昔の人は、生活の知恵として食事の際は食べ合わせに注意を払っていました。けれども、食べ合わせって本当に効果があるのでしょうか? そこで、養生学の専門家である島内薫さんに、やめた方がよい食べ合わせや、頭のさえる食べ方について教えてもらいました。

衛生環境の異なる現代では意味がない?

――昔、よく言われていた効果的な食べ合わせには、どのようなものがあったのですか?

「代表的なものとしては、豆腐とショウガを一緒に食べるなどでしょうか。みなさんも聞いたことがあるかもしれませんね。豆腐は体を冷やすので、体をあたためるショウガと一緒に食べるのです。冬に豆腐を湯豆腐にするのもそのためです」

――いわゆる『やめた方がよい食べ合わせ』は本当にあるのですか?

「今は衛生環境が発達していますから、食べ合わせをあまり意識しなくてもよいと思います。例えば昔は、『ウナギと梅干しは一緒に食べない方がよい』と言われていましたよね。ウナギと言えば、夏の土用です。夏の暑い時期に食べるには、ウナギも梅干しも胃腸への負担が大きいのです。だから、その両方を一緒に食べない方がよかったのです。けれども、今は冷房があるので、昔と違って体へかかる負担が軽いのです」

――なるほど。そのほか、毒になる食べ合わせなどはないのですか?

「ほとんどないですね。ドリアン(果物)やヒトヨタケ(きのこ)はアルコールと摂取すると毒になるという程度でしょうか」

「食べ方」も重要なポイント

――仕事に役立つ食べ合わせはあるのでしょうか。例えば、食後でも仕事がはかどる食べ方はありますか?

「食べ合わせではありませんが、効果的なのは腹6分目までしか食べないことです。いっぱい食べるとどうしても胃に血液が集中してしまうので、脳へ届く血液量が少なくなるのです。よくかんでゆっくりと食べれば満腹中枢が刺激されるので、少量の食事でも満足できると思いますよ」

――頭のさえる食べ方はあるのですか?

「こちらも同じく食べ過ぎないことが重要です。特に糖分の摂取には気をつけましょう。糖分を摂取すると、一時的に血糖値が上がり、脳は元気になりますが、すぐにまた下がります。糖分を摂取してやる気を出すくせをつけてしまうと、頭がさえていない状態の時間の方が結果的に長くなってしまいます」

――現代人が健康になるための食べ合わせで、意識した方がよいことはありますか?

「現代人は、食品添加物など、体に不要なものを取り込まないことが重要なテーマになっています。その意味では、いわゆる食べ合わせとはちょっと違うのですが、『糖分』と『食品添加物』は一緒に摂取しない方が良いでしょう。糖分は体に吸収されやすいので、糖分と一緒に摂取した食品添加物も体に吸収されやすくなるのです。

ちなみに、なぜ食品添加物がよくないかというと、体を酸化させるものだからです。よって、酸化した油と糖分を一緒に摂取するのは避けた方がよいかもしれませんね」

食べ合わせの意味も時代とともに変化してきているのですね。食べ過ぎに気をつけながら、糖分の量にも気をつけたいと思います。

取材協力:薬剤師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師 島内薫さん

(OFFICE-SANGA 臼村さおり)