、エアコンが11%増の596億円と好調に推移しているという。
2013年度の健康・環境部門の売上高は前年比3%増の3,200億円、営業利益は前年比122億円減の200億円を見込む。ASEAN地域での販売増加が成長の鍵になりそうだ。
三菱は国内向け液晶テレビやBDレコーダーの需要減で減収減益
三菱電機は、家庭電器事業の売上高が前年比3%減の8,212億円、営業利益が30億円減の193億円。アジアでの空調機器の増加があったものの、国内向け液晶テレビやブルーレイディスクレコーダーの大幅な需要減によって、減収減益となった。
2013年度の家庭電器事業の業績見通しは売上高が前年比8%増の8,900億円、営業利益は167億円増の360億円。空調・住設機器を家庭電器事業の成長戦略にあげ、この分野への戦略的投資を加速していく考えだ。
2013年度は消費増税前の駆け込み特需が大きく影響?
このように、各社の白物家電製品の業績は比較的好調だといえる。
2013年度は、海外生産が主力となっている白物家電は円安が逆風となる可能性があるが、2014年4月に見込まれている消費増税前の駆け込み需要が期待され、洗濯機や冷蔵庫では、前年実績を上回る需要が予想されている。また、空気清浄機やエアコンなど「空質」に関する製品への関心が高まっており、これら製品では、これまでのように季節要因にこだわらないような需要が少しずつ表面化しているところだ。
スマート家電はまだ市場全体に影響力を与えるところには成長していないが、2013年度にはこの分野での製品投入が相次ぎそうである。そして、付加価値家電製品に対する関心は引き続き旺盛だ。
こうした動きが、2013年度の白物家電市場のポイントとなりそうだ。