うつ病になり自殺を望む男とその周りで起こる人間模様を描いたヒューマンコメディドラマ 連続ドラマW『配達されたい私たち』が、5月12日からWOWOWで放送される。同作は、脚本家の一色伸幸が自身のうつ病克服体験を元に、俳優・塚本高史が演じる澤野始が自殺のカウントダウンとして配り始めた7年前の捨てられた7通の手紙を通して、人々の出会いや別れ、再生を描く内容となっている。そこで、澤野の心を取り戻そうと奮闘する岡江有を演じた女優・栗山千明に話を聞いた。
――一見シリアスなテーマの同作ですが、見どころを教えてください。
「手紙を配ることで感動的な再会や出会いがあるんですが、それでも『死にたい』と言って心が揺れない澤野がどうなっていくのかが見どころです。有は澤野と一緒にいる事で、色んな感動に出会ってその度に心を動かされるけど、何も感じない澤野が最後どうなるのかが1番大きな流れなのかな。うつ病っていうテーマなのでシリアスなイメージだったけど、実際に演じてみるとコミカルで希望に溢れた作品になったし、台本を読んだ時には想像がつかないくらい面白い仕上がりになりました」
――澤野が最初に手紙を届けた有とはどんな人物でしょうか?
「メインの登場人物の中で1番まともな立ち位置にいるので、観る人が共感できる人物だと思う。だからと言って、普通の女の子という訳では無いんです。過去の親子関係が原因で、孤独で死んだような生活を送っているんですが、澤野に出会って変っていく。心の痛みを経験したという意味では繊細で闇がある女の子ですが、手紙をもらってからは前向きでおせっかいで熱い女になっていくので、澤野からしたら鬱陶しい女かも(笑)。でも、澤野の背景やうつ病を知っていく中で、言い方も変ってきて成長していきます」
――『じゃあ死ねば?』など、はっきりと物言いする有と栗山さんの共通点はありますか?
「そこが無いんです! 性格がはっきりした役を演じることが多いけど、そういうイメージがあるんでしょうね。基本、私ははっきりとモノを言えないタイプなので、言う時はやんわりと。はっきり言うと相手が傷つくんじゃないかと思って、どうにか気付いてもらおうとするという感じです。『こうだよ!』じゃなくて、『こっちの方が良かったかもね~』みたいな。有が持ってる想いには共感するけど、あれだけ人にぶつかっていけるのは勇気があるなと思います」
――澤野を演じた塚本高史さんとの共演はいかがでしたか?
「ドラマ『特急田中3号』以来、5年ぶりの共演でした。若い時の塚本くんって元気でやんちゃな役のイメージだったけど、とても良い感じに年を重ねてるなぁと。今回の澤野はうつ病だったので、何も感じなくて感情が変らないというのは見た事が無かった。そういう役も似合う感じになったなぁと思いましたね。塚本くんはお子さんがいるので、だからこそ、家族の問題とか息子への想いが身近なものなので、ラストシーンを撮ってる時は『自分に家族がいて良かった』と言ってました」
――撮影で印象に残ったシーンを教えてください。
「最終話で塚本くんがずっと1人で10分くらいお芝居をしてる長回しのシーン。その後に私が現れるんですが、良い感じでお芝居をしていたし、2人共必死なシーンだったので、『ヤバイ、トチったらどうしよう!? コケたらどうしよう!?』というプレッシャーと良い緊張感がありました。なんとか本番は転ばずに演じられましたけど。でも、大変だったからこそ、良いシーンになったはずです」
――澤野のような人が身近にいたら、どう接しますか?
「難しいですね……。有までは熱くなれないけど、出会った以上はほっとけないかな。軍艦役の柄本佑くんの役は、新型うつ病なんですが『えっ、そんなの怠けてるだけじゃん!』って思ったし、見ている人もそう思うと思う。でも、このドラマを通してうつ病のことを知ったので、関わった以上は死んで欲しくないし、対応は変わるんじゃないかな。『頑張れ!』って言っちゃいけないんだとか勉強にもなりました」
連続ドラマW『配達されたい私たち』
脚本家の一色伸幸が自身のうつ病克服体験を元に描いた同名小説(角川文庫刊)をドラマ化したヒューマンコメディ。うつ病になり、妻子とも上手く関係を築けない澤野始(塚本高史)は、自殺をしようと訪れた廃墟で、7年前に捨てられた7通の手紙を拾う。人生のカウントダウンとしてその手紙を配ることを決めた澤野は、最初の1通を理容店を営む有(栗山千明)に届ける。幼い頃に家族を捨てた母からの手紙を受け取った有は、そんな澤野の心を開かせようと奮闘するが――というストーリーで、5月12日から毎週日曜22時~WOWOWで放送予定(第1話は無料)。