帝人は24日、放射線(X線・γ線)を遮蔽するアラミド繊維織物およびアラミドペーパーを開発したと発表した。5月上旬よりサンプル提供を開始し、放射線量の高い場所で使用される防護衣料やシート材などを中心に市場開拓を進めていくとしている。

今回開発した製品は、帝人グループが製造・販売するパラ系アラミド繊維「テクノーラ」と「トワロン」に、高い放射線遮蔽性を備えたレアメタルの一種であるタングステンの粒子を配合して製造したもの。通常、高比重の金属を繊維に混ぜて製糸を行うことは困難とされているが、「テクノーラ」と「トワロン」の紡糸法や素材特有の物性を活かすことで、実現したという。

タングステンは、金属の中で最も高い融点(3,380℃)を持つレアメタル。高比重で、重量は鉄の2.5倍に相当する。鉛に匹敵する放射線遮蔽性を持つことから、最近では放射線遮蔽材としての利用が広がっている。

製品の特徴を見ると、「テクノーラ」については、独自の紡糸技術により、繊維中にタングステンを練り込むことに成功。同社のポリマー技術と紡糸技術を活用し、タングステンを繊維内に均一に配合している。

一方の「トワロン」は、フィブリル化(繊維内部の小繊維が摩擦作用で表面に現れ毛羽立つこと)しやすく、パルプ形状での使用が可能な繊維。パルプ形状の「トワロン」は、異形状の素材を保持する力に優れていることから、タングステン粒子との高い接着性が実現した。さらに、シート化技術を組み合わせることで、タングステンを均一に分散させたペーパーの生成に成功したとのこと。

「テクノーラ」織物および「トワロン」ペーパーは、アラミド繊維固有の優れた原糸強度により、ポリエステルなどの汎用繊維を上回る強度を発揮。柔軟性や加工性に優れているため、様々な形状で利用することができる。また、一般にタングステンを配合することで素材元来の難燃性や耐切創性が向上すると言われており、鋭利な瓦礫や刃物を扱う作業や、高温体を扱う作業に使用する資材や防護服などへの用途展開が期待できるとしている。

タングステンを配合した「テクノーラ」織物(左)と「トワロン」ペーパー(右)

さらに「トワロン」ペーパーは、最大90wt%(重量パーセント)という高濃度のタングステンを保持することができ、薄さと高い遮蔽性能の両立に成功。積層や成型もしやすく、耐熱ガスケットや耐熱シート材、補強材など、耐熱性が要求される幅広い分野での使用が見込まれる。

重量パーセントとは、ある物質100グラム中に含まれている特定の物質のグラム数。90wt%は、100グラムの「トワロン」ペーパー中に、90グラムのタングステンを含有している状態となる。