慶應義塾大学経済学部の赤林英夫教授(教育経済学)と日本学術振興会特別研究員の中村亮介氏はこのほど、「学級規模の縮小が学力の伸びに与える影響」の分析結果を発表した。同調査は、情報開示請求により提供を受けた全国学力・学習状況調査(全国学テ)と横浜市学習状況調査の学校別平均点データを使用し、学級規模の縮小と学力との関係を分析したもの。
少人数学級、学力に関係するのは一部の場合
分析の結果、小学6年生・中学3年生の国語と算数(数学)のなかでは、小学校の国語を除き、学級規模縮小の効果を確認することはできず、「少人数学級は小学校6年生の国語の学力を向上させるが、算数の学力には影響を与えない」「少人数学級は中学校3年生の学力向上には影響を与えない」結果となった。
次に、全国学テの得点(学年当初の学力)が低い学校と高い学校に分けて分析すると、「小学校の国語で確認された学力向上効果は、当初の学力の高い学校でのみ確認でき、得点が低い小学校では観察されない」結果となった。
研究では、今後他の地域や学年においても同様の結果が得られるかどうかについてはさらなる検討が必要となるものの、少人数学級政策が他の政策と比較して費用対効果に優れるかどうかもさらなる検証が必要なこと、また教育政策推進の際には、先入観や素朴な期待ではなく、事実に基づいて政策の効果を検証することの重要性を示していると提言している。なお、本研究成果は経済学の専門誌であるJapanese Economic Reviewに掲載予定だという。詳細は「慶應義塾大学の報道発表」で確認できる。