KDDIの田中孝司社長は、4月30日の決算会見で、連続して発生した障害について謝罪し、「最重要課題として信頼回復に努めたい」と述べた。KDDIは、昨年末から今年にかけて、たびたび長時間にわたる障害を発生させており、「可及的速やかに対策を実施する」と田中社長は強調する。
ソフトウェアのバグで通信障害
KDDIでは、4月16から19日まで発生したiOS向けのEメール障害について技術的な説明をしており、マイナビニュースでも紹介している。
今回は決算会見の場において、4月27日のau 4G LTE通信の障害について説明した。4月27日の障害では、端末の位置登録、ハンドオーバーなどの管理を行うMME(Mobility Management Entity)におけるソフトウェアのバグが直接の原因だったという。このエラーによって約6時間にわたってLTE通信が行えない状況に陥った。
MMEは、通信時に基地局を介し端末と制御パケットのやりとりを行う。今回、フラグメント化されたパケットの2つ目が、ある一定の長さ以下の場合にエラーが発生する状態だったという。これは「めったにない」(田中社長)という特殊な現象とのこと。
現時点では、KDDIとメーカーで詳細な分析を行っており、最終的な結論にはいたっていないそうだ。田中社長は、ソフトウェアの改修によってバグ修正を実施していく。それが完了するまでは、障害の発生を避けるための措置や、エラー発生時の復帰時間の短縮化を実施する考えだ。
4月の1回目の障害はiOSのメール、2回目の障害は双方で発生した。KDDIのLTEは、iOS向けのネットワークである2GHz帯と、その他のスマートフォン向けの800MHz帯・1.5GHz帯でネットワークを構築している。田中社長は、この2GHz帯と800MHz帯のネットワークが「基本的にコアの部分はほぼ同じ設備」であり、1回目の障害はiOS向けメールサービス用のExchangeサーバーの障害で、2回目の障害とは原因が異なる、別の事象と説明している。
ここまで障害の原因について説明した田中社長は、連続して重大な障害を発生させた点について、「各種対策を行ってきたが、結果として障害を起こした点はお詫びしたい」と謝罪。自身が先頭に立って、ソフトウェア品質の改善、復旧時間の短縮、予期しない障害発生時の対策、設備の分散化の前倒しなどの対策を実施すると述べ、「KDDIの中で連続して障害を起こすようなことがないか、再チェックして、障害が再度発生しないように最善の努力をしたい」と強調した。
800MHz帯LTEをベースに、2GHz帯LTEは高トラフィック対応
前述の通り、KDDIのLTEはiOS向け、その他スマートフォン向けの2種類を用意しているKDDIだが、800MHz帯をLTEネットワークのベースとして構築していく意向だ。同社の基準である実人口カバー率では、13年3月末までに96.4%を達成。14年3月末までには99%を目指すという。
これに対して、iOS端末で利用されている2GHz帯のネットワークは、人口カバー率やエリアの指標を公開していない。田中社長は、「今後も引き続き、できるだけ最速のスピードで拡大を進めていくのでご理解いただきたい」とコメントし、エリア公開は今後もしない方針だ。ユーザーにとって、どこで使えるか分からないネットワークのエリア非公開について理解するのは難しいのではないか、という記者の質問に対して田中社長は「800MHz帯をベースとして、ユーザーが多く、トラフィックが集中する都心部を中心に2GHz帯を重ねて、そこから郊外に広げていく」というエリア設計のポリシーを説明した。
携帯電話の無線ネットワークは、容量をユーザーでシェアしていくため、ユーザー数が多いと通信速度が遅くなるが、ユーザー数が少なければ十分な速度が確保できる。そのため、2GHz帯LTEが利用できないユーザー数の少ないエリアは、3G通信でも「十分な速度が出る」(田中社長)という認識だ。
現状では、Android端末が800MHz・1.5GHz帯、iOS端末が2GHz帯と、それぞれ利用できるネットワークが異なっているが、今後は「ハイブリッド端末になる」と田中社長は言う。今後の端末がマルチバンド対応になるのは既定路線であり、そうなれば、KDDIが想定したネットワークが、どの端末でも利用できるようになる。ただ、この場合、旧機種が複数ネットワークを利用できないことになる。KDDI側には、こうした問題点を踏まえた対応が必要だろう。