ファイルの変更履歴を自動保存

今回の発表では、ソフトウェアのブランド名刷新や販売形式の変更が大きな注目を集めているが、Creative Cloudの導入によって得られるのはソフトウェアだけではない。大きな枠組みでの「制作環境」をサポートするため、クライアントや同業者との"コラボレーション"を支援する機能を提供する。

ファイルの履歴を保存し、10日間までさかのぼって参照することができる

「Illustrator」などのファイルを構成要素ごとフォルダで共有できるようになった

まず取り上げたいのは、1アカウントあたり20GB(個人版)が割り当てられるクラウドストレージ。今回のメジャーアップデートで、このストレージに、「Illustrator」や「InDesign」で作ったファイルやその構成要素をまとめてアップロードできる「フォルダの共有」と、最大10日間にわたりファイルの履歴が保存される「履歴の保存」といった機能が追加された。

このストレージにファイルを保存すると、自動的にファイルの履歴が残る。作業中に誤って上書きし、前の状態に戻したい時や、クライアントから差し戻しが起こった時などに活用できる。気になるのはストレージにかかる負荷だが、ファイルの容量として計上されるのは最新の物のみで、履歴のファイル重量はカウントされない。

"いつも"の環境をどのデバイスでも使用可能に

また、PhotoshopやIllustratorなどのスウォッチやブラシなどの設定の同期を取ることが可能。各ソフトウェアにAdobe IDでサインインして同期することによりクリエイターがカスタマイズした"いつもの"環境を、デバイスに縛られず利用することができる。今回のアップデートで同期に対応するのは、「Photoshop」、「Illustrator」、「Flash Professional」、「Dreamweaver」、「After Effects」、「Premiere Pro」の6製品となっている。

ソフトウェアにサインインすることで環境が同期できる

Webフォントサービス「Adobe Typekit」のフォントが、デスクトップ利用に対応した

そのほか、Webフォント提供サービスとしてスタートした「Adobe Typekit」に登録されているフォントが、デスクトップでの利用にも対応する。現在は欧文フォントのみの提供だが、日本語のフォントへの対応も開発を進めている段階だという。今後の追加内容によっては、Webデザイン分野のみならず、DTPデザインに従事する人にとっても注目の機能となりそうだ。

加えて、クリエイター向けSNS「Behance」におけるポートフォリオの公開など、作品の公開や他のクリエイターとの交流・協業を促進するための機能も搭載している。Behanceの対応言語は英語のみとなっているが、将来的には日本語化を検討しているとのことだ。

デスクトップツールによる機能の一元管理

Creative Cloudの新デスクトップアプリケーション

これまで、Creative Cloudの利用者は「アプリケーションマネージャー」を用い、ソフトウェアのインストールおよびアップデートを製品ごとに行うことになっていたが、今回、新たなデスクトップアプリケーションの提供が開始され、各ソフトウェアのインストールやアップデートを一元管理できるようになった。また、ストレージ上のファイルの同期や「Webkit」経由でダウンロードしたデスクトップフォントの管理状況、「Behance」でフォローしたクリエイターの作品や自身の投稿も、このツール経由で確認できる。

Creative Cloudの本格導入、つまりはサブスクリプション制を主流とすることに関して、同社のクレイグ・ティーゲル代表取締役社長は、「Creative Cloudによって、クリエイターが直面している、急速に変化する環境への素早い対応を実現する」とコメントした。クリエイターの制作環境をより広く捉え直し、ユーザーのニーズにあわせたソフトウェアの進化だけでなく、制作パートナーとの協業やマネタイズ、他のクリエイターから受けるインスピレーションなど、包括的に「環境」を整えていくこととなる。

Creative Cloudの本格提供により、同社がクリエイターの制作からマネタイズまでサポートするという

クリエイターが直面する課題

ひとくちにクリエイターといっても携わる分野や担当領域はさまざまだが、当面はCreative Cloudを導入するか、あるいは「永久ライセンス版」であるCS6製品群を使い続けるかという部分が主な選択になってくるのではないかと予想する。これまでソフトウェアの内容を中心に整えられてきた制作環境を総合的に検証し、自身に最適と思えるものを選択してほしい。