前回のシティバンク銀行の尾河氏へのインタビューでは、円安・株高が進んだ要因や、「アベノミクス」はまだまだこれからが本番で、3本目の矢である「成長戦略」が重要であることなどをお伺いした。今回は、「アベノミクス」でがらりと変わった経済情勢を受けて、個人が自分の持っているお金をどのように運用していけばいいかなどについて、シティバンク銀行のリレーションシップマネージャーの荒木孝浩氏にインタビューした内容を紹介したい。

シティバンク銀行 リレーションシップマネージャーの荒木孝浩氏

「アベノミクス」が個人の資産運用に与えた影響は?

――「アベノミクス」では円安のトレンドが続き、「成長戦略」が実現されれば、日本経済も本格的に好転することを尾河さんから伺いました。そこで荒木さんにお聞きしたいのですが、こうした状況が、個人の資産運用に与える影響はどのようなものなのでしょうか?

為替相場水準が変動し、株価が上昇していますので、購入したタイミングにもよりますが、投資をしている個人の資産は増えています。上昇トレンドというのもここまで長続きするかどうかというのが、はっきりと確信を持てない方も多かったと思いますが、それは尾河の話にもあったように、最初は政策に対する期待感というものが強かったので、実際にまだ政策が実行に移されていないということもあったように思えます。

――前回尾河さんが、今後円安、株高のトレンドは続くだろうとおっしゃっていて、我々もワイドショーや週刊誌でもそういう株高や円安ですよということを情報として得ているわけですが、個人として株式もやったことがない、外貨預金もやったことがないという人が、何をきっかけに資産運用を始めればいいのでしょうか。

きっかけはいろいろあると思います。例えば少子高齢化であったり、将来の年金に対する不安であったり、いつ病気になって収入が減るかもわからなかったり。資産運用を始めるということは、そういうときのために自分の金融資産をしっかりと価値あるものとして蓄えておかなければいけない、ということがあります。

例えば、自分が60歳、65歳になって安定したキャッシュフローが得られなくなったときのために金融資産を準備しておかなければならないのです。現在の回復期待感の中で始めるというのは、きっかけとしてはいいのかもしれません。ただ、そういった状況でなくとも、資産運用は、早く始めることにこしたことはないと思います。

「将来への備え」は何歳から始めればいい?

――なるほど。きっかけして、この景気回復があったとしても、いずれにしても将来への備えはしなければならないということですね。では、そうした備えは、何歳ぐらいから始めた方がいいのでしょうか。

早く始めれば始められるほどいいです。それだけ運用期間を長く持つこともできますので。また、一度に全資産を投資するのではなく、少しずつ投資資産を増やしていくことで、短期的な市場変動の影響のリスクを抑えることができると言われてます。。

――最近の新入社員は、初任給の使い道として、貯金したいという人が多いなどというアンケート結果もあります。ただ、貯蓄という資産運用の方法には、インフレというリスクもありますよね。また、インフレになると通貨の価値も下がるわけですから、円建てで資産を持っているリスクもあると思います。その辺りはいかがでしょうか。

インフレになってくると円の価値が下がる、物の値段が上がるという、それに対抗していくには、円の預金、低金利のものだけでは足りないわけです。その価値を維持、成長させていくために、外貨を持つ意味はあると思います。株式もそうです。インフレに強い資産ですね。

――インフレに強い資産というと、やはり株式になるのですか。

代表的なのは株式です。

――あとは外貨になるのですか。

そうですね。その他には金融商品でREIT(不動産投資信託)のような商品も、インフレに強いと言われています。

――REITはインフレに強いのですか。

通常、物価上昇に伴い、家賃収入も上がり、不動産そのものの価値も上がることが見込まれるため、不動産はインフレに強いと言われており、不動産を組入れているREITは比較的インフレに強い金融商品であるといえます。

――株式、外貨預金、REITとおっしゃいましたが、シティバンク銀行で取引できるのはどの商品ですか。

個別株式は取り扱っていませんが、外貨預金と株式に投資をする投資信託は扱いがあります。

――REITも買えるのですか。

投資信託として取り扱っています。株式に投資をする投資信託があるように、REITに投資をする投資信託があります。

――投資信託の形で買えるわけですね。インフレに備えるためには、外貨預金や投資信託に投資することがいいということですね。

ここで一つ申し上げておきたいのは、投資には短期的な投資と長期的な投資があることです。基本的にシティバンク銀行では、短期的な利益をとっていくものよりは、長期的に資産を形成していくという意味の投資のことです。

――投資した方がいいとおっしゃっているのは、長期的な投資ということですね。

そうです。

――何年ぐらい運用していくイメージですか。

その方のニーズや最終目的にもよると思うのですが、最低5年や10年は考えていただきたいところです。

「投資」をするきっかけとは?

――今まで長期的な投資をしてこなかった人にとって、どうすれば投資をするきっかけになりますか。

きっかけは、目標を持つことではないでしょうか。目標というのは先ほど少し申し上げたように、例えば自分の老後に関してや、現在の生活の中でこうなりたいという目標など、個人個人で色々あると思うのですが、実現するためにどのぐらいの金融資産を準備しなければいけないのかというところから逆算することが必要ではないかと思います。

そうした目標が漠然としていて、具体化されていない方も多くいらっしゃいます。例えば金額でもいいのですが、具体的に目標をイメージして、その金額に到達するために、どれぐらいの金額をどれくらいの利回りで運用しなければいけないのかということを考えます。経済環境の変化によっても商品の利回りなどが変わってきますので、どのような投資商品で目標に到達できるか、考えるべきだと思います。

――なるほど。まず具体的な目標を立て、そのためにどういう投資商品を選んでいけばいいかを決める必要があるわけですね。その際に、シティバンク銀行で相談にのってもらうことはできるのでしょうか。

当行では、支店のほかに電話の相談受付もできます。運用専門のコンサルタントが対応します。現在は金融商品も複雑で種類も多く、個人で全ての商品知識をカバーするのはなかなか難しいと思いますので、専門のスタッフにいろいろ聞いてみたり、相談したりすることで、効率的に金融商品を選択することが可能になると思います。

――具体的に、自分は年収何万円で、貯金を毎月いくらしているんですけど、どの金融商品を選べばいいのでしょうかみたいなことを聞けたりするものでしょうか。

運用商品もいきなり「これですよ」と決まるわけではなくて、個人の持っている現状の資産や先ほどお話しした目標からお聞きします。すでに様々な種類をお持ちの方に関しても、何かに偏っていれば、そこからまた違ったリスクの分散につながるようなものを持っていただくような話をします。

――65歳がとりあえずの目標でしょうか。

そうですね。また、途中のマイルストーンもありますね。結婚や出産、子どもの教育資金や家の購入。いくら目標を設定しても、時間がたてばその目標や必要資金がかわることもありますので、その都度、運用計画を考えなおすことが大切です。

――なるほど。将来のライフステージに応じて、相談に乗っていただけるわけですね。そこでさらにお聞きしたいのですが、資産運用を考えるときに、先ほど尾河さんがおっしゃったようなこと、つまり経済情報などを個人がどのように取り入れて判断すればいいものですか。円安が続きそうだという話とか、来年以降が勝負というような話もあったと思うのですが、日ごろの経済情報というのを、漠然としたイメージではなく、組み立てていく場合はどういうふうにすればいいのでしょうか。

シティバンク銀行では、スタッフ、コンサルタントに相談していただけます。また、ホームページにはデイリーやウィークリーのマーケットレポートや、マーケットの見通しを、尾河をはじめとするアナリスト・ストラテジストが定期的に最新レポートを出していますので、そういったものを参考にされるのも一つです。また、シティバンク銀行では、各支店などで、セミナーをお客様向けに無料で提供していますので、そういったセミナーに参加して、聞いていただくこともいいかと思います。

――円安に進んでいると、ひょっとしたら円高になるのではないかとかあって、外貨は怖いイメージもちょっとあるのですが、その辺はどうなんでしょうか。また円安の時に外貨を買って、円が高くなったら損してしまうような気もするし、もっと安くなるのであれば買いたくもなるし、外貨預金に関して言えば、その辺はどうやって判断すればよろしいですか。

為替相場は変動するものなので、目減りすることもありますから、余裕資金の範囲内で投資するということも大切です。これは投資全般に言えることですが、必ず近いうちに使う予定のある資金で投資するというのは適していません。ただ、外貨建てでは減ることはないので、外貨建てでの増やす方法を考えていくことも必要だと思います。

――その際に、先ほど尾河さんからの話にも出たのですが、金利なども考慮すること必要はあるのでしょうか。

金利は重要なのですが、金利だけをみて、例えばブラジルレアルや南アフリカランドなど、金利の高い通貨を選ぶ方もいらっしゃいますが、金利がなぜ高いのかと考えないといけません。それは、リスクが金利の低い通貨に比べ高いからであり、売りが殺到したときに買いたい人が現われないかもしれないなどという、何かリスクがあると認識した上で、流動性の高いものと低いものをセットで持つとか、リスクをヘッジしたらいいのかなと思います。

シティバンク銀行で何ができる? その強みとは?

――シティバンクに銀行口座で取引できる商品はどういうものがあるのか。銀行口座を持っているという場合、外貨預金をしたいとか、投資信託を買いたいと思った場合、銀行口座だけ持っていればいいのでしょうか。

銀行口座とは別に、投資信託の取引をされる場合は、投資信託の口座をつくる必要があります。債券であれば、シティバンクが提携している証券会社の仲介口座をつくっていただくということになります。

――シティバンク銀行の強みはどの辺にありますでしょうか。

資産運用をするときの商品のラインアップが非常に幅広いことが挙げられます。投資地域など広い投資商品をそろえていますので、これは他行さんに負けない強みだと思います。外貨預金、投資信託、債券、保険などにおいてそうした強みがあります。

特に外貨の場合は、情報提供するレポートなどが充実していますので、リアルタイムで発信していますし、どなたでも見ることができるので、非常にお客様からも評価は高く、参考になるという話を伺っております。

尾河のチームが出しているレポートに関しても、シティは世界約200の国や地域に展開しているため、アナリストなどから即時に尾河のいるインベストメントリサーチという部署に入ってくるので、彼女たちもそれを参考にレポートを書き、支店にいる私たちにも情報が入ってきます。世界各国の情報が早いスピードで支店に伝わるのも、シティというグローバルな企業の持つ強みであると思います。

――世界的に展開されている強みがあるわけですね。レポートというのは誰でも見られるのですか。

はい、ホームページに掲載されているものは誰でも見ることができます。為替というのは、今インターネットがありますので、数字だけを見ようとすればいくらでもあると思うのですが、それをアナリストなどが分かりやすく解説し、いかにお客様に提供できるかというのが情報の差となります。そこの部分に関して他行に負けないと自負しています。ホームページに掲載されているレポートが情報の全てではありませんので、やはり、直接聞いていただくことが一番の情報提供だと思います。

――アベノミクスとの関連では、資産運用のポイントはどのようなことになりますでしょうか。

マーケットが盛り上がっているからこれに乗っからなくちゃといってやみくもに始めるということではないと思います。具体的にどういうところにリスクがあるのかを知った上で投資するというのは、的確なアドバイスが必要だと思います。

銀行では預金だけでなく、保険や債券も取り扱っております。多くの品揃えを1人の担当者にご相談いただけるというのも、初心者の人にとっては入りやすいのではないかと思います。

――分かりました。尾河さんに引き続き、貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。