米Yahoo!が新たな買収ターゲットに狙いを定めつつあると話題になっている。米All Things Digitalの5月16日(現地時間)の報道によれば、同社は人気Blogサービス「Tumblr」の資本投入を含めた戦略的定型、あるいは10億ドルでの買収に向けた話し合いを行っているという。もし買収が成立すれば、昨年2012年7月のMarissa Mayer氏のCEO就任から初の大型買収案件になる可能性がある。
買収の狙いは現時点で不明な部分が多いが、All Things Digitalの報道によれば、主に若年層をターゲットに「Yahoo!がいまだ"クール"な企業」であることを示すことが目的の1つにあるようだ。
Tumblrは2007年にスタートした記事投稿サービスで、複雑な設定も必要なく、文章や画像、動画などを気軽に投稿でき、さらに他のユーザーの投稿を自身のポストとして再投稿(Reblog)できたり、コメントを付与できたりと、ちょうどTwitterと各種Blogサービスの中間にあたる存在だといえる。
モバイル向けの簡易なインターフェイスが用意されているのも特徴だ。この人気サービスをYahoo!傘下へと収め、これまでYahoo!の浸透度が薄かった若年層や先進ユーザーを中心に、再びブランドを示す狙いがある。また就任時からモバイル強化戦略を掲げるMayer氏にとって、Tumblrの特徴はマッチしているといる。
Mayer氏はCEO就任以来、Tumblr共同創業者兼CEOのDavid Karp氏と会談を行っており、資本投入を含む戦略提携、あるいは買収を視野に入れているという。
Tumblrは創業以来1億2500万ドルの資金調達を実現しており、現在の時価総額は8億ドル規模が見込まれているという。Yahoo!の買収価格は10億ドル程度とされ、これは8億ドルにある程度の上乗せを行った結果とみられる。
10億ドルが妥当かは意見が分かれるところだが、現在未公開企業のTwitterの時価総額が100億ドル前後とされており、FacebookのInstagram買収が10億ドル、GoogleのYouTube買収が16億5000万ドルだったことを考えれば、金額的には「中堅」レベルで、「すでに一定の知名度を持つスタートアップ」を買収するのに相当する。
Yahoo!が多数行っている中小スタートアップの買収金額が数千万ドルの範疇に収まっていることを考慮すると、同社としてはかなり大型買収案件だといえるかもしれない。
なお、Yahoo!は動画投稿・配信サイト「Dailymotion」の買収に向けた協議を進めていたとされているが、今年4月にはフランス政府の介入を受けて買収を断念している。
それに続く形で同社は今度は「Hulu」の買収を目指していることが5月初旬に報じられているが、こちらは潜在的買収候補も多く、成立の可否は不透明だ。ゆえに現時点で大型買収として成立する可能性が高いのは唯一Tumblrのみであり、低迷するYahoo!をいかに盛り返すのか、いまだ不明瞭な部分も多いMayor氏の経営手腕が強く試される場面でもある。