粉もの文化が盛んな高崎市は、「パスタのまち高崎」と全国へ向けて銘打っており、多くのパスタ店が営業している。中でもとある老舗パスタ店には「豚カツ」の載ったパスタもあり、豚カツファンを中心に人気を博しているらしい。
同市では過去4回に渡り、市内のパスタ店が自慢の味を競い合う「キングオブパスタ」を開催しているほどの力の入れよう。というわけで今回は、人気パスタから創作パスタに至るまで、高崎パスタの近況をお伝えしたい。
カツの上に濃厚で甘みのあるミートソース
イタリア料理の代表的存在であるパスタは、今や日本全国で外食や家庭料理の定番として食卓を賑(にぎ)わせているが、「バスタのまち高崎」と銘打っている高崎市内ではこの頃、豚カツの載ったパスタが話題を呼んでいるという。そこで、このパスタを提供する高崎市問屋町にある「シャンゴ問屋町本店」を訪れた。
シャンゴは老舗のパスタ店で、本店と合わせ県内に同様の店舗を8店舗、他に地産地消と健康がコンセプトの「アグーリby shango」(以下、「シャンゴ」と表記)を運営している。高崎、前橋、伊勢崎あたりのパスタファンならば、シャンゴのことを知らない人はまずいない。人気もあるが、実力派のパスタ店だ。
気になる豚カツの載ったパスタは、「シャンゴ風」の名称でメニューに記載されている。パスタの上に上州麦豚のロースカツを載せ、そこへミートソース、粉チーズ、香草を順次かけて作られている。見た目はどう見ても強烈。豚カツは一般的だが、ミートソースが焦げ茶色だ。「これってデミグラスソースじゃないですか?」とは、同行したスタッフの感想。
食してみると、ロースカツは薄切りで柔らかく食べやすい。ミートソースは見た目と同様、具材がたっぷり入って濃厚だが、甘みがあってしつこくない。ただし、決してサッパリ系ではないので、毎回食べるのはちょっと厳しいようだが、がっつり食べたい時はオススメの一品である。
同行したスタッフは、季節の野菜がたっぷり入った「春野菜とチョリソーのペペロンチーノ」を注文。野菜が多く美しい彩りで、パッと見ではサラダのようにも見えなくはない。ちなみにこちらのお店は、2012年の「第4回キングオブパスタ」で見事1位を獲得している実力派。もちろん、この日いただいた2品とも非常に食べ応えのある味で大満足だった。
カチャトラ風とろける豚肉パスタと出合う
「パスタのまち高崎」と言われるくらいだから、独創的なパスタを提供するお店はまだあるはずだ。いろいろと当たったところ、シャンゴと同様、実力派の老舗があることを知り、後日訪れてみた。そこは高崎市筑縄町にある「ボンジョルノ本店トラットリア」。ボンジョルノは県内に5店舗を展開している。
「ボンジョルノさんで人気のパスタ、あるいはおすすめのアレンジパスタは何ですか?」との問いに、お店の方は「『ハーブで育てた地ポークのパスタ』がございますが」と答えたので、注文の品は定まった!
待つこと約10分。その味は心の中で思わず「うまい!」と叫びたくなるほどで、塩加減は薄くほのかに甘い。こってりしているのにあっさり。実はこの料理、原型は第1回キングオブパスタでグランプリを獲得した「榛名ハーブ豚のポークカチャジョーネ」だという。うまいと思ったのも当然のようだ。
豚肉は10日間煮込んでいるためとろとろ。この調理法はカチャトラ風(猟師風)と呼ばれるもので、通常、鶏肉や牛肉が主流だが、同店では豚肉を使用している。抗生物質、合成抗菌剤完全不使用の地元産で、地元の素材を丁寧に料理した一品なのである。
7,500人を動員した「キングオブパスタ2012」
ここで、パスタのまち高崎を代表する一大イベントを紹介させていただこう。前出の「キングオブパスタ」がそれだ。高崎市内にてパスタを主として扱う店舗が出店し、来場者による投票で「高崎パスタキング」を決めるコンテスト形式のイベントだ。
今年で5回目を迎えるこのイベント。全国でもまれにみる「コナモノ王国・群馬」、中でも高崎市はひとり当たりのパスタ店舗数の割合が日本一の地域とも言われ、至る所にパスタ店がひしめいている。この文化を全国へ向けて発信しようという中で始まったのが「キングオブパスタ」だ。
2012年11月23日に高崎競馬場で開催された「キングオブパスタ2012」では、21店舗が出店して7,500人を動員。ルールは、1枚で5食分(5食で1人前程度の量)のチケットを1,500円で販売。来場者に5食選んで食べてもらい、一番おいしいと思ったお店の投票箱に投票してもらう。チケットの半券が投票券になっている。
1位のシャンゴ「塩麹麦豚と蒟蒻入りパスタのトマトカレースープ」(左/Sサイズ=930円、Mサイズ=980円)と2位のカーロ「群馬県産ハーブステビア豚とエリンギのクリームパスタ柚子こしょう風味」(1,080円/ちなみにランチだと、パスタとセットで前菜、パン、飲み物がついて1,000円とかなりお得!) |
その結果、1位=シャンゴの「塩麹麦豚と蒟蒻入りパスタのトマトカレースープ」、2位=カーロの「群馬県産ハーブステビア豚とエリンギのクリームパスタ柚子こしょう風味」、3位=イル・クオーレ「濃厚!! 赤えびの白いトマトクリームパスタ」という内容だった。
パスタのまち高崎から地域の食文化の発展に貢献
イベントを主催するキングオブパスタ実行委員会事務局長の井上幸己さんは、「正直言って、昨年の動員数には驚きました。今年の開催は11月10日を予定していますが、スタッフ一同、より充実したイベントを目指しています。これからもこの高崎の地から地域の食文化の発展に貢献していきます」と、力強く話してくれた。
パスタのまち高崎発の、見ても食べても驚きのパスタに注目していただきたい。
(写真提供=キングオブパスタ実行委員会)