「卵は一つのカゴに盛るな」

こんにちは。フィスコリサーチレポーターの三井智映子です。

前回も格言をご紹介しましたが、株式相場の世界にはさまざまな格言があります。「卵は一つのカゴに盛るな」、という格言を皆さんはご存知でしょうか?

卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落としてしまったら全部の卵が割れてしまうかもしれませんが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば一つのカゴを落としカゴの卵が割れて駄目になっても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということです。株式投資に当てはめると、特定の商品だけに投資をすると、その商品が下落するとリスクが高いので複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいということです。これを「銘柄分散投資」といいます。自信があるときはポジションの取り方が荒くなりがちですが、相場は行き過ぎる傾向があるため、打診的な売買からエントリーするという選択肢もあります。

株式ですと、一つの企業の株のみに全資産を注ぐのではなく、大型株、小型株、業種もいろいろありますし、アベノミクス関連株とあまり影響を受けない株、内需企業、外需企業、さまざまな分野の株に分けて投資することで、リスクを分散できますよね。為替でも、同じ円売り戦略でも、ドル買い円売りだけでなく、ユーロ、ポンド、オーストラリアドルなどを買って円を売ると、例えばドルが暴落した場合でもリスクを分散できます。

フィスコリサーチレポーターの三井智映子さん

これはユーロやそれ以外の通貨でも同じことです。経済の成長性や政治の安定性などを加味したうえで、地域、国別の分散投資をすることが大切です。ヘッジファンドは、この「地域分散投資」という考え方を基本としています。株や為替以外ですと、債券、先物、不動産などに資産を分散投資することで、一つの分野で起こった突発的な事象による暴落のリスクを軽減できますね。よりリスクが下がる、といってもいいでしょう。

日本では、預貯金・土地・株式の3つに分散して投資する「財産3分法」が有名です。デフレの際は現金の価値が高まります。価格が下がるので同じお金で買えるものが増えるわけです。株や土地の資産価値は下がりがちです。反対にインフレの際は、現金は弱く株や土地が有利ですね。資産の額が大きく、投資期間が長期になるほど、分散投資は重要になるといえます。

「卵は一つのカゴに盛り、そのカゴをよくよく見守れ」

ちなみに、この格言は、『トム・ソーヤーの冒険』の著者として知られている、イギリスのマーク・トウェインが1894年に出版した『ノータリン・ウィルソンの悲劇(The Tragedy of Pudd'nhead Wilson)』の中の名言です。ただ、じつはマーク・トウェインは、「『卵は一つのカゴに盛るな』と愚かな者は言う。(中略)賢者は言う。『卵は一つのカゴに盛り、そのカゴをよくよく見守れ』」と。あら? 今使われている銘柄分散投資っていう意味は否定されている?

これは、個人投資家は資金量が少ないので、銘柄分散投資ではあまり利益が出にくいということを示唆しているのではないでしょうか。大量の資金なら数パーセントで十分利益が出ますが、小額資金で分散投資しても、それは愚者の所業。だから賢者は、「儲けたかったら卵は一つに盛って、注意深く見守りなさい」とするのが利益を得られるやり方だと。

同時にこんな表記もあります。賢者は投機を戒める。「人生には投機に手を出すべきではない時期は二つある。投機に回せる金がないときと、投機に回せる金があるときだ」と。投資は慎重にやらないと怖いということなのでしょうか? ただ、今の相場は右肩上がりの『勝ち相場』であるといわれていますし、リフレ政策で現金の価値が下がることが予想されるので投資ははじめ時だともいえます。慎重に投資を始めるなら今でしょ! というところでしょうか?

少ない資金で始める場合、ミドルリスク・ミドルリターンを狙うのはいかが?

とはいえ、誰もが有望な銘柄を研究発掘している今日、ローリスクかつハイリターンの銘柄を見つけるのはなかなか難しいかもしれません。目ぼしい株式はかなり価格が上昇しているということもあります。しかしハイリターンを狙ってハイリスクを取るのはオススメできません。となると少ない資金で始める場合、二つ、三つくらいの分散投資でリスクヘッジをしつつ、中間のミドルリスク・ミドルリターンを狙うというのはいかがでしょうか?

もし2社か3社の株式に投資するとしてリスクを取るためには、その企業についてしっかり調べなければいけませんが、二つか三つなら株価を毎日チェックをしたり、決算などの情報を頭に入れるのもそう難しくないのではないでしょうか。

最後にマーク・トウェインはこう書いています。投資家としての失敗を嘆く。「投資機会を見つけ出せるのはたいてい、機会がなくなってからだ」と。やっぱり始めるなら今でしょ、今!

執筆者プロフィール : フィスコ リサーチレポーター 三井 智映子

共立女子中学校・高校を経て、早稲田大学政治経済学部へ。2001年から芸能活動を開始し、現在テレビ、CM、舞台などに出演。また、いち消費者とアナリストの中間的な存在であるフィスコのリサーチレポーターとしても、株式やFXの現場を取材レポートしています。