芸能界を騒がせている矢口真里さん・中村昌也さん夫婦
現在、芸能界では矢口真里さん・中村昌也さん夫婦の別居問題が世間を騒がせている。これはあくまで週刊誌の報道であるため、どこまで真実であるかはわからないのだが、なんでも夫である中村昌也さんの留守中に、妻の矢口真理さんが別の男性を自宅に連れ込んでいたという。しかも、その最中に夫が帰宅したものだから、ベッドで寝ている別の男性と夫が鉢合わせになるという、まるで往年のドリフターズコントのような修羅場があったらしい。
この真偽はともかくとして、もし現実にこういうことが起こったら、さすがに当人は言い訳できないだろう。いわゆる不倫の証拠としては、これ以上のものはそうそうなく、"修羅場の回避"も難しい。そもそも、夫婦の自宅に別の異性を連れ込むほうが悪いのだ。
遊び人のFくん、不倫がばれたことは一度もなし
しかし、世の中にはこういった絶体絶命のピンチを、ある作戦を駆使して切り抜けた男もいる。それが今年で結婚生活5年目を迎えたFくん、33歳だ。
Fくんは独身時代から浮気性の遊び人で、女性にもよくモテた男性だった。そして、それは結婚後も変わらず、現在も付き合って1年になる24歳の若い愛人がいる。
そんなFくんだが、今まで奥様に不倫がばれたことは一度もないという。その理由のひとつは、Fくん夫妻が共働きで子供もおらず、しかもFくん自身がテレビ番組の制作会社に勤めるディレクターという、労働時間が不規則な仕事をしているからだろう。テレビ業界という独特の世界では、Fくんがいくら家を留守にしても「ロケがあるから」「編集が長引いたから」などという言葉で、奥様を納得させることができるわけだ。
また、一方の奥様も多忙な会社に総合職として勤務している。これもまた、Fくんの不倫がばれにくい理由のひとつだろう。奥様も地方出張で家を数日留守にすることが時々あるらしく、その間はFくんにとってまさに不倫天国だ。
「愛人が自宅にいるときに妻が緊急帰宅」
実際、これまでにもFくんは奥様の出張中を利用して、自宅に愛人を連れ込んだことが何度かあるという。そして、そうした中で一度だけ、冒頭で書いたような絶体絶命の修羅場、つまり「愛人が自宅にいるときに妻が緊急帰宅」という状況に見舞われたのだ。
その日の朝、奥様は一泊二日の地方出張に行くと言って、キャリーバッグを引きずりながら自宅をあとにした。帰りは明日の夜遅くになるという。
そこでFくんは、これ幸いとばかりに愛人を自宅に宿泊させたのだが、その日の深夜になって、まさかの事態が起こった。Fくんが愛人と寝室でイチャついている最中に、とつぜん玄関が開く音がして、奥様が緊急帰宅。奥様の出張が急遽中止になったのだ。
当然、Fくんは焦った。不倫天国から急転直下、史上最悪のピンチを迎えたわけだが、ここで彼が咄嗟にとった行動がえげつない。一世一代の最低な大芝居である。
まず愛人をベランダに、自らは洗面所に移動し咳き込む
まずFくんは、奥様が玄関でブーツを脱いでいる間に、愛人を寝室から直接出ることができるベランダに隠蔽した。ここまではコントでもよくある展開だ。
そして、次に寝室の電気を消したFくんは、なるべく音をたてないように洗面所に移動し、玄関でブーツを脱ぐ奥様に聞こえるように、わざと大袈裟に咳き込んだ。Fくん宅は寝室から洗面所に向かう廊下が玄関からは見えない構造になっているため、こうすることでFくんが最初から洗面所にいると、奥様に思わせることに成功した。
Fくんの咳き込みを聞いた奥様は、ブーツを脱ぐなり洗面所に向かった。そして、洗面所で水を出しながら執拗に咳き込むFくんを発見し、その背中越しに「どうしたの? 具合でも悪いの?」と心配する声をかけた。仕事から帰宅したら、夫が洗面所でゲホゲホと苦しんでいたのだ。普通の奥様なら、誰だって心配するだろう。
そこでFくんは「ちょっと体調を崩してさ、なんだか風邪っぽいんだ……」と弱々しい声を出した。奥様はますます心配そうな表情になり、「熱はあるの?」と質問。それに対して、Fくんは「うん、熱もあるみたい」と即答し、奥様のほうを振り返った。
奥様は熱を確かめるようにFくんの額や頬に手を当てた。すると、奥様は「あ、熱あるじゃん!」と驚きの声を上げた。実はこれもFくんが仕組んだ作戦のひとつだ。さっき洗面所で出していたのは水ではなく熱湯であり、その熱湯で顔を何度も洗ったことで、瞬間的に額や頬の温度を上昇させていたのだ。
「熱がある」と芝居、妻にドリンク剤を買いに行かせる
かくして夫の体調不良を完全に信じ込んだ奥様は、夫からの「帰ってきた直後で悪いんだけど、今からコンビニか薬局に行って、ドリンク剤とか買ってきてほしいんだ」という要請を快く引き受けた。そして、奥様は再び家を出て行ったのである。
こうなれば、あとは簡単だ。Fくんは奥様の買い物中に、ベランダに隠蔽していた愛人をすみやかに帰宅させ、家の中の乱れていた部分も原状復帰させた。そして、奥様が帰ってきたあとは、仮病の演技を続けながらも、いつもの夫婦生活に戻ることができた。絶体絶命の修羅場を、こうした狡猾な作戦で回避したのである。
もちろん、Fくんの行動は決して褒められるべきことではなく、人間の道徳観をもとに考えると、不倫以上の重罪だろう。奥様は本当にかわいそうだと思う。したがって、これは最低な浮気男の世にも汚い逸話として心に留めておくべきだろう。
<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。1976年大阪府出身。早稲田大学卒業。『神童チェリー』『雑草女に敵なし!』『SimpleHeart』『芸能人に学ぶビジネス力』など著書多数。中でも『雑草女に敵なし!』はコミカライズもされた。また、最新刊の長編小説『虎がにじんだ夕暮れ』(PHP研究所)が、2012年10月25日に発売された。各種番組などのコメンテーター・MCとしても活動しており、私生活では愛妻・チーと愛犬・ポンポン丸と暮らすマイペースで偏屈な亭主。
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