ジェネリック医薬品とは、特許が切れた医薬品を、同じ有効成分でほかの製薬会社が製作した薬のこと。新薬に比べて価格が安いとはいえ、成分が同じなら、機能が劣っているわけではないでしょう。でも、本当に効果はあるのでしょうか?
ジェネリック医薬品の価格や効果など、誰もが疑問に思うことを、日本ジェネリック製薬協会(JGA)の理事長、長野健一さんにうかがいました。
効き目・品質・安全性ともに、先発医薬品と同等
――先発医薬品(新薬)とジェネリック医薬品は、成分が全く同じなのですか?
「有効成分は同一です。ただ、"添加剤"は異なることがあります。しかし、先発医薬品と添加剤が異なることを"マイナス"的に語られることがありますが、それは誤解です。
先発医薬品に特許があって、同じ添加剤を使用できない場合もありますが、添加剤が異なっても、有効性、安全性、品質が同等であることを科学的に証明した上で、厚生労働省の承認を受けております。むしろ、最新の製剤技術を積極的に応用するために、添加剤を変えることもあります。
ちなみに、添加剤は有効成分の効果に影響を与えることはありませんが、ごくまれに一部の添加剤にアレルギーを持っている方がいますので、過去にアレルギーを起こした方は薬剤師に相談することが必要です」
――不純物の含有量が異なるという指摘を読んだことがあるのですが……。
「異なることがありますが、十分な安全性を考慮した不純物含量の許容範囲内です。厚生労働省の厳しい基準をクリアしています」
――4月から、生活保護受給者に対しては、原則として価格の安いジェネリック医薬品を処方する制度の運用が始まりました。この制度についてどう思われますか?
「生活保護受給者のみがジェネリック医薬品を使用するというのではなく、日本国民全体で取り組むことが必要だと考えます。患者さんの窓口負担はそれほど変わらなくても、医療費の残りの部分は税金と保険料で賄われています」
普及しなかったのは、制度の問題
――本当に安くて安全で効果があるのなら、なぜ勝手に普及していかないのですか? みんな安いものには敏感だと思うのですが……。
「日本独自の皆保険制度の影響があると思います。誰もが低い負担で医療が受けられる皆保険制度は、日本が世界に誇る制度ではありますが、安い薬剤を使用しようという意識が働きにくい制度でもあります。医療機関や薬局も患者さんへの説明の負担が増え、ジェネリック医薬品を使用するメリットがなかったのです」
――ジェネリック医薬品は、皆保険制度のない諸外国ではもっと普及しているのですか?
「効率化できる部分を無視して、高い薬品ばかりを使用できる国は存在しません。ジェネリック医薬品は欧米でも60%以上使用されています。日本においては、JGA調査では2012年10月~12月分で26.1%です」
――医師や薬剤師は、ジェネリック医薬品があるときに教えてくれるのですか?
「先発医薬品や一般名で処方された場合、その薬剤にジェネリック医薬品がある場合は、薬局でジェネリック医薬品の情報提供をすることになっています。どのくらい安くなるかもわかります。
医薬品の種類によって異なりますが、平均すれば先発医薬品の大体5割程度。処方された薬剤のジェネリック医薬品を薬局で扱っていない場合もありますが、次回訪問時までに用意してもらうことも可能です」
――入院中に飲む薬や点滴をジェネリック医薬品にしてもらうこともできるのですか?
「病院で使用している注射薬などについては、それぞれの病院の方針もありますので、患者さんから指定することはできません。調剤薬局で切り替えられる内用薬、外用薬は、患者さんが選ぶことができます」
――最後にメッセージをお願いいたします。
「今、ほとんどの健康保険組合が赤字となり、保険料率を値上げしています。また、国もジェネリック医薬品を使用することによって、少しでも医療費の適正化を図っていく方向にあります。私たち一人一人も、次世代に負担を残さないように、今できることをしっかり取り組むことが必要です」
安くて、効果が同じなら、もっと早くチェックすればよかったと思いました。いろいろと制度が変わっていくタイミングなのかもしれませんね。
取材協力:日本ジェネリック製薬協会(JGA) 理事長 長野健一さん
(OFFICE-SANGA 臼村さおり)