NHK朝の連ドラでは、北の海女のヒロインが大人気。一方、日本で一番多く海女さんがいるのは三重県の伊勢志摩エリアだ。風光明媚なこの地で、いま個性的な創作バーガーが大増殖中だと言う。その名も「とばーがー」。三重県鳥羽市のご当地バーガーとして地元紙で取り上げられることも多くなった。
地元食を味わうスローなバーガー
この「とばーがー」は2007年、地元食材を使ったご当地グルメ創出の新しい取り組みとして始まった。気候温暖で自然の豊かな鳥羽市は、海の幸山の幸豊富な食材の宝庫。このお宝を使って、今までにないご当地グルメを生み出そうというプロジェクトなのだ。
「とばーがー」は鳥羽市の認定制。そのため、以下の条件を満たす必要がある。
(1)パテ(具材)部分に地元食材を一品以上使用していること
(2)注文を受けてから作ること
(3)鳥羽市内で販売されていること
ポイントは、ハンバーガーというスタイルにすることで、鳥羽の自慢の食材をフォーマルになりすぎず、カジュアルに楽しんでもらうこと。ファストフードの印象が強いハンバーガーだが、「とばーがー」のバックグラウンドにあるのは「スローフード」の考え方。そのため、鳥羽市内でだけ食べられる現地主義にこだわり、注文が入ってから作るので調理時間もそれなりにかかる。そう、実は「ファスト」ではないのだ。
とばーがーは現在22種類
しかし、このコンセプトに共感した鳥羽中の飲食スポットが独自の「とばーがー」を開発。レストランやドライブインはもちろん、民食やホテル、ケーキ店などからも手が挙がり始め、2013年5月現在、合計で22メニューものバーガーが公式認定されている。その食材はと言うと、実に幅広い。伊勢エビ、じゃこ、たこ、カキ、さざえ、めかぶ、アワビなど様々だ。
また、大体は400円~1,000円の価格帯だが、中には鳥羽国際ホテルの伊勢エビをふんだんに使った「M.O.L.F. Premium-Burber(モルフ・プレミアムバーガー)」のように、1万円の超高級バーガーも登場。
もちろん、リーズナブルなものもバラエティ豊かにそろう。近鉄鳥羽駅から徒歩1分の、海を一望できるレストラン「グランブルー」では、期間限定モノを含む5種類のとばーがーをラインナップ。一番人気の「Beef Pork Eggバーガー」(600円)は、メイン食材に抗生物質入りの飼料を一切使わない地元ブランド牛「加茂牛」と、アコヤ貝の粉末入り飼料で育った「志摩パールポーク」を使用している。
そして、加茂牛の三角バラ肉で作ったミンチとパールポークのバラ肉で作った焼き豚、そして新鮮卵で作ったパティ。それに地元・堅神(かたかみ)産の青ネギとみそソースをトッピングし、ふすま(小麦の皮)入りの健康パンで挟んでいる。もうレシピを見るだけでも、ゴージャスかつ新鮮な印象だ。
同店の若林悦子さんに話を聞いてみた。「とにかく無添加、無化調の食材にこだわっています。油も鳥羽産コシヒカリの米油を使っていて『どうしてこんなにカラッとしているのか』ってよく聞かれるんですよ」とのこと。
ファストではなく一手間かかるバーガーだけれど、「とばーがーをおいしく食べていただいて鳥羽の思い出を作ってほしい」と言う若林さん。鳥羽のご当地バーガーには地元の新鮮食材と一緒に、地元で生きる人々のもてなしの心や愛情が、たっぷりと詰まっているのだ。