俳優の加瀬亮、ユースケ・サンタマリア、濱田岳らが23日、東京・丸の内ピカデリーで行われた映画『はじまりのみち』(6月1日公開)の完成披露試写会に出席し、舞台あいさつを行った。
同作は『二十四の瞳』、『楢山節考』など数々のヒット作を生み出した木下惠介監督の生誕100年を記念して製作された映画。日本アニメ界の第一人者で、『クレヨンしんちゃん』シリーズや『河童のクゥと夏休み』(2007年)を手掛けたことでも知られる原恵一が監督と脚本を務め、初の実写化に挑む。時は戦時中、脳溢血で倒れた母を疎開させるために、惠介は母をリアカーに乗せて山越えを試みる。物語はこの実話を軸に描かれており、主人公・木下惠介を加瀬亮が、惠介に盲目的な愛情を注いだ母の"たま"を田中裕子が演じる。
もともと木下監督について詳しくなかった加瀬は、知識を深めて撮影に臨んだ。ところが、その予備知識がフィクション作品の表現の幅を狭めるのではと、実像に寄せていくことをやめたのだという。加瀬は、「葛藤の中にいる木下監督は誰しもが当てはまると思います。そこが作品に現れれば」と力強く語る。この日は、かつての木下組に縁のある来場者もいたことから、「映画の上映前に緊張していますが…宜しくお願いいたします」と緊張で声を震わせながらあいさつした。
一方、ユースケが演じたのは、惠介の兄・敏三。名匠の実話をもとにした感動作ということもあり、冒頭では真面目モードだったものの、「昔から自分と加瀬くんは同じ系統の顔つきしていると思っていたんですよ。だから兄弟役は大丈夫だと思っていたら自分で画面を見たら最初はやべっ思いました(笑)」といつもの調子になり、これには加瀬も苦笑。すると加瀬は、「現場でもビックリしたんですけど」と撮影現場でのユースケを振り返り、「今までのユースケさんのイメージとは全く違う人物をすごく繊細に演じられていて、新しい面を見たようで驚きました」と持ち上げ、ユースケは「ありがとね、加瀬くん」と感謝した。
惠介に雇われた便利屋を演じた濱田は、原監督作のアニメの大ファンで、絵コンテに描かれていた便利屋の顔のカットを大切に持ち帰るほど。「すごい身体能力で全然バテない役立ったので、監督に『便利屋って河童なんじゃないですかね?』と聞きました」とうれしそうに話し、「後半は河童の気持ちで臨みました」と笑顔。また、木下監督が表現に挑戦し続けたことに触れ、「クレヨンしんちゃんを見習って、突発的にお尻を出すことにチャレンジしたいと思います」と宣言し、場内の笑いを誘った。
また、この日は木下惠介監督の弟で作曲家の木下忠司氏が来場。忠司氏から花束を受け取った加瀬は、「大変うれしく思います」と笑顔を見せながら、「実際の木下監督をいちばんよく知っていらっしゃるので、映画をどう見てもらえるのか不安ですが、監督と共演者ともに心を込めて作った作品ですので楽しんでいただければと思います」と作品に込めた思いを伝え、会を締めくくった。